文:太田安治/写真:関野 温
ワイズギア「パフォーマンスダンパー」|テスト&レポート
街乗り・ツーリングからサーキット走行まで効果あり!
車体関係のチューニングに興味のある人ならヤマハ発動機の「パフォーマンスダンパー」を知っているだろう。
もともとは自動車の走行中に発生する車体振動を抑制するために開発され、その効果が認められてオートバイ用も登場。ヤマハ車の純正アクセサリーとして用意されているほか、用品会社が扱う他メーカー車用のキットも豊富にそろっている。
これまで既存のパフォーマンスダンパー(スチールボディ)を装着した5車種に試乗したが、どの車種でも感じ取れるのが振動低減と車体剛性の向上。特に手足のシビレを誘発する高周波振動が抑えられ、ツーリングでの快適さは確実に高まる。
剛性は車種によってフィーリングが異なるが、直進安定性が高まり、ハンドリングがしっとりすることは共通。引き換えに低速域でのハンドリングに僅かな粘りが出るが、決してネガティブな感触ではなく、「落ち着く」という表現が相応しい。
パフォーマンスダンパーの装着効果
オートバイの車体は基本的に金属で構成されている。これが加減速やコーナリング、ギャップ通過時によって僅かに変形し、さらに元に戻る力が働いて変形を繰り返す。パフォーマンスダンパーはオイルダンパーによる減衰力を付与することで変形(振動)のエネルギーを吸収し、走りの質を変える機能パーツだ。
パフォーマンスダンパーの構造
パフォーマンスダンパーの正体は高圧窒素ガスを封入したオイルダンパーなので、基本構造はリアサスペンションユニットに近い。
ただし車体の変形という微少な動きでも減衰効果が発揮できるよう、マイクロメーター単位で設計されている。実際に走るとストローク量が僅か1mm程度ということが信じられない効果を実感する。
今回は新製品のアルミパフォーマンスダンパーを新型MT-09でテスト。スタンダード状態でペースを変えながら周回し、ピットインしてアルミパフォーマンスダンパーを装着して同じようなペースで周回した。
公道走行に近いペースで走ると、既存のパフォーマンスダンパー装着車と同じく振動低減とハンドリングの落ち着きを感じる。もともとMT-09の3気筒エンジンは高周波振動が気になるタイプではないが、さらに振動の角が丸まった感触で、バックミラーのブレも減った。6速・120km/hでの長時間クルージングといったシチュエーションではライダーの疲労度に大きな差が出るはずだ。
50km/hから90km/hのペースではコーナー切り返しの際に僅かに反応が遅れる感触があるが、よくよく注意してスタンダードと比べて感じるレベル。むしろ路面の荒れた部分を通過する際に車体が弾かれる量、弾かれた後に来る“オツリ”が減って快適に走れるメリットが際立つ。
各ギアでレッドゾーンまで回し込むスポーツライディングでは高速コーナーの安定性が増し、ブレーキを残したままの寝かし込み、トラコンを効かせながらの立ち上がりでの車体挙動変化も穏やかになって安心して走れる。ストレートでは2速→3速→4速のシフトアップでフロントが浮き気味になるが、ハンドルの振られる量が減り、収束も早まることで躊躇なく全開加速できる。
新型MT-09はエンジンと車体のフィーリングが上質になっているだけに、スタンダード状態で何の不満もなければ無理に装着する必要はないだろう。ただし一度装着して上質度が増したことを実感すれば、二度と外す気がしなくなることは断言しておく。
文:太田安治/写真:関野 温