文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「CRF1100L アフリカツイン アドベンチャースポーツ ES DCT」インプレ(宮崎敬一郎)
「冒険」を堪能できる使い勝手が大きく進化
アフリカツインのアドベンチャースポーツESは、上質な作動特性を持っている電子制御サスを装備し、万能な走破性を魅力にしたハイグレードなアドベンチャーツアラー。2024年モデルはDCTのクラッチ制御や変速プログラムが見直され、エンジンもトルクが少しばかり太っている。そして、今回からフロントタイヤが19インチに変更された。
従来モデルは21インチのフロントタイヤを履いていたが、そのメリットは大雑把に言うと大きな凸凹への踏破、乗り超え能力。これで強力な走破性を獲得している。反面、細身で大径であることによる接地面積の少なさ、つまりオンでの絶対的グリップ力の少なさがデメリットとも言える。
デザートエリアや林道などをメインに旅したいなら21インチでもいいだろう。だが、パワフルで重いこのバイクで鋪装林道で遭遇する流水を横切ったり、荷重変動の激しいクイックな峠道などを楽しんだりするには少々辛い。様々な状況で、接地力の少なさは気楽なライディングの足を引っ張るのだ。
今回新型に乗ってみて、フロント19インチの威力にびっくりさせられた。
まず、あの重厚なハンドリングタッチが軽くなっていて、リーンさせると適度な舵角がつき、ダイレクトに曲がり始める。感覚的には70km/hを越えたあたりのコーナリングから、その接地感や節度に差が出る感じ。3速でかなり高回転域まで引っ張る、路面の荒れたコーナーがあったが、そこでの接地感などはこの手のアドベンチャーの中でもトップクラスに感じた。リーンした状態でブレーキもかなり強くかけられるのも進化した点だ。
サスの作動性がいいので、林道だって普通に流せる。おそらく通常の日本の林道ツーリングなら、以前の21インチ車に対する負い目はほとんどない。オンオフ問わず、荒れた路面でハンドルを取られにくい走破性の高さは、基本ディメンションがオフ系だからだろう。オフロード志向がもう少し強めのタイヤをチョイスすれば、かなりの酷路の林道でも普通に走れるようになるはずだ。
セッティングを見直したというDCTのクラッチ作動も良くなった。ミートする時の半クラ状態が滑らかになっていて、Uターン時などの操作がしやすくなっている。中域トルクも補強されているようで、5000回転以下で「モリモリ感」が顕著になった。
ライディングモードはアーバン、ツアー、オフロード、グラベルにユーザーモード2種類を加えた計6種類。「ツアー」や「アーバン」を選択した時の乗り心地は極めて快適だし「グラベル」は万人にダート走行をアシストするイージーモードになっていた。
新型のアフリカツイン・アドベンチャースポーツは、フロント19インチ化で「オフでの牙を丸めた」のではない。冒険するアイテムとして万能に使えるよう強化した、使いやすいモデルに進化したのだ。