灼熱のオートポリスで熱戦!

画像: 快晴のコンディションで行なわれたJSB1000クラスのレース1

快晴のコンディションで行なわれたJSB1000クラスのレース1

8/25にもてぎ2&4が行なわれて以来の全日本ロードレース。数えて第6戦となるオートポリス大会ですが、開幕戦は鈴鹿2&4(2&4はいつも、JSBクラスのみの開催が多いのです)、第4戦・筑波大会はJP250とJ-GP3のみの開催、そして第5戦がもてぎ2&4と、開催クラスがばらばらのため、今回は第3戦・菅生大会以来の全クラス開催。JSB1000/ST1000クラスは土曜、日曜それぞれ決勝レースが行なわれる2レース制です。
いつも天気に悩まされるオートポリス大会ですが、今回は予報から雨の心配はなさそう。けれど、残暑と呼ぶには暑すぎるコンディションの中での開催。お天気といえば、9月第一週に九州地方に台風10号が上陸。オートポリスのある大分県(といってもオートポリスはほぼ熊本・阿蘇)には直接的な被害はなかったようですが、大雨の影響で事前テストがキャンセルされ、コースコンディションも悪化。レースウィークの木曜からスポーツ走行のあったJP250のライダーは「路面はグリップしないし、コースに吹き溜まりもあって大変でした」って言っていました。ただそれも、金曜、土曜と走行時間が増えるにつれて良化したようでしたね。

画像: JP250のレースの模様はコチラで https://www.autoby.jp/_ct/17719933

JP250のレースの模様はコチラで https://www.autoby.jp/_ct/17719933

土曜午前は各クラスの公式予選、午後はJP250と、JSB/ST1000クラスの決勝レース1。JP250については速報でこっち<https://www.autoby.jp/_ct/17719933>に上げましたので、こちらではJSB1000のレースレポートからお届けします。
土曜に行なわれたJSB1000クラスレース1では、まず公式予選でちょっと珍しいことが起きました。なんと「絶対王者」こと中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシング)が予選中に転倒! 転倒前に出したタイムでトップタイムこそ獲りましたが、2レース制のため、レース2のグリッド決めのセカンドベストタイム(2番目にいいタイム)はチームメイトの岡本裕生に持っていかれ、土曜のレース1が中須賀、日曜のレース2は岡本がポールポジションからのスタートとなります。
「転んでメカのみんなには仕事増やしちゃって申し訳なかったけど、体のダメージもないし、スペアマシンもTカーっていうより、いつも2台ともメインバイクのつもりで仕上げてあるから大丈夫です」と中須賀。

画像: 前戦もてぎ2&4で念願のドゥカティ初優勝を挙げた水野涼 けれど、パニガーレV4Rで走り始めてまだ半年 走る度にマシンの戦闘力が上がって行くのがわかるんだそう

前戦もてぎ2&4で念願のドゥカティ初優勝を挙げた水野涼 けれど、パニガーレV4Rで走り始めてまだ半年 走る度にマシンの戦闘力が上がって行くのがわかるんだそう

その言葉通り、中須賀はいつものように決勝レースを、終始トップグループでリード。中須賀の敵となるのは、やはりチームメイトの岡本と、前戦・もてぎ2&4で悲願の全日本初優勝を果たしたドゥカティ・パニガーレV4Rを駆る、DUCATI チームKAGAYAMAの水野涼でしょう。
「パニガーレでオートポリスを走るのは初めてで、しかも事前テストもなかったので、ちょっとマシンのセットアップに苦しんでいます。コースレイアウトというより、とにかく走り込む時間が必要なマシンなので、そこにちょっと苦しんでいます」と水野。金曜の事前走行では、これまた珍しく転倒を喫していました。

画像: この4人がTOP4 お、偶然ゼッケンが1-2-3-4と並んでいますね

この4人がTOP4 お、偶然ゼッケンが1-2-3-4と並んでいますね

決勝レースでは、まず中須賀がホールショットを奪う好スタートを見せ、岡本、野佐根航汰(AstemoホンダドリームSIR)が続く中、水野はスタートをミスし、後方に飲まれてしまいます。1コーナーに7~8番手あたりで入ったんじゃないでしょうか。
スタートでは名越哲平(SDGホンダレーシング)、岩田悟(Team ATJ)、そして上位陣では唯一ダンロップタイヤを履く長島哲太(DUNLOPレーシングチームwith YAHAGI)も好スタートを見せました。オープニングラップのうちに2番手に、3周目にはトップに浮上した野左根ですが、スタート時にジャンプスタートを取られ、ライドスルーペナルティが課せられてしまいます。

画像: 走るごとにスピードが上がって行く野佐根+CBR1000RR-R 野佐根もCBRに乗り始めてまだ半年!

走るごとにスピードが上がって行く野佐根+CBR1000RR-R 野佐根もCBRに乗り始めてまだ半年!

