予選に続いて朝フリーも水野がトップタイム!

画像: 「乗れている」を自覚、自信たっぷりにレースウィークを進めた水野涼+パニガーレV4R

「乗れている」を自覚、自信たっぷりにレースウィークを進めた水野涼+パニガーレV4R

鈴鹿8耐明け、全日本ロードレースの後半戦のスタートとなったもてぎ2&4。お天気が心配されましたが、雨が降り出す予報はどんどん後ろにずれて、ドライコンディションのままのレースとなりました。昨日土曜日夕方に、ゲリラ雷雨騒ぎはあったものの、そのまま降り続くことはなく、朝のウォームアップ走行はドライ路面、決勝レースも雲は多いものの、ドライ路面のままとなりました。結局、全レースが終わるまでお天気は持ちました。

JSB1000クラス朝のフリー走行では、公式予選で初のポールポジション決めた水野涼(DUCATI TEAM KAGAYAMA)がトップタイム。決勝日の朝フリーっていうのは、土曜の走行からひと晩たって、路面のコンディションがどうかわってるか、それ用にマシンのフィーリングはどう違うのか、っていうのを確認する時間帯なんですが、ここで水野は予選のスーパーラップからわずか0秒5落ちの1分48秒287をマーク。土曜の夕方以降にザッと降ったので、日曜の路面はガラッとコンディションは変わっているはずなのにね。
朝フリー2番手には、珍しくフロントローを逃して予選2列目4番手スタートとなった中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシング)、3番手にはそのチームメイトの岡本裕生、4番手に予選2番手につけた野佐根航汰(AstemoホンダドリームSIレーシング)が入りました。この4人、公式予選のTOP4の順番が違ってる顔ぶれですね。この週末は、やはりこの4人がレースの主導権を握りそうです。

画像: オープニングラップのビクトリーコーナー #3水野がトップに、#32野左根、#1中須賀、#2岡本が続きます

オープニングラップのビクトリーコーナー #3水野がトップに、#32野左根、#1中須賀、#2岡本が続きます

決勝レースは昼イチの12:40から。残暑という言葉がぴったりな暑さと湿気となった決勝レースで、ホールショットを獲得したのは野佐根。春のもてぎ大会でも野佐根が好スタートを切ったのを思い出します。2番手に水野、その後方に岡本、中須賀、長島哲太(DUNLOPレーシングwith YAHAGI)、津田拓也(オートレース宇部レーシング)といったオーダー。しかし、オープニングラップのうちから、前の4人が5番手以下を引き離し始めます。

オープニングラップのダウンヒルストレートでは、水野が野佐根をパスしてトップに浮上! やっぱりパニガーレのストレートスピード、スゴい! 2番手に野佐根をはさんで中須賀、岡本。トップに立った水野は、ペースを上げ、後方を引き離し始めます。水野をここで逃がしたくないフォロワーたちもペースを上げるんですが、中須賀が野佐根をなかなかかわせない! 結局、中須賀が2番手に上がったのは5周目の1コーナー。この間、水野は1分48秒0という、予選タイムに匹敵するタイムをマークしてスパート。もう2番手の中須賀以降を1秒以上引き離しています。

画像: トップに立つや猛プッシュ 2番手以降を引き離して逃げに出た水野

トップに立つや猛プッシュ 2番手以降を引き離して逃げに出た水野

画像: 水野を追う#1中須賀、#32野左根、#2岡本 岡本がこの後、野左根をかわして2番手へ

水野を追う#1中須賀、#32野左根、#2岡本 岡本がこの後、野左根をかわして2番手へ

2番手に上がった中須賀が水野を追いますが、水野のペースが一枚上手。ふたりの差は6周目には1秒6、7周目には3秒を超えて、20周のレースが折り返しを迎える10周目には、その差は4秒7にもなり、あとはタイヤ消耗や体力低下でペースダウンしないのを気を付けるだけ。ここで、水野が戦前に語っていたキーワードを思い出しました。それは「制御」です。
「パニガーレに乗り始めてまだまだ4~5カ月。走るたびにマシンが仕上がってきて、特に制御が煮詰められているのが実感できるんです。菅生のレース2で岡本君の後ろを走って『今の制御はこうやって乗ればいいのか』ってヒントをもらった感じでした。それから8耐でもたくさん走行時間があって、もてぎが楽しみなんです」(水野)

