バニャイアがスプリントを制しタイトル決定は日曜日に
ポイントではマルティンがバニャイアに対し24ポイントをリード。仮にマルティンがスプリントレースでバニャイアより2ポイント多く獲得した時点でタイトル争いは決着する。
前戦マレーシアGPのスプリントで痛恨のリタイアを喫してしまったバニャイアは優勝するしかない状況。あとがないバニャイアは予選で見事ポールポジションを獲得し、マルティンにプレッシャーをかけた。
今大会をもってMotoGPを引退するアレイシ・エスパルガロ(Aprilia Racing)が躍動。カタルーニャ州生まれのアレイシは勝手知ったるサーキットで素晴らしいラップを叩き出し、2番グリッドを獲得してみせた。
3番グリッドにはマルク・マルケス(Gresini Racing MotoGP)が入っている。これは予選にてマルケスがバニャイアの背後について走っておりタイムを更新したことも大きい。
さらにバニャイアは自身とマルティンとの間に少しでも台数を増やすためにこれを意図的に行っていたというのだから脱帽である。ランキングトップのマルティンは4番グリッドを獲得した。
気温19度、路面温度20度のドライコンディションの中、12周のスプリントレースがスタート。
スタートが得意のマルティンが好発進を決め、バニャイアに並ぶ。しかし、さらにそのイン側からエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)、アウト側からマルケスも並び、いきなり4ワイドでターン1に侵入した。
バニャイアがトップを守り、2位にはバスティアニーニ、マルティンは3番手につける。ポイント差を考えるとポジションをあげる必要のないマルティンだが、自ら栄光に向けて手を伸ばす。
3周目のターン1でバスティアニーニをオーバーテイク。2位に上がり、バニャイアを追いかけるかに思われたが、バスティアニーニも諦めずマルティンとバトルを展開した。
この2位争いが勃発したことでトップのバニャイアは独走状態に。バニャイアはペースを維持し付け入る隙を与えることなくスプリント7勝目を上げた。
2位争いはファイナルラップに動きが。チームメイトのバニャイアに対する援護だけではなく、自身もランキング3位がかかっているバスティアニーニはターン5でマルティンをオーバーテイクし土壇場で2位に浮上。
2位の座を失ったマルティンだったが、リスクを避けバトルには持ち込まずバスティアニーニが2位、マルティンは3位でフィニッシュした。
この結果、スプリントでのタイトル決定とはならず、勝負は最終レースで決着がつくこととなった。バニャイアがポイント差を詰めるも、マルティンの優位は変わらない。日曜日の決勝でバニャイアが優勝しても、マルティンが9位以内に入れば自身初の最高峰クラス制覇となる。
MotoGPクラス史上初の快挙! マルティンがサテライトチームでチャンピオン獲得!!
運命の決勝日は晴天。11月ということもあり気温が低いが、決勝レース前にはスプリントと同じくらいの気温にまで上がってる。
泣いても笑っても最後のレース。チャンピオン決定戦ということもあり、グリッドには多くのゲストが賑わっていたが、そこには張り詰めた空気が流れていた。
前日と同じグリッドからのスタートとなる決勝レース。タイトルコンテンダーの2台、そして引退レースを迎えるエスパルガロがいる1列目と2列目には通常以上に多くの関係者が集っている。
チャンピオンをかけた戦いに挑む者、優勝で今シーズンを締め括ろうとする者、MotoGPから去る者、さまざまな想いが交差するなか、最後のレースがスタートした。
スタートは前日と同じくタイトルコンテンダーの2台が好スタートを切り、バニャイアがトップ、マルティン、そしてマルケスが続く。
優勝することを目指しているマルケスは2周目のホームストレートでマルティンのスリップを使いオーバーテイク。2位に上がった。その後ろにはエスパルガロとバスティアニーニが続いた。
来季のドゥカティファクトリーでチームメイトになるバニャイアとマルケス。マルケスは優勝だけを目指していたが、バニャイアが周回を重ねるごとにマルケスとのギャップを拡げていく。
マルティンは3位を走行しトップ2を追うことなく周回。さらに、4番手争いが複数台により激しく行われていたこともあり、マルティンはリスクの少ない単独走行で周回することができた。
一時マルケスに迫られたバニャイアだったが、現チャンピオンらしい力強い走りをキープ。後半になるとその差は歴然で、マルケスはバニャイアに仕掛けることができなかった。
ラストレースとなるエスパルガロは、ポジションを上げていきたアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)と熾烈な4位争いを展開。
ペースの良いのはアレックスだが、エスパルガロはブレーキングで対抗し何度もアレックスの攻撃を抑え込んでいった。
レースはトップの座を守り続けたバニャイアが優勝し、今季11勝目を挙げた。マルケスが2位、そして3位でチェッカーを受けたマルティンが自身初のMotoGPチャンピオンに輝いた。
サテライトチームのライダーがチャンピオンに輝くのは2002年にMotoGPになってからは初、500ccクラス最後の年となった2001年にバレンティーノ・ロッシが達成して以来の快挙となった。
ロッシもサテライトチームでのチャンピオン獲得という偉業を達成しているが、最新型NSR500を使用、5連覇を達成したミック・ドゥーハンとともに栄華を極めた名エンジニアであるジェレミー・バージェスを迎え入れるなど、ワークス体制といって良い体制でもあった。
マルティンに関しても、マシンは最新型のデスモセディチGP24を使用していたが、同じドゥカティのワークスチーム相手にチャンピオンを獲得したことはまさに偉業と言っていいだろう。
最終レースとなったエスパルガロは、最後にアレックスの先行を許してしまったが、引退するには惜しいパフォーマンスを見せ5位でフィニッシュ。また、こちらもMotoGPでラストレースとなった中上貴晶(IDEMITSU Honda LCR)も走り切り17位でフィニッシュしている。
この2名は来季ホンダの開発を担うことになり、ワイルドカードでの参戦もあるとのこと。アプリリアをトップチームに押し上げたアレイシ、そしてホンダを献身的に支え続けた中上がホンダ復活の鍵を握っている。レースだけではなく、彼らの活躍にも期待したい。
2024 MotoGP 第20戦ソリダリティGP 決勝結果
レポート:河村大志