文:河野正士/写真:ハスクバーナ・モーターサイクルズ
ハスクバーナ・モーターサイクルズ「スヴァルトピレン801」インプレ(河野正士)
低振動かつパワフルな並列2気筒エンジン、軽量コンパクトなフレームが生む軽快なハンドリング
ハスクバーナ・モーターサイクルズ(以下ハスクバーナMC)の新型車「スヴァルトピレン801」は、ソフトスポーツバイク・カテゴリーのマイルストーン的モデルになるんじゃないか。試乗を終えたとき、そんな風に感じた。
ソフトスポーツバイクとは、欧州や北米の二輪車市場で注目を集めている新しいスポーツバイクカテゴリーだ。その定義とは、スーパースポーツモデルを起源に持たない、排気量1000cc以下のスポーツモデル群。
いまやアドベンチャーモデルも、この1000cc以下モデルが主戦場となりつつあり、それらは100PS以下のモデルが多いことから、1000cc以下/100PS以下を示すSUB1000ccやSUB100hpなどとカテゴリーされ、語られることもある。
とくに欧州では年齢や免許取得後のある一定期間に課せられるA2ライセンス制度があり、排気量ではなく出力によってA2ライセンスで乗ることができるモデルが限定されている。とはいえ出力が抑えられたモデルは500〜600ccモデルが多かったこと、またそのA2対応モデルは税金が安かったことからベテランライダーからも支持され、1000cc以下モデルは、欧州では以前からポピュラーな存在であった。
そんな目の肥えたライダーたちに支えられ進化したソフトスポーツカテゴリーにおいて「スヴァルトピレン801」がスタンダードになり得る理由とは、トータルバランスの高さにある。
高いデザイン性について異論は無いだろう。ハスクバーナMCは、新しくなった401シリーズにも、この「スヴァルトピレン801」においても、スヴァルトピレン/ヴィットピレン導入時に構築した、ミニマルでクリーンなスタイルを継承している。燃料タンク容量の拡大やホイールベースの延長などで車格は大きくなったが、それによって航続距離が伸び、走行安定性が高まるなどの効果がある。それは開発者が意図したものだ。
また排気量の拡大とともに、シリーズ初の並列2気筒エンジンを搭載。75度位相クランクというトラクション特性に優れた不等間隔爆発エンジンながら、2つのバランサーによって驚くほどスムーズな吹け上がりを見せる。そしてレイン/ストリート/スポーツの3つのライディングモードに加えて、オプションのダイナミックパックによってダイナミックモードが選択可能。
スポーツやダイナミックといったスポーティな出力モードを選択すれば、スロットルレスポンスはさらにダイレクトになり、低回転域からエンジンのビート感とともにパワー感も増す。そのエンジンの反応に合わせて、前後サスペンションのセッティングを変更すれば、アクセル操作に対する車体の反応が変化し、スポーツライディングにもツーリングにも適した車体となるのだ。
これはWP製の前後サスペンションによるところが大きいが、ライダーのアクションやエンジンのレスポンスを詳細に足まわりに伝える、新開発のチューブラーフレームの剛性バランスの高さも大きく影響している。
また6軸IMUと連動する、MTCと名付けられたトラクションコントロールやコーナーリングABSなどの電子制御デバイスも走行条件に合わせて介入度合いを変更できるほか、システム介入時の車体の反応も自然で、それにライダーが気づかないほどだ。
機械的な進化と先進の電子制御技術を絶妙のバランスで組み合わせることで、高いレベルでのスポーツライディングを実現しながら、ツーリングや街乗りもこなしてしまう「スヴァルトピレン801」。多様な道が存在する日本市場でも、高く評価されるに違いない。