画像: レース後半は独走状態 ジワジワ迫る「ドゥカティ全日本優勝」の快挙に向かってスタンドもざわついていました

レース後半は独走状態 ジワジワ迫る「ドゥカティ全日本優勝」の快挙に向かってスタンドもざわついていました

あくまでもコースサイドから見ていた印象ですが、ストップ&ゴーなレイアウトのもてぎのコースで、特にヘアピン立ち上がりのウィリー、ダウンヒル下の90度コーナーのリアの振り出しが、水野のパニガーレはすごく安定しているように見えました。ウィリーしない、リアが滑らない、それで速いなんて、最高の制御ですから。

画像: ごく少数のチームスタッフで運営しているTEAM KAGAYAMA マシンはドゥカティワークスマシンでも、チームはあくまでもプライベーターです

ごく少数のチームスタッフで運営しているTEAM KAGAYAMA マシンはドゥカティワークスマシンでも、チームはあくまでもプライベーターです

結局レースは、このまま水野が2番手中須賀を4秒1も引き離し、待望の今シーズン初優勝。昨シーズンの最終戦でダブルウィンを決めましたけど、あれはホンダCBRで、今度はドゥカティ・パニガーレV4Rでの優勝。日本のロードレース最高峰クラスで外国車が優勝したのは、これが史上初めて。水野涼+DUCATI Team KAGAYAMAが、歴史にキッチリ足跡を残しました。
2位に中須賀、3位に岡本のヤマハファクトリーデュオ。このレースでも、水野と中須賀、岡本の3人が表彰台に登壇、またもこの3人が表彰台を占め、今シーズンは依然としてこの3人以外は表彰台に上がっていません。

ついにやった!やっと勝てた!

画像: TEAM KAGAYAMAの活動のひとつ、ドゥカティオーナーやファンを巻き込んでのレース活動の成果か、表彰台下に集まったサポーターが大歓声!

TEAM KAGAYAMAの活動のひとつ、ドゥカティオーナーやファンを巻き込んでのレース活動の成果か、表彰台下に集まったサポーターが大歓声!

レース直後の会場向けインタビューでの水野の第一声は「めちゃくちゃうれしいでーーーーす!」。普段は冷静沈着な水野もテンションが上がり、ゴール後に迎え入れてくれたチームスタッフと順にハグして、表彰台でもずっとハシャいでいました。こんなに喜んでいるのを見ると、見ている側もうれしくなっちゃいますね。

「今の気分?最高です! 今日は朝のフリー走行も(雨上がりの変化のためか)コンディションの悪い中でもいいペースで走れたので、スタートで前に出られたら、どんどんプッシュしていこうと。1周目で前に出たら、後ろを引き離していこうかなと思って、最後ゴールするまでは気を抜かずに走りました。今年はトップ争いに加わるけど勝てない、ってレースが続いていて、やっと前に出てゴールすることができたので、今年の前半戦の反省や課題を、前半戦と8耐を経て少しずつ積み重ねてきたことは間違いじゃなかったんだな、と思ってます」と水野。
8耐明けから楽しみにしていたもてぎ大会、戦前から仕上がりに自信をもって、予選後には勝利宣言まで飛び出した中での、有言実行の初優勝でした。

これに対して、敗れた絶対王者・中須賀は、悔しさをにじませながらサバサバ。
「最後まであきらめずに走った結果が2位。素直に、チームカガヤマと水野君がすごかった。心からおめでとうって言いたいです。バイクを作るのって大変なことで、この短い期間でよくぞここまで仕上げてきたな、って思います。今回はちょっとリズムが悪くて、今朝のフリー走行でようやく良くなったんですが、もてぎはキツいレースになるだろうとは予想してました。もうちょっと絡んで、楽な展開にさせないでやりたかったけど、一歩、いや二歩及ばずでしたね」(中須賀)

