文:キャプテン・クルーザー/写真:森 浩輔
王道『クルーザー』としてのんびり楽しむつもり……だったんだ
なんてこった……クルーザーのことなら「だいたいわかる」つもりでいた俺(キャプテン・クルーザー)が1日に二度も同じバイクに驚かされることになるとは……
ここまでカワサキのエリミネーターというバイクに対して、乗る前は『暴れ馬だろう』と予想し、実際に街や高速道路を走ってみたら『王道のクルーザー』だったことに驚かされてきたんだが……
コイツはそれじゃ終わらねぇ。
エリミネーターにはどうやら二番底がある!?
それは高速道路を降りた後のことだ……
街乗りからハイウェイのクルージングを『大陸横断バイク』のようなゆとりでこなしたエリミネーターは片道100km程度の距離では疲れを感じることもない。
そうだ……乗ってみて気づいたことがある!
コイツだ。これが思いのほか……効く!?
小ぶりなのでデザイン優先だと思っていたヘッドライトカウル。だが実際にハイウェイをクルージングしてみると、強烈なハイウェイ風から思った以上にライダーを守ってくれていたんだ。
具体的には乗り手の胴体部分のど真ん中(お腹とか胸あたり)に当たる風を和らげてくれて、長距離走行での疲労感を軽減してくれる。あると無いとでは大きな差だ。どうやら見た目だけのパーツじゃないってことだろう。
クルーザーだってことを忘れちまう……
そうしてたどり着いたワインディングロードは、朝のバッドコンディションから一転してブルースカイなヘヴンが広がっていた。
こいつはいい……ゆったりクルージングするにはもってこいだ。
このシルキーで心地よいエンジンなら一般道もノンストレスに違いない。そこで俺はエリミネーターに一発、鞭をくれてやったんだ。
ハイヨー! エリミネータァー!
な……っ!?
速、いッ!?
低いギアでアクセルをワイドオープンすると、ロードスポーツのように吹け上がっていくだとっ!?
MAXホースパワー48馬力を発生する10000回転なんて……とうてい、回せねぇ……ッ!?
コイツは、ハリケーンだ!
※当記事内の「ホースパワー」は英馬力(hp)ではなく仏馬力(ps)です
しかも……コーナーが予想外に走りやがる!?
前後サスペンションはこれまでに言ったとおり、しなやかに「動くタイプ」だからコーナーの進入じゃけっこうフロントフォークがダイブするんだが……そこからフワフワするような不安定さが無い!
前後ともサスペンションが沈み込んだ奥で粘る。驚いた……減衰力が失われないだと!?
しかも……けっこうバンク角があるじゃねぇか!?
そろそろステップが路面にヒットか? と思ってもまだ余裕が残っている……そしてアイアンホースを寝かせた状態でも姿勢は乱れず安定したままだ。
タイヤはロングライフな感じのツーリングタイヤのはずだが……フレームとサスペンションがタイヤの性能をうまく乗り手に使わせてくれているイメージだ。
コーナー脱出のためにアクセルを全閉から開けていく瞬間も、シルキーなパワーデリバリーのおかげで恐れを感じることはない。
アクセルオンと同時にリアサスペンションが素早く沈み、そのまま路面をつかむ。
ファンタスティックッ!
なんてこった……サラブレッド(←ロードスポーツのこと)かよ!?
ゆったり系バイクだなんてとんでもねぇ勘違いだ……乗っているとコイツがクルーザーだってことを忘れそうになる!?
そのまま調子に乗りすぎてコーナリング中に大きめのギャップを踏むと、さすがに暴れようとするが、それはライダーが抑え込むんだ! エリミネーターはクルーザーだが、時としてスポーツバイクに向き合う心構えが必要になるんだぜ?
車体のホールド、そしてブレーキ&アクセルでの姿勢管理が命だ!
『やるじゃねえか。熱いハート……確かに受け取ったぜ』
ひとしきりワインディングを走った後、エリミネーターと俺の間には信頼関係が生まれていたように思う。正直に言うが、ワインディングの走りには期待していなかったんだ。ポニーのように優しく扱ってやるつもりだった。
だが、現実として驚かされたのは俺のほうだ。
街乗りや高速道路で魅せたジェントル&コンフォートも魅力だったが、燃え上がるようなエキサイティングまで楽しめるとは……
しかもこの挑発的なフェイスマスクだろ? そのギャップに惚れそうだぜ。
昔のエリミネーターは直線番長だったと聞くが……
今は違う。
コイツは……走りのアイアンホースだ!
(まとめ編へ続きます)