文:丸山淳大/モデル:黒江こはる/写真:関野 温
外装をピカピカに! 電動ポリッシャーを使った研磨術を伝授

17年前のビックスクーターが新車なみのツルピカボディに大変身⁉
通勤用として走行少&機関好調のヤマハ・マジェスティをゲットしたハチ黒。ただ、塗装部品の多いスクーターは、外装の劣化が目立ちやすい。ハチ黒号も例に漏れず塗装はカサカサでスクリーンは真っ黄色! ヘッドライトレンズは持ち主の目のように淀んでおり、端的に言ってボロだったのである。
ここまでいくと、どんな優秀なケミカルを使っても付け焼き刃。リペイント(再塗装)には多大な費用が必要になるので、我慢するのが最善策と思われるだろう。しかし、「磨き」によって新車時に近い艶を取り戻せるかもしれないのだ。ただ、手磨きでは限界があるし、均一な艶を得ることは難しい。
そこで、おすすめなのが電動ポリッシャーを使った磨きだ。カサカサのクリアをひと皮剥いて、その上で電動ポリッシャーで磨き上げれば、嘘のようにツルピカボディが蘇る! ハチ黒号も査定10万アップなのだ!?
新看板娘 こはるん が初登場!
オートバイ女子部で活躍中の黒江こはるさん(こはるん)が新橋モーター商会の看板娘として初登場! 女優の仕事をしながら大好きなオートバイやゴルフ、釣りなどを楽しんでいるお転婆娘なのだ。

今回磨き上げを担当するのは、こはるん!
磨く前の車両の状態

ヤマハ「マジェスティ」(2007年モデル)
ボディには浅い傷から深い傷…
スクリーンとヘッドライトレンズは黄ばんでる…
塗装の中でも黒は小キズが目立ちやすい。ボディ表面に砂利が付いた状態で指で軽く擦っただけでクリア層に小キズが入る。それが積み重なって外装の艶が失われていくのだ。
また、紫外線によっても塗装は劣化し、クリアが黄ばんだり色が抜けて薄くなったりする。特に赤系は色抜けが激しいので、注意が必要だ。今回磨きを行ったマジェスティは黒なので色抜けは目立たないものの、小キズ、深い傷、汚れ多数でスクリーンは薄黄色。

洗車したり、ウエスで拭いたり、バイクカバーと擦れたりすることで、だんだんボディの小キズは増えていく。さらに紫外線の影響を受けることで、新車時の輝きは失われていってしまうのだ。

傷だらけのスクリーン
スクリーンの表側には傷が多数。割れたり深く削れている部分はないが、見た目にも残念な状態だ。傷部分をいったん削り落とさなければ消すことはできない。

スクリーン全体に黄ばみ
スクリーンに透明度はなく、黄色く変色。よく見ると表面にマイクロクラックが入って、そこに汚れが入り込んでいる感じ。透明度は復活するのだろうか!?

ボディ&ライトカバーに傷多数
ヘッドライトカバーは特に直射日光が当たる上面が曇っており、全体的に黄ばみ気味。古いクルマの樹脂カバーにありがちな状態だ。これではライトも暗くなる。

給油口カバーに目立つ傷
乗り降りの度にまたぐ給油口カバーには無数の擦れ傷あり。幸い深い傷はないので、コンパウンドで磨けば消えるだろうが、艶を出すのは難しいかも。

タンデムグリップに大きなダメージ
またがるときや荷物を積載した時などに付いた無数の傷が存在するタンデムグリップ。やや深いものもありそうなので全部は除去できないかも?
\ 教えて マル!/
なぜ研磨するとボディがピカピカになるの?

バイクやクルマの塗装は、基本的に鉄や樹脂の上にサフェーサー、カラーペイント、クリアの順で塗られて層状になっている。クリア層は新車でも完全に平滑というわけでなく、わずかに凹凸がある柚子肌と呼ばれる状態になっていることが多い。
また、塗装の艶を失わせる小キズはクリア層の表面に入るので、表面を削り取ってその上でポリッシャーで磨き上げることで、クリア層は平滑度が向上し、時に新車時以上の輝きになることもあるのだ。
使用する電動ポリッシャーと液体コンパウンド

外装の磨きを行う際は、手磨きだとパワーが足りないし均一な艶が得られにくいので、電動ポリッシャーが欠かせない。現在はネット通販で比較的安価に手に入るので、ひとつ持っておくのがおすすめだ。
今回は3種類のポリッシャーを用意して使ってみたが、ボディに押し付けても回転が止まらないだけのパワーがないと艶が出づらい。その他、コンパウンド、マイクロファイバークロス、ポリッシャーパッドを用意した。

アイテム1.電動ポリッシャー
①電動ドリル+φ80mmのパッド(パッドのみ購入して装着)②φ150/700W・Amazonで4000円くらい(ハチ黒の私物)③φ180/950W・アストロプロダクツで1万円くらい(マルの私物)。

アイテム2.ポリッシャーパッド各種
ポリッシャーパッドはウール(写真下)→スポンジ(写真上)の順で使用し、コンパウンドの粒度に合わせて使い分けるので、数種類を用意。面ファスナーで簡単に脱着できる。

アイテム3.液体コンパウンド
コンパウンドは(写真左から)#3000・傷消し、#7500・艶出し、#10000・鏡面仕上げの粒度の異なるものが3本セットになったものを用意。ネット通販で1300円くらい。

アイテム4.ふき取り用クロス・スポンジ
デイトナのマイクロファイバークロス(品番93029/770円)(右)、マイクロファイバースポンジ(品番27887/880円)(左)を用意。ボディに残ったコンパウンドを拭き取る際に使用する。
磨き上げの手順
1.まずは洗車でボディの汚れを洗い流す!

磨きを行う前にまずは通常の洗車を行ってボディ表面の汚れを落としておく。その際、同時に行いたいのが鉄粉の除去だ。
洗車後の濡れたボディを素手で触ってみて、ザラザラとした感覚があれば、それはクリア層に刺さった鉄粉である。
鉄粉は洗っただけでは落ちないので、ホームセンターやネット通販で手に入る専用のトラップ粘土か鉄粉除去用スポンジを使用する。次にコーションラベルなどをマスキングしておく。

アイテム1.鉄粉除去用スポンジ
ボディの鉄粉除去には専用の粘土やスポンジを使用。必ず水を流しながら作業するのがコツで、水が不十分だと逆にボディに傷をつけてしまうこともある。

アイテム1.鉄粉除去用スポンジ
ボディの鉄粉除去には専用の粘土やスポンジを使用。必ず水を流しながら作業するのがコツで、水が不十分だと逆にボディに傷をつけてしまうこともある。

アイテム2.マスキングテープとカッター
コーションラベルは事前に剥がすかマスキングしておく。また、ポリッシャーを使うとコンパウンドが飛び散るのでメーターまわりやシートを養生しておく。
2.勇気を出して外装のクリア層を一皮剥く

まず、クリア層を削り取ってひと皮剥く作業を行う。削る=傷を付けることになり、ボディ表面が傷で曇っていくので心配になるが、ここでしっかり傷や汚れ部分を取り去らないと、仕上がりが美しくならない。
削り工程に使用したのがデイトナの3Mスポンジ研磨材マイクロファイン。スポンジ状なのでボディの凹凸に追従して研磨できる。粒度は#1200〜1500相当のものを使用。荒すぎるとクリア層を削りすぎてしまう心配があるので注意!
作業のながれ

作業前後がわかるように車体半分をマスキングして作業を行う。デイトナの3Mスポンジ研磨材マイクロファイン(#1200〜1500相当)(品番:92865/770円)を使用した。

ボディの形状に沿わせることを意識して擦っていく。すぐに削れた分だけスクリーンやクリア層が粉末状になって現れる。黄ばんだ部分は茶色の粉が出てくる。

だんだんと曇る塗装に怯むが、#1200〜1500相当の研磨材でクリア層がなくなるほど削るのは至難の業。そう簡単に下地が出ることはないので慎重かつ大胆に作業を進める。

クリア層を削ると、写真のようにボディは真っ白で小傷に覆われた状態になる。初めてだと、ここから艶が復活するとは信じられないかもしれないが、安心してください!
作業のポイント

1.ボディの角はやさしく磨こう
磨きの際に気をつけたいのがボディの角の部分。塗料の乗りが薄く下地が出やすい上に、削れやすいので意識的に弱めに研磨スポンジを当てるようにする。

2.ヘッドライト・スクリーンはごりごり磨いてOK
ヘッドライトやスクリーンはいくら削っても下地が出ることはないので、傷が消えなければボディを磨いたものより粗めの#800程度の研磨材を使用しても良いかも。
\ 注意しよう /
傷の深さで補修方法が異なる!!
研磨ですべての傷を取り去ることができるわけではなく、図のようにクリア層より深い傷についてはいくら磨いても消すことはできない。こういった部分はタッチアップなどで対処する。


3.電動ポリッシャーで磨き上げ

今回は3種のコンパウンドを使用して磨きを行ったが、コンパウンド1回でもそれなりにきれいになる。コンパウンドは粗目→中目→細目の順に、ポリッシャーパッドはウール→スポンジの順に使用する。
コンパウンドを変える時には必ずポリッシャーパッドも同時に交換しないとコンパウンドが混ざって、磨き目が消えないので注意したい。ポリッシャーは両手でしっかり保持して、磨き面に軽く押し付けるようにして磨いていく。
作業のながれ

ポリッシャー磨きはウールパッドからスタートする。ウールパッドにも粗目用や中目用があるので、目が粗いものを最初に使用する。

最初に粗目(#3000)のコンパウンドを使用する。コンパウンドは使用前に良く振って、パッド表面に適量を出す。多すぎるとポリッシャーの遠心力で飛び散るので注意する。

ポリッシャーパッドが磨く面に対して並行になるように意識しつつ磨くと、研磨でできた傷が消えてみるみる艶が蘇ってくる。適宜コンパウンドを追加しつつ磨いていく。
作業のポイント
ポリッシャーは用途に合わせてチョイスしよう!!
バイクを磨くならば、Φ150mmのポリッシャーがパワー的にもサイズ的にも最適かも。電動ドリルの先に付けるΦ80mmのポリッシャーパッドは安価だがパワー不足できれいに磨けず。

φ150mm/700Wの電動ポリッシャー

電動ドリル+φ80mmのパッド
\ 注意しよう /
シートなどは必ずマスキングでガード!
電動ポリッシャーにスピードコントロール機能が付いている場合は必ず低速からスタート。速すぎるとポリッシャーが暴れて車体へのダメージを招くことも。
そうしたことを見越して、シートなどはあらかじめマスキングしておくのがポイントだ。今回ハチ黒は、誤ってポリッシャーをシートに接触させ穴を開けてしまった……(泣)


おおむね磨くことができたら、マイクロファイバークロスでコンパウンドを拭き取ると、ツヤツヤボディが現れる。これで十分きれいに見えるが、さらに磨き進める。

#7500のコンパウンドでウールパッドを使って磨き、次に#10000のコンパウンドはスポンジパッドで仕上げる。消えきらない傷もあるが、ところにより新車並の美しさが復活。

同じポリッシャーパッドを使ってコンパウンドの番手を変えたい時は必ず水洗いした上で使用する。また、作業後は必ずパッドを水洗いの上、乾燥させてから保管する。
\ 注意しよう /
炎天下だと液体コンパウンドの乾燥が早い!
ポリッシャーを使用するとボディは摩擦で熱くなる。そのうえ、炎天下の屋外で磨き作業を行うとあっという間にコンパウンドが乾燥してボディにこびりついてしまうので、霧吹きで水をかけて温度を下げながら磨こう。

乾燥してこびりついたコンパウンド。

こびりついてしまった場合は、水を付けて擦れば落とすことができる。
4.研磨後は必ずケミカルでコーティング

クリア層をひと皮剥いたことで、ボディのコーティングやワックスも一緒に除去される。つまり、ボディはノーガードで傷付きやすく汚れやすい状態になるのだ。だからこそ磨き後は仕上げとしてコーティングやワックスをかけておきたい。
今回は塗装面にヤマルーブの「ガラス系コーティング」、スクリーンはデイトナの「スクリーンクリーナー」で仕上げ磨きした上で「スクリーン撥水コート」を施工し、雨天時の水弾き向上を図った。

スクリーンはデイトナの「スクリーンクリーナー」で磨いた上で「スクリーン撥水コート」で仕上げた。雨天でもクリアな視界を確保できる。

ヤマルーブのガラス系コーティング(泡タイプ)180ml(3080円)は、スプレーして拭き上げるだけで塗装表面にガラス系被膜コートを形成。小傷や汚れを防止する。

ガラス系コーティングは付属のクロスでボディ表面に塗り伸ばした後、マイクロファイバースポンジで拭き上げることで、かなり艶が深くなってきた。
比較|磨く前・磨いた後のちがいは歴然!

ツルピカ度合いが段違い! 電動パワー恐るべし
スポンジ研磨材を使ってダメージを受けたクリア層をひと皮剥いた上で、3種類の粒度の異なるコンパウンドで段階的に磨き上げるとマジェスティのボディは驚くほどきれいになった。
元がボロだっただけに変化は著しい。黄ばみと傷で曇っていたスクリーンは嘘のように透明度が復活し、カサカサだった塗装面にはこはるんの顔が映り込むほどになった。これだけの好結果を得るにはいくら時間をかけても手磨きでは難しく、電動ポリッシャーが必要だ。

スクリーンの透明度が蘇った‼
写真でもはっきりわかるくらい透明度が復活。ハチ黒号は純正スクリーンに何も加工がなかったため磨くことができたが、ミラーやグラデーション加工のスクリーンは基本的に磨けないので注意。


傷だらけのグラブバーもピカピカ!!
傷だらけだったグラブバーも新車時のような美しさに。磨き前に目立っていた白い傷は深いものではなく、クリア層のみ付いたごく浅い傷だったのだ。今後乗り続けるとまた傷が入っていくだろうが、その時は再度磨けばまたきれいにすることができる。


乗り降り時に付いたキズも完全修復
無数の足の擦れ跡で覆われていた給油口の蓋は、深い傷が無かったことも幸いし、嘘のように美しくなってしまった。コーションラベルはマスキングしたので残っている。ステッカー類は純正部品で廃盤になれば手に入らないので、旧車は特に気をつけたい。
店主 マルの結びの一言

作業は大変でも輝きを見ると超ハッピーです!!
磨き前後で印象激変! バイクの磨きはマジ娯楽
電動ポリッシャーや電源のある作業スペースの確保がハードルになるかもしれないが、それさえクリアしてしまえば、比較的簡単に手磨きとは別次元のクオリティを得ることができるはず。小キズだらけでくすんでいた塗装がみるみるうちに輝きを取り戻すので磨きは実に楽しい作業だ。
人間もこんな風に磨ければ…シミだらけでたるんだお肌のオジサン達は、ツヤピカお肌のこはるんを見て肩を落とすのであった。
文:丸山淳大/モデル:黒江こはる/写真:関野 温