画像: ゴール直後、静かなるガッツポーズです! 写真/小縣清志

ゴール直後、静かなるガッツポーズです! 写真/小縣清志

ここで、スタートから飛び出して、逃げて、後方を引き離す展開となったことについて質問。
「予選のタイムを見ていても、やっぱり4人(水野、中須賀、岡本、野佐根)のレースになるとは思っていて、展開は始まってみないと、1周目の位置取りが決まっていないとわからない。前に出られたらプッシュしたいし、とかいろんなシチュエーションを考えてはいたんですが、1周目にうまく前に出られて、これはプッシュして離そう、って考えていました。2周目からは結構プッシュして後ろを離して、その後はうまく計画通りに行けたかな、と思います」(水野)
――それを聞いて中須賀さんはどーお?
「スタートして、(野佐根)コータをはさんで水野君が逃げていたから、早く2番手に上がって差を詰めたかったんですが、コータも序盤すごく速いし、彼がキーマンになると思っていたので、前に出るのに時間かかっちゃいました。その間に逃げられたし、2番手に上がってからも、水野君のペースには追いつかなかった。それでも、もう少し違った展開で、ラクさせずに勝負するレースをしたかった。それがちょっと悔いが残りますね。でもやっぱり、予選から水野君のタイムがよかったんで、あのペースを持ってたら僕でも逃げを打ちますよね」

次はホンダ!勝負しよう!(加賀山)

画像: この暑い中、キャメルバッグ(ツナギの背中に仕込む水筒みたいなあれ)も仕込まずに走っていた水野 大仕事をやり切った、充実したイイ顔をしてました!

この暑い中、キャメルバッグ(ツナギの背中に仕込む水筒みたいなあれ)も仕込まずに走っていた水野 大仕事をやり切った、充実したイイ顔をしてました!

そして、水野の優勝に重要な役割を果たした、TEAM KAGAYAMAの加賀山就臣監督にも突撃。
「やっと、ついに勝てました。開幕から勝てそうで勝てない、が続いてたので、その意味ではホッとしてます。事情を話せば言い訳はたくさんあるんだけど、8耐に参加して、バイクもライダーもメカニックも、走行距離を伸ばせたことがパニガーレを走らせる上で大きなことだった。やっと勝ったぜ! これで『黒船襲来』やっとスタートだ、って感じです。これでひとつハードルを越えたから、次のハードルもね!」
――ハードルって?
「ヤマハファクトリーやっつけたからね、次はホンダをやっつけたい! スピード勝負、ホンダ出て来い、って大きく書いといて!」

画像: 帰って来た水野をがっちり抱きしめた加賀山監督 8耐のゴール後には大泣きしていた監督ですが、今回は歓喜の涙はなし それほど充実した、きちんとレースを進めたうえでの優勝だったのでしょう

帰って来た水野をがっちり抱きしめた加賀山監督 8耐のゴール後には大泣きしていた監督ですが、今回は歓喜の涙はなし それほど充実した、きちんとレースを進めたうえでの優勝だったのでしょう

そういえば、シーズンイン前に加賀山監督に話を聞いた時、必死の思いでドゥカティワークスマシンを日本に引っ張ってきたのは、日本のレースが盛り上がってほしいから、と言っていました。
「今の全日本ロードはヤマハワークスチームの一強でしょう? もちろん、ヤマハもシンドい思いして頑張ってるから最強の座にいられる。だから、それをひっくり返したい。もしウチがドゥカティで一矢報いたら、ホンダもカワサキも悔しい、って思ってくれるはず。そうしたら、ホンダは8耐で連覇してるワークスマシンがあるでしょ? カワサキだってジョナサン(レイ)が乗ってたワークスマシンがあるはずじゃない。そうやって高めあいたいと思うんだよね」

ヤマハファクトリーチームデュオが揃って2位3位に沈むのは久しぶりのこと。もちろん、このまま水野が突っ走るほど中須賀&岡本は甘くないし、それでも水野+パニガーレV4Rは確実にレベルアップして、絶対王者の大きな脅威になっています。

次戦オートポリス大会決勝は9月8日。水野の連勝なるか、中須賀のリベンジなるか、岡本の逆襲なるか――。全日本ロードレースに楽しみが増えました!

画像: 次はホンダ!勝負しよう!(加賀山)

写真・文責/中村浩史

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