2025年のシートは残り2つに
マルク・マルケスのドゥカティのファクトリー入りを皮切りに、大きな動きを見せた来シーズンのライダー市場。アラゴンGP時点で11チーム中10チームのラインナップが決定した。
2018年から7年にわたり、最高峰クラスで戦い続けた中上貴晶(IDEMITSU Honda LCR)が今シーズン限りでレギュラーライダー引退を発表。来年からはHRCのテストライダーとして低迷しているホンダを支える重要なポジションにつくことになった。
中上の後任は現在Moto2クラスに参戦しているソムキャット・チャントラ。2019年からイデミツ・ホンダ・チーム・アジアからMoto2クラスに参戦しており、来季は同チームから最高峰クラスへの昇格が決まった。
同じく最高峰クラスへの昇格を果たしている小椋藍とはともに戦った仲であるチャントラ。Moto2時代切磋琢磨し、ともに優勝を果たすなどチームメイトとして活躍した2人が揃って最高峰クラスへの昇格を決めたのは感慨深いものがある。
中上のレギュラー参戦は今季限りというのは残念ではあるが、来年もMotoGPクラスには日本人ライダーが名を連ねることが決まった。
小椋にはMoto2クラスでのチャンピオン獲得、そして来年の活躍を期待したいところだ。
2025年 MotoGPラインナップ一覧(9/1現在)
◾️Ducati Lenovo Team
・フランチェスコ・バニャイア
・マルク・マルケス
◾️Gresini Racing MotoGP
・アレックス・マルケス
・フェルミン・アルデゲル
◾️Pertamina Enduro VR46 Racing Team
・ファビオ・ディ・ジャナントニオ
・フランコ・モルビデリ
◾️Aprilia Racing
・ホルヘ・マルティン
・マルコ・ベッツェッキ
◾️Trackhouse Racing
・ラウル・フェルナンデス
・小椋藍
◾️Red Bull KTM Factory Racing
・ブラッド・ビンダー
・ペドロ・アコスタ
◾️Red Bull KTM Tech3
・エネア・バスティアニーニ
・マーベリック・ビニャーレス
◾️Monster Energy Yamaha MotoGP Team
・ファビオ・クアルタラロ
・アレックス・リンス
◾️Prima Pramac Racing
・TBD
・TBD
◾️Repsol Honda Team
・ルカ・マリーニ
・ジョアン・ミル
◾️CASTROL Honda LCR
・ヨハン・ザルコ
◾️IDEMITSU Honda LCR
・ソムキャット・チャントラ
マルク・マルケスがスプリント・レース初制覇
土曜日に行われたスプリント・レースのポールポジションを獲得したのはマルク・マルケスだった。マルケスはウィークを通して好調で、フリー走行、予選全てでトップタイム。予選に関しては2位以下にコンマ8秒という大差をつけてのポールポジションだった。
2番グリッドにペドロ・アコスタ(Red Bull GASGAS Tech3)が続き地元スペイン勢がワンツー、3番グリッドにはランキングリーダーのフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)がつけている。
気温31度、路面温度49度のドライコンディションの中、11周のスプリント・レースがスタート。前戦スタートで出遅れたマルケスだったが、今回はスムーズな蹴り出しをみせトップのままターン1を通過。一方、3番グリッドスタートのバニャイアはスタートで出遅れ、6位まで後退してしまった。
オーダーはマルケス、ホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)、アコスタとスペイン人が独占。出遅れたバニャイアは早々に4位にまで順位を回復するもトップ3とは早くも離されてしまう。
スプリントで絶対的な速さを誇るマルティンだったが、この日のマルケスは序盤からペースが良く逃げにかかる。レースの折り返し時にはマルティンに対して2秒以上のマージンを築いてみせた。
マルケスはその後もマルティンとの差を広げていき、3秒差をつけトップチェッカー。スプリント・レース初優勝を飾った。2位にマルティン、3位にはアコスタが入っている。
ランキング首位のバニャイアは4位を走行していたが、グリップ不足に苦しみ後退。最終的には9位でフィニッシュし、1ポイントを獲るのが精一杯だった。
バニャイアの思わぬ不調により、ランキングではマルティンがランキングトップに再浮上。バニャイアは3ポイントのビハインドという状況で決勝レースに臨むことになった。
マルク・マルケスが3年ぶりの優勝!タイトル争いは予想外の展開に
週末を通して、全てのセッションをトップで終えているマルケス。3年ぶりの優勝が現実味を帯びており、母国の英雄の復活劇をみようと、サーキットには多くのスペイン人ファンが足を運んだ。
決勝日の朝に雨が降ったことで午前中のウォームアップではウェットコンディションになるも、その後天候が回復し、路面も完全なドライに。決勝は気温25度、路面温度39度というコンディションの中、23周で行われた。
スタートはマルケスが前日同様好スタートを切りホールショットを奪う中、バニャイアはまたしてもスタートミス。オープニングラップはマルケス、アコスタ、マルティン、バニャイアという順となる。
マルケスを逃したくないマルティンは2位アコスタに仕掛けていく。しかし、ターン8で中途半端に仕掛けてしまい、2台ともにコースオフ。このバトルもあり、マルケスは1周目から独走態勢に入った。
マルティンが2位に上がり、3位に落ちたアコスタはペースが上がらず、4位につけたアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)が3位に浮上。
先頭のマルケスがハイペースかつ安定したラップを刻む中、マルティン、アレックスも淡々とラップを周回し、バトルはない。その後方ではスタートで出遅れたバニャイアがレース中盤から終盤にかけてペースアップ。アコスタをパスすると、3位のアレックス・マルケスに迫っていった。
ドゥカティ同士による表彰台をかけた戦いは予想外の結末を迎えることに。残り6周のターン12でクリップにつけなかったアレックス・マルケスのミスを見逃さなかったバニャイアは続くターン13でアウト側から仕掛けた。
しかし、ここで2台は接触し転倒。バニャイアの身体の上にマシンが乗り上げるも幸いバニャイアに大きな怪我はなかった。大事には至らなかったものの、チャンピオン争いを繰り広げている中でのノーポイントはあまりに痛い結果となってしまった。
そんなアクシデントをよそに、トップ独走のマルケスは2位のマルティンに約5秒のギャップを築きトップチェッカー。ドゥカティに移籍して初めての優勝をポール・トゥ・ウィンで決めてみせた。
また、この優勝は2021年の第16戦エミリア・ロマーニャGP以来で、実に1043日ぶりの決勝レースでのトップチェッカーとなった。2位にマルティン、3位にはバニャイアとアレックス・マルケスのリタイアもあり、アコスタが入っている。
バニャイアがチャンピオンの貫禄を見せつけるレースが続いていたが、ここにきてランキング首位の座が入れ替わる事態に。スプリントと決勝レースを併せてわずか1ポイントに終わったバニャイアに対し、マルティンは29ポイントを獲得。
第12戦終了時のランキングはトップのマルティンが299ポイント、ランキング2位のバニャイアが276ポイントでその差は23と拡大。そして今回完全優勝となったマルク・マルケスが229ポイントでランキング3位に浮上している。
次戦は翌週に行われる第13戦サンマリノGP。マルケスが勢いそのままに連勝となるのか、そしてバニャイアは再び流れを引き寄せることができるのか。タイトル争いも見逃せない。
2024 MotoGP 第12戦アラゴンGP 決勝結果
レポート:河村大志