2024年10月11日から13日にかけて、ポルトガルのエストリル・サーキットでFIM女子世界選手権(FIM Women’s Circuit Racing World Championship、以降WCR)の第5戦エストリルラウンドが行われた。

天候に翻弄されたレース1をカラスコが制す

今季からスタートしたWCRも、今季残すところあと2戦。マリア・エレーラ(KLINT FORWARD FACTORY TEAM)とアナ・カラスコ(EVAN BROS RACING YAMAHA TEAM)の熾烈なタイトル争いが繰り広げられる中、スーパーポールでトップタイムを記録しポールポジションを獲得したのはカラスコだった。

逆転を狙うエレーラはしっかり2番グリッドを獲得、3番グリッドには久々にベアトリス・ネイラ(AMPITO / PATA PROMETEON YAMAHA)が入り表彰台を目指す。

ウォームアップにアクシデントが発生。なんと2番グリッドのエレーラがスタートできずピットに戻ってしまったのだ。エレーラはスタートを切り隊列に戻るも、2番グリッドから一転最後尾からのスタートとなってしまった。

雲が上空を覆い今にも雨が振り出しそうな天候ではあるものの、気温21度、路面温度26度のドライコンディションの中、12周のレース1がスタート。カラスコがホールショットを奪う中、後方ではエレーラが猛烈な追い上げを見せる。

スタートでいきなりトップ10までポジションをあげると、次々とオーバーテイクしていったエレーラはなんとオープニングラップを5位で通過。このクラス屈指のスピードを誇るエレーラが凄まじい走りを披露した。

画像: 最後尾からわずか3周で2位にまで浮上したエレーラ。

最後尾からわずか3周で2位にまで浮上したエレーラ。

2周目のターン1ではテイラー・レルフ(TAYCO MOTORSPORT)がブレーキングでカラスコをオーバーテイクしトップに浮上。自身初のラップリーダーになるも、カラスコが再びトップに立つ。

カラスコは首位を確実のものにすべくレルフを攻略しトップに立つも、3周目にはライバルのエレーラが3位に浮上。勢いに乗るエレーラはレルフもパスし、わずか3周でカラスコの背後につけた。

いつもは攻撃的な走りでオーバーテイクを図るエレーラだが、今回はカラスコが一貫してトップを走行。しかし、残り5周となったところで突如雨が降りはじめ、レッドクロスの旗が振られる事態に。

画像: カラスコに狙いを定めるエレーラ。

カラスコに狙いを定めるエレーラ。

そして残り4周のターン1でカラスコが痛恨のブレーキングミスを犯し、エレーラがついにトップに浮上。後方では雨による転倒者が出たことで赤旗が掲示された。

周回数が少ないためレースはリスタートされずここで終了。1周前の順位が採用されカラスコが優勝、エレーラが2位、ネイラが3位となった。カラスコは運も味方にし貴重な優勝をゲット。エレーラとの差を14にまで拡大することに成功している。

WCR第5戦 レース1結果

画像1: resources.worldsbk.com
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サンチェスが劇的な逆転劇で初優勝

画像: タイトルコンテンダーに割って入ったサンチェスが躍動。

タイトルコンテンダーに割って入ったサンチェスが躍動。

日曜日に行われたレース2はレース1の結果のもと、サラ・サンチェス(511 TERRA&VITA RACING TEAM)がポールポジション。2番グリッドにネイラ、3番グリッドにエレーラ、そしてレース1を制したカラスコが4番グリッドからのスタートとなる。

気温23度、路面温度30度のドライコンディションの中、12周の最終レース2がスタート。エレーラがトップに立ち、サンチェス、カラスコの順でオープニングラップを終えると、サンチェスがエレーラをオーバーテイクしトップに浮上。

サンチェスはスタート直後のターン1の侵入やエレーラを捕らえた際のブレーキングが非常によく、序盤からタイトルコンテンダーであるエレーラに臆すことなく勝負を仕掛けていく。