これでトップグループは中須賀&岡本のヤマハファクトリーデュオと、後方から追い上げてきた名越、 水野といったオーダーでこの4台が5番手以下を引き離してレースをリード。名越、いいですね、明らかにもてぎ2&4よりも仕上がりが良さそうでトップグループに食らいつきます。
中須賀vs岡本の2台が水野&名越を引き離しながらトップ集団が分かれたレース中盤、セカンドグループを走っていた長島が転倒し、レースは赤旗中断。残り8周で第2レースでの決着となります。

画像: シーズン前半よりも明らかにペースが上がってきている名越 事実上、ホンダのトップチームのライダーだけにそろそろ結果出さないと!

シーズン前半よりも明らかにペースが上がってきている名越 事実上、ホンダのトップチームのライダーだけにそろそろ結果出さないと!

まるでいつもの中須賀のような岡本の走り

仕切り直しの第2レース、今度は岡本がホールショットを獲り、中須賀、名越、水野、岩田、高橋巧(日本郵便ホンダドリームTP)が続きます。オープニングラップでは中須賀が岡本の前に出ますが、岡本も中須賀をピタリ追走。3番手以下に水野、名越が続き、ライドスルーペナルティを経て、レース2は16番グリッドからのスタートとなった野左根もロケットスタートで、このあたりまで追い上げてきます。
トップの2台は岡本が前に出る局面もあったものの、中須賀が抜き返し、4周目の1コーナーで岡本が再び、いや三たび前へ。ブレーキングで、加速でマシンを何度もバッタバタに暴れさせながらでも中須賀の前に、という気迫が見えた岡本のパッシングでした。
この気迫に押されたわけではないでしょうが、中須賀もすぐに抜き返すことができず、レース2も中盤へ。3番手水野に野左根が続き、その後ろには高橋が名越をかわして6番手に浮上してきます。 そしてトップ争いは、岡本がジリジリと中須賀を引き離して独走態勢へ。まるでいつもの中須賀を見ているような、岡本のパッシングからのスパートでした。
レースはこのまま岡本が菅生大会以来の2勝目をあげ、中須賀→水野の順で、またこの3人が表彰台。勝った岡本、レース後に珍しく感情をあらわにしてタンクをばんばん、と強めに(笑)撫でるシーンも見られました。

画像: 序盤こそ岡本に先行した中須賀ですが、レース中盤に逆転されてしまいます

序盤こそ岡本に先行した中須賀ですが、レース中盤に逆転されてしまいます

「赤旗前はちょっと厳しかったんですが、中断のあいだにチームにセッティングを変えて出ていって、うまく走りきれました。中断中にセッティングいじったからぶっつけ本番だったんですが、うまくハマってくれました」と岡本。そして……
「実はもてぎ2&4のときに父親が亡くなってしまって…。走ってる最中も何度か父親がお頭に浮かんだくらいで、ちょっと後押ししてくれたのかも」という岡本の告白。
これにはさすがの絶対王者も2位が 精一杯、という感じでしたね。岡本、強かった、速かった! ベストラップも、中須賀を引き離したあたりの周で、中須賀よりも0秒6も速かった!

画像1: まるでいつもの中須賀のような岡本の走り

日曜に行なわれたJSB1000クラスのレース2は、予選でセカンドベストタイムを獲った岡本がポールポジションからのスタート。ここでも中須賀が好スタートを見せて岡本、野左根、水野が続きます。その後方に名越、岩田、長島、高橋、そして上位陣唯一のスズキGSX-Rを駆る津田拓也(オートレース宇部レーシング)。

画像: 徐々に存在感を増してきた高橋 今シーズン、ここまでの最高位は5位どまりだった

徐々に存在感を増してきた高橋 今シーズン、ここまでの最高位は5位どまりだった

ここで動きを見せたのは7番手争いで長島をプッシュする高橋。「予選グリッドより順位をあげて1周目を終わらせたことがない」という高橋は、みんなが消耗してきたタイヤに苦しむ後半に強い=序盤のペースが上がらない、というジレンマと戦っているようです。鈴鹿8耐は勝ってますけどね、全日本ロードでは全く違うマシンで走っていますから!
4周目に岡本がトップに立って、中須賀が続き、やや離れて野左根→水野→名越→岩田のトップ6。さらにそこから大きく差をつけられての7番手争いでは、6周目に高橋と津田がようやく長島の前に出て、さぁ上位陣追撃のはじまり!

