鈴鹿8耐の会場で公開された未来のオートバイ

一般社会はもちろん、モータースポーツの場でも当たり前のように語られ始めた「カーボンニュートラル」(=CN)な世界。SDGs、つまり持続可能な取り組みとして、今乗り物の世界ではCNの重要性が、実現へ向けて動き出そうとしている。
オートバイの世界でのCNといえば、カワサキが市販化に向けて動いている電動モデル、NINJA/Z e-1に代表される電動モデル。

画像: NINJA H2SXをベースに製作された研究開発実験車 テールカウルのパニアケース状のものが水素タンク

NINJA H2SXをベースに製作された研究開発実験車 テールカウルのパニアケース状のものが水素タンク

「カワサキは、CNへの実現は電動モデルだけじゃないと考えています。これはマルチパスウェイという考え方で、電動はもちろん有効性が高い、けれどCN燃料を使ったエンジンがあったり、ハイブリッドがあったりしてもいいんじゃないか、と。電動は特にコミューターとしては素晴らしい、けれどオートバイが持つスポーツ性、気持ちよさっていうのは電動ではなかなか到達しづらいんです」というのは、カワサキモータースの水素プロジェクトを担当する松田義基さん。かつてはカワサキのMotoGPマシンのプロジェクトを率いていたこともあるエンジニアだ。

画像: 鈴鹿サーキットのお客さんにもお披露目された走行シーン 走っているフィーリングも、音もスピードもまったく「普通」だったのが印象的

鈴鹿サーキットのお客さんにもお披露目された走行シーン 走っているフィーリングも、音もスピードもまったく「普通」だったのが印象的

画像: オートバイ雑誌を含め、一般誌も発表会に出席 注目度の高さがわかる写真です

オートバイ雑誌を含め、一般誌も発表会に出席 注目度の高さがわかる写真です

その回答のひとつが、今回はじめて走行シーンがお披露目された「水素エンジン研究開発実験モデル」。カワサキNINJA H2 SXをベースに、ガソリンの代わりに水素を燃料として走る、水素エンジンを使ったオートバイだ。
「日本のオートバイを含む小型モビリティの水素エンジン実験については、いまHySE(=ハイス)という技術研究組合で進めています。構成メンバーはトヨタさん、ホンダさん、ヤマハさん、スズキさんとカワサキの5社。水素エンジンを研究するなら、1社だけじゃなくてみんなでやった方が進むよね、という思いで経済産業省の認可を得て結成しました。きょう公開させてもらったのは、量産メーカーで世界初になると思います。HySEのほかメンバーからも『がんばってこい』『どんどん広めてきて』と背中を押されてきました」とは、川崎重工業の水素戦略本部長、山本滋さん。

画像: エンジンはスーパーチャージャー付きの水冷並列4気筒1000cc 燃料供給はインジェクターを通して水素を噴射しているイメージ ちなみに水素は、ガソリンに対して圧倒的に燃えやすい

エンジンはスーパーチャージャー付きの水冷並列4気筒1000cc 燃料供給はインジェクターを通して水素を噴射しているイメージ ちなみに水素は、ガソリンに対して圧倒的に燃えやすい

公開された、このH2SXをベースとした水素エンジン車は、燃料をガソリンから水素に変更することで、エンジン本体にはほとんど手を付けずに走り出すことが可能、というメリットがある。写真でわかるように、テールカウルに大きなパーツが取り付いているのが見慣れないけれど、これこそが水素を貯めてあるタンクだ。このテスト車の段階で、25Lタンクをダブルで装着してあることで、50Lの水素を積んで走ることができるのだという。ちなみに中身は気体の水素で、重さは約2kg。テスト段階のいま、2kgで約100km以上の走行が可能なのだという。

画像: 左から松田義基さん、市 聡顕さん、テストライダーさん

左から松田義基さん、市 聡顕さん、テストライダーさん

「もちろん、実用化まではまだまだいくつもハードルがあって、HySEとカワサキとしては2030年代前半に実現できるようなイメージで開発を進めています。とはいえあと10年はない。社会の環境も違ってくるし、まだ存在しないオートバイ用の水素エンジンについての法整備も進んでくると思います。もちろんCNについては、電動でも水素エンジンでもハイブリッドでも、正解はひとつじゃなくて、いろんなルートを通って、ユーザーみんなが知らないうちにCNを達成している――というのが理想だと思います」(カワサキモータース 先行開発部長 市 聡顕さん)

電動は便利だけれど、オートバイとしての楽しみがあるかといえば、疑問は残るもの。やっぱりエンジンがいいよね、でもそこにCNを考えなきゃならないなら、CN燃料を使うのも手だし、そして水素も大きな候補のひとつ。
「電動ってエキサイティングかといえば、そうじゃない面の方が効果は大きい。オートバイらしいライディングファン、水素エンジンなら作れます! 未来は明るいんですよ」(松田さん)

この水素エンジン研究開発モデルの詳細については、現在制作中、8月1日発売の月刊オートバイ9月号に詳報してあります! そちらも併せてお読みください。

写真・文責/中村浩史

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