以下、文:ノア セレン/写真:関野 温
ホンダ「CBR650R」VS トライアンフ「デイトナ660」|深堀りチェック
1.ブレーキ
非常によく似た構成ながらブレーキはホンダに軍配か?
調整機能は持たないスタンダードな倒立フォークに17インチホイール、デイトナはトライデントからアップデートされたラジアルマウントキャリパーを採用したことにより、ブレーキ機構は2台とも同じ。
ただブレーキの効きやコントロール性、ハードブレーキング時の安定感ではCBRが一枚上手だった。デイトナはステムのオフセットがスポーツバイクとしては大きめなようで、これが適度な包容力や豊かな接地感をもたらしていた気もする。トライアンフの設計思想が面白い。
2.カウリング
性能以上の効果を引き出す。それがエアロダイナミクス
2台ともよく似たデザインのフルカウル仕様ながら、CBRの方がライディングポジションとスクリーンの関係性が良いような印象。長身の凸(ノア)でも窮屈に感じることはなかったので防風性能は非常に高く感じた。
さらに速度もエンジン出力から期待できる以上にスルスルとした伸びを感じたので、空力性能が優秀なのかもしれない。なおCBRの2眼ライトはロービームでもハイビームでも左右が一緒に切り替わる。こういう演出もCBRにプレミアムを感じるところだね!
3.マフラー
車体下のマフラーは何よりも安全です
2台ともサイレンサーを含め、排気系はきれいに車体下に収まっているのは素晴らしい。低重心化やスリムさを実現するだけでなく、誤って触れてしまってヤケドといったリスクも低減されるからだ。
ただ排気口が、素直に横に出ているデイトナに対してCBRはなぜか上向き。なるべく静かで上質なバイクが好きなので排気音が妙に耳に届く感じが気になったのと、小石などの異物がコロリンと中に入ってしまわないかと心配。
ステップは2台とも防振ゴム無しのアルミ製で、CBRはパワーバンドに入る7500回転以上でハンドルやステップに微振動が発生するので防振対策のゴムや重りが欲しいところ。デイトナは問題なかった。
ノア セレンが選ぶ2台の“極品” ポイント
4気筒という贅沢か、3気筒を極める選択か
コストに厳しい昨今、4気筒を出してくれるだけで贅沢な気持ちになるが、CBRのエンジンは超高回転型というよりは台形トルクカーブ型的な、とてもフレキシブルなもので幅広いシーンに対応。デイトナのトライデントベースとはいえしっかりと興奮できる味付けになっていて、低中回転域からでもパワフルな特性がワインディングで強みとなっていた。
CBRのミラーはいっさいブレなし
2台のミラーは取り付け位置や形もそっくりなのに、デイトナの方は高回転までエンジンを回すとかなり振動が出てしまい、ミラーがブレブレになることもあった。対するCBRは回転域/速度域に関わらず常にクッキリハッキリ。こういうトコロも高級感があるね!
ホンダ「CBR650R」VS トライアンフ「デイトナ660」|総合評価
ファーストバイクを愛でるのか、セカンドバイクを振り回すのか
走り出した時は「CBR圧勝! 話にならん!」と思ったけど、デイトナのリアサスにプリロードをちゃんと掛けて、ワインディングを走ったら「ありゃりゃ、甲乙つけがたいな」へと評価が変化。とくにデイトナで元気に走った時は重心が高くてスポーティだし、トルクバンドの広いエンジンも元気でシチュエーションを選ばなかった。
それでも最初にCBRで感じた「良さ」が覆らないのは、細部に感じられる品質の高さだね。カウルの立て付けや各部のフィニッシュの上質さなど、これはミドルクラスでありながら確かな高級車。あらゆる使い方に対して懐深く応え、所有感も満たしてくれる。オーナーにとってしっかり愛でたい一張羅バイクだ。
対するデイトナは少し荒削りで、セカンドバイクとして主に短距離を気軽に走らせたい、あるいはハイグリップタイヤを履かせてサーキット走行にもチャレンジしたい、という楽しみ方が合ってるんじゃないかな!
4気筒ならではの爽快感はあるし、パワーバンドに入ればチカラも十分。ただ7500回転から先の微振動はかなり気になる。ハンドリングはニュートラルで、サーキット走行でもとても扱いやすく攻めた走りも許容した。全体的な作りの良さは快適性も高めている。
爽快さでは4気筒に敵わないかもしれないが、中回転域でのトルクは強い武器で、出力数値は同じでもデイトナの方がパワフルに感じる。またスリムで振り回せるからFun要素も高い。ただCBRに比べると全体的にややチープなので快適性や所有欲でCBRに譲るかも。
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ホンダ「CBR650R」VS トライアンフ「デイトナ660」|スペック・価格
CBR650R | DAYTONA 660 | |
全長×全幅×全高 | 2120×750×1145mm | NA×736×1145.2mm |
ホイールベース | 1450mm | 1425.6mm |
最低地上高 | 130mm | NA |
シート高 | 810mm | 810mm |
車両重量 | 209kg | 201kg |
エンジン形式 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列3気筒 |
総排気量 | 648cc | 660cc |
ボア×ストローク | 67.0×46.0mm | 74.04×51.1mm |
圧縮比 | 11.6 | 12.05 |
最高出力 | 70kW(95PS)/12000rpm | 70kW(95PS)/11250rpm |
最大トルク | 63N・m(6.4kgf・m)/9500rpm | 69N・m/8250rpm |
燃料タンク容量 | 15L | 14L |
変速機形式 | 6速リターン | 6速リターン |
キャスター角 | 25°30′ | 23.8° |
トレール量 | 101mm | 82.3mm |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク | Φ310mmダブルディスク・Φ220mmシングルディスク |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70ZR17(58W)・180/55ZR17(73W) | 120/70ZR17・180/55ZR17 |
燃料消費率 WMTCモード値 | 21.5km/L(クラス3-2)1名乗車時 | NA |
製造国 | 日本 | NA |
メーカー希望小売価格 | 110万円(消費税10%込) | 108万5000円(消費税10%込) |
文:ノア セレン/写真:関野 温