画像: 日曜のレース2、1周目のオーダーはこんなメンバー この後方からの座ね、高橋が追いついてきます

日曜のレース2、1周目のオーダーはこんなメンバー この後方からの座ね、高橋が追いついてきます

ここで水野が1コーナーで名越のアウトからパッシングに出ますが、そのままコースアウトしてグラベルで転倒! 最後尾から再スタートしますが、ピットにも入らず周回を続行。順位じゃない、たくさん走ることがポテンシャルアップにつながるんだ、という水野の気迫が見えました! 水野、たしか23年シーズン一度も転んでいない、って言っていましたから、1レースで2度は大事件。裏を返せば、今までよりもう一歩攻められるバイクに仕上がってきたのかもしれませんね。

画像: レース1よりも早めの仕掛けで中須賀をパスした岡本 ここからジリジリ引き離していった

レース1よりも早めの仕掛けで中須賀をパスした岡本 ここからジリジリ引き離していった

トップ争いは、土曜のレースともまた違って、序盤から岡本がじりじりと2番手中須賀を引き離す展開。珍しいですね、中須賀と岡本の戦いが接戦ではなく、この早い周回数から差がつくなんて。水野が転倒でポジションを落としたことで、トップふたりから大きく遅れるものの、名越vs野佐根の争いが、つまりは表彰台争い! 今シーズン、中須賀、水野、岡本以外のライダーが表彰台に上がるのは初めてのことなので、野佐根と名越のバトルも白熱。しかしその頃、ややペースが落ちてきた岩田を、高橋が自己ベストタイムを連発してパス! レース中盤は岡本→中須賀→野佐根→名越→高橋→岩田といったオーダーになりました。

トップ争いは岡本が中須賀を完全に引き離して独走態勢。3番手争いは野佐根vs名越のふたりに、ぐいぐい高橋が迫ります。レース中の野佐根、名越、高橋のベストタイムは高橋がいちばん遅かったんですが、高橋のレース終盤のタイムは、前のふたりを凌ぐものでした。この辺が、高橋の「後半に強い」走り。
高橋はラスト3周で野佐根と名越をかわし、ついに3番手に浮上。そのまま名越と野佐根の反撃を抑え切って、名越は最終ラップに転倒! 独走で2連勝を決めた岡本、その岡本に初めて連敗した中須賀に続いて、高橋が今シーズン初表彰台を獲得。中須賀、水野、岡本以外のライダーが表彰台に上がるのは野佐根かな、名越かな、と思われていた今シーズンですが、伏兵(って言ったら失礼ですが)高橋が入りました。

画像: またもヤマハファクトリーデュオの1-2フィニッシュとなったオートポリス大会 中央は吉川和多留監督

またもヤマハファクトリーデュオの1-2フィニッシュとなったオートポリス大会 中央は吉川和多留監督

「ST600時代もST1000時代も含めて『連勝』って初めてなんです。いつも一度勝ったら、その勢いを続けようとトレーニング頑張ってたんですけど。土曜より暑かったけど、しっかり落ち着いて自分のペースをキープできました。この2連勝はオヤジがしっかり支えてくれたのかもしれないですね。バトルになったら中須賀さんのいいとこをが出てしまうので、できるだけ引き離して、って決めていました」(岡本裕生)

「レース1みたいな展開にはさせないぞ、ってレース中盤にユウキと勝負したかったんですけど、それ読まれてたのかな。必死で追いかけたけどダメでした。ユウキは集中していい走りしてました。残りは岡山と鈴鹿、得意なコースが続くので、今回の悔しさをばねにがんばります!」(中須賀克行)

「運も味方してくれた感じもありましたが、今シーズン初めての表彰台、うれしいです。中須賀さんにも表彰台で『お久しぶりです』って挨拶しときましたし(笑)。レース前半は、前がまったく見えないくらい絶望的な展開で、中盤ごろにいいフィーリングになって、後半勝負かな、と。今シーズンはレース序盤に前に離されがちなことが続いているので、後半勝負できるマシンで、前半からいいペースを出せるようにマシンを仕上げていきたいです」(高橋巧)

これでJSB1000クラスは残り2戦3レース。ランキングトップの中須賀と2位岡本の差は13ポイント。計算上では岡本が3レースすべて優勝すれば逆転チャンピオンです! 水野も巻き返してくる、中須賀がこのまま終わるわけがありませんから、そんなうまくはいかないか。残り2戦3レースがますます楽しみになってきました!

ポイントランキング6戦終了時
1位:中須賀克行 176P 2位:岡本裕生 163P 3位:水野涼 133P 4位:野佐根航汰 98P 5位:高橋巧 85P 6位:津田拓也 77P

※※
なお、このオートポリス大会で、ST600クラスに参戦予定だった芳賀涼大(NITRO WORK NAVI OGURA CLUTCH)が、決勝レーススタート時の事故で帰らぬ人となりました。スターティンググリッドで芳賀のマシンがエンスト、後方グリッドからスタートしたライダーが芳賀に衝突、振り落とされた芳賀に他マシンが接触し、ドクターヘリで病院へ搬送されていました。事故後は一度、意識が戻ったとの情報はあったのですが、病院で死亡が確認されたものです。
芳賀は、その苗字でわかる通り、かつてWSBKを走ったレジェンドライダーのひとり、芳賀紀行さんの次男で、この8月に21歳になったばかりでした。
芳賀紀行さんはじめご家族の皆様、関係者の皆様に深く哀悼の意をささげたいと思います。深く深く、ご冥福をお祈り申し上げます。

画像2: まるでいつもの中須賀のような岡本の走り

写真・文責/中村浩史

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