文:丸山淳大/モデル:mii/写真:関野 温
ダメージレベルMAX. シートの張り替え
手順1.シート表皮をはがす

シート表皮剥がしは簡単そうだけど実はかなりの重労働なのだ‼
シートの破れを完全に直すには表皮の張り替え以外にはない。張り替えは専門の業者に依頼するのが間違いない方法だ。ただ、現在はネット通販で車種別のシート表皮が広く販売されており、その気になれば自分で表皮の張り替えに挑戦できる。
シートの張り替えの第1段階は表皮の剥がしだ。「タッカー」と呼ばれるホチキスの親玉みたいな工具で打ち込まれた針を1本1本手作業で抜き取っていく。
使用するアイテム

タッカーの針は樹脂のシートベースにガッチリ刺さっている。抜き取りのために、①ニッパー、②金属製の内張り剥がし(ストレート製マル私物)、③改造100均マイナスドライバーを用意。
※③はマイナスドライバーの先をモンキーレンチでつまんで曲げてみたもの
作業のながれ

表皮をはがす前にシートを車体から外す。ビックスクーターはこれすらも一苦労だった。

シートを外したらいよいよ表皮を固定しているタッカーの針を引っこ抜く。改造マイナスドライバーは厚みがあってやや使いづらかった。薄く削るなど改良の余地あり。針の隙間に内張り剥がしを差し込み、少し浮かせてニッパーで引き抜く方法が良いようだ。

シートを外したらいよいよ表皮を固定しているタッカーの針を引っこ抜く。改造マイナスドライバーは厚みがあってやや使いづらかった。薄く削るなど改良の余地あり。針の隙間に内張り剥がしを差し込み、少し浮かせてニッパーで引き抜く方法が良いようだ。

メイン、タンデム、バックレストと3つに分かれたビッグスクーターの場合、抜き取ったタッカーの針の数も膨大だ! miiちゃんは手が痛くなるし、オジサンは目がしょぼしょぼだ!

引き抜いたタッカーの針を乗せてじっと手を見る。針は地面に落とすとパンクの原因になるので、確実に集めて処分する。マグネットトレイがあると便利だ。

表皮、アンコ、シートベースに分離できた。過去に張り替えられているようで、表皮とアンコの間にビニールが入っていなかった。スポンジが湿っていた場合、干して完全に乾燥させておく。
手順2. 新品の表皮に張り替え

シート表皮の張り替えは専用工具とコツが必要なのだ!
いよいよシート表皮を張る。新品表皮は縫い目の内側からシリコンコーキングを薄く塗り、さらにアンコと表皮の間にビニールを入れておくことで防水性が高くなる。シート表皮をシワがないように張るために、伸ばしながらタッカーで固定することが重要。冬場は表皮がよく伸びるように温めておくと良い。
今回使用したマジェスティのシート表皮はセットで5000円ほど。タッカーなど工具も必要となるが、それぐらいの予算でシートは新品同様に蘇る!
使用するアイテム

左がエアー式、右が手動式
タッカーには手動式とエアー式があるよ!
エアタッカーはコンプレッサーが必要だが確実に刺さる。ただ、強すぎて表皮を突き抜けてしまうことも。リーズナブルな手動式はパワー不足で針が根本まで刺さらないことがある。
作業のながれ

マストではないが、防水用ビニールは入れておいたほうが良い。厚めの120Lビニール袋を用意。シートよりもふた周りくらい大きめにカットしておく。

新品シート表皮をかぶせてバランスを確認。マジェスティのシートは座面部分が窪んでおり、表皮とアンコの位置がズレると、極端に表皮がたるんだり、シワが発生したりしてしまう。

多くの場合、表皮とシートベースにはセンターの目印が入っているので、これを確実に合わせる。まず前後どちらかにタッカーを撃って仮固定し、前後バランスを確認する。

表皮とシートベースのセンター、前後のバランスが合うまで、タッカーの針を抜き刺しして位置決めする。前後位置が合ったら、左右を固定する。写真は別体式のバックレストだ。
作業のコツ

最初にシートの先端と後端を固定する!
表皮とシートベースのセンターを確実に合わせ、前後の2点をまず固定。次に両サイドを固定。あとはバランスを見ながらタッカーを撃っていく。

表皮にしわが寄らないように、引っ張りながらタッカーの針を撃っていく。ただし、過剰に引っ張りすぎると逆にシワが寄って、最後に帳尻が合わなくなることもあるので注意。

シート表皮の端に隙間なくタッカーの針が並ぶように撃ち込むことができたらタッカーの撃ち込みは完了。最後の仕上げとして表皮とビニールの余った部分をハサミでカットする。

エアタッカーが強すぎて、針が表皮を撃ち抜いてしまうことも多かった。場所により手動式の方が上手くいく部分もあり。DIYなので、多少のシワは許容する心も必要なのかも。

メインシート、タンデムシート、バックレストすべて終えたら張り替え完了!
店主 マルの結びの一言

「座ればわかる! しなやかな新品表皮の気持ち良さ!」
シート表皮も劣化するので定期的な張替えもあり!
シート表皮は経年劣化でかなり縮んで弾力性が失われてくるものだ。また、走行距離が増えてくれば表皮も摩耗してグリップが低下する。だからこそ、リフレッシュで表皮を張り替えるのもアリかもしれない。
今回のマジェスティのシートはメイン、タンデム、バックレストの3つに分かれており、作業の手間はかかったが、シワもほとんど出ず、新品のように蘇った。
ハチ黒も私がさんざん汚れた作業着で座り心地を確かめたシートに頬ずりをして「新品シート最高ぅ」と嬉しそうなのであった。
文:丸山淳大/モデル:mii/写真:関野 温