画像: タイトル争いを繰り広げるカラスコとエレーラが今回も優勝争いを展開。

タイトル争いを繰り広げるカラスコとエレーラが今回も優勝争いを展開。

カラスコとのタイトル争いにおいては優勝がほしいエレーラ。序盤から積極的にトップを窺うも3周目のターン4でラインを外し4位に後退してしまう。

ここからはサンチェス、カラスコ、ネイラ、エレーラの4台による優勝争いが展開される。ラップごとにポジションが入れ替わる激しい戦いが繰り広げられる中、カラスコ、サンチェス、エレーラ、ネイラの順でファイナルラップに突入。

ブレーキングが強いサンチェスやエレーラが仕掛けるかと思われたが順位に変動はない。しかし、最終コーナーからチェッカーフラッグまでの距離が長いエストリルの特性を活かしたサンチェスが2番手で最終コーナーをクリアし、カラスコのスリップストリームに入る。

そして、コントロールライン寸前で逆転しトップチェッカー。劇的なオーバーテイクを披露したサンチェスがWCRで初優勝を挙げた。

あと一歩で優勝を逃してしまったカラスコだが、それでもエレーラの前でフィニッシュ。レース2でも再びポイントを稼ぎ、両者のポイント差は18にまで拡大。カラスコはポイントリーダーとして最終戦に挑むことになった。

エレーラは3位で表彰台を獲得。週末を通し運に見放された感のあるエレーラだが、勝負強さと速さは圧倒的なものを持っている。最終戦では厳しい戦いになるが、逆転でのチャンピオン獲得を目指す。

WCR第5戦 レース2結果

画像2: resources.worldsbk.com
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平野は厳しい週末となるも力走

画像: 難しいコンディションの中、セッティングを探る平野。 x.com

難しいコンディションの中、セッティングを探る平野。

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前戦クレモナでは初の転倒を喫するなど厳しい戦いとなった平野ルナ(TEAM LUNA)。今回も初走行となるサーキットでの戦いということで、データがない中でのレースとなる。

しかし、フリー走行から天候に恵まれなかったため、ドライセットを見つけることができず苦戦。そんな中でもウェットでのセッティングを見つけ精力的に周回を重ねた。

18番グリッドからスタートしたレース1は、スタートで一気に14位にまでポジションアップに成功。素晴らしいスタートを切るも、ドライでの走行データがない中でのレースでは厳しく、タイムをあげることはできなかった。

順位を下げていき、20位でのゴールとなったが、転倒しそうになりながらもしっかりとマシンをゴールまで運んだ。

続く日曜日にも試練は続く。朝のフリー走行で日陰により視認しづらいウェットパッチに乗ってしまいハイサイドを喫し激しく転倒。腰を打ちつけ、ライディングもままならない状況だった平野だが、レース2に強行出場し、19位完走を果たした。

画像: メカニックのマヌ氏によってマシンの修復が行われ、レース2も出走。 x.com

メカニックのマヌ氏によってマシンの修復が行われ、レース2も出走。

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マシンをホールド出来ないほどのコンディションの中、貴重な時間や経験を無駄にすることなく走り抜いた平野。彼女がたった1人で世界に挑んだ挑戦は次戦のスペインラウンドで最終戦を迎える。

平野はおそらくWCRの中で最も厳しい環境で参戦しているライダーだ。何においても制約のある中で全開でアタックすることもままならない状況ながらも、完走・ポイント獲得と結果を残してきた。

画像: 満身創痍の中、ゴールを目指す平野。 x.com

満身創痍の中、ゴールを目指す平野。

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10月18日から20日にかけてスペインのヘレスサーキット・アンヘル・ニエトで行われる最終戦も厳しい戦いになるかもしれない。しかし、今シーズンの締めくくりとして怪我なく、納得のいく走りができること、そして来季の活動に繋がるレースになることを期待したい。

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レポート:河村大志

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