文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸/取材協力:ボッシュ株式会社
ボッシュの新世代安全支援技術がスゴイ! 6つの技術を紹介
探知能力、処理能力の向上が生む安心と快適
世界中で、多くのバイクが採用しているボッシュのライディングアシスト制御ユニット群の最新機能を体感してきた。その中でも主役となっていたのは、前車追従型オートクルーズ・ACCに関わる基礎技術の進化。
まず新開発のレーダーユニットが強力だ。探知距離だけでなくその探知幅と識能力が大きく向上。IMU(慣性計測装置)やECU(コンピューター)との連携や、その指示を行うHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)の処理速度も上がっている。
それらによって、動いている周囲の乗り物の探知能力が格段に上がっている。特にバイクにとって厄介なコーナリング中の周辺認識とその時の制動、追従などの対応プログラムも極めて繊細な処理が可能となった。
新世代レーダーユニットは超軽量!
バイクのノーズに収まるレーダーユニットの最新型は自律調整機能つきで、従来必要だった取付の際の精密なレーダー照射角度調整が不要になったほか、本体も金属製からプラスチック製となり、従来のものより30%も軽くなるなど、大幅に軽量化された。
最も驚いたのは、円旋回場で好きにテストして下さいといわれたときだ。40km/hで円旋回中のクルマに、ACCを作動させたまま、ほぼフルバンクで80km/hほどで接近した時だった。さすがに追突しそうになって自分で制動したが、それまではとても器用に、不用意なスリップなど起こさずバンク中に急制動してくれた。
自車の速度を60km/hまで落とせば、強力な制動後、何事もなかったかのように追従も再開してくれる。これがブラインドコーナーでこの機能がなければ、ビギナーなら何か起きてもおかしくない状況だ。
マスツーリングで重宝する千鳥走行アシストのGRAでは、前方障害の有無、同行グループの配置も理解して、人が操っているかのように速度調整や制動をやってのけた。
以下、今回体感した6つの先進機能を紹介していくが、これらの機能はボッシュの最新の基礎技術があればこそ可能になったもの。ひとつひとつのユニット進化もさることながら、統合制御技術に感心した。詳しくは書けないのだが、今回はこれ以外にも、これまでにない新機能も先行体感させてもらった。大感激した。
1.ACC S&G(アダプティブ クルーズ コントロール ストップ&ゴー)
停止〜再発進まで対応するからラク!
これまで難しかった極低速域での程よい車間調整や停止までの速度調整を行える機能。停止に至るまでシステムが面倒を見るので、自動クラッチ、自動変速モデルとの相性がいい。
従来から様々なバイクが採用するACCと比べて、前車の速度変化に応答する時の反応が早いのに、自車の速度変化が滑らかだが着実、といった印象。並んだ前走車の間隙に過剰に反応して加減速することもなく、まるで人が操作しているような作動をしていた。
また、従来のACCでは30km/h未満でのサポートがなかったが、クラッチ操作が不要なAMT車に対応して、30km/h未満でも最適な車間距離を保持しつつ、完全停止まで機能、再発進時もそのまま前車に対する追従走行を復帰する。MT車の場合、従来通り30km/h未満はOFFになる。
2.EBA(エマージェンシー ブレーキ アシスト)
衝突を極力回避する頼りになる機能
前車に追従中、その前車が急制動したようなとき、このアシストは自車を急制動させる。絶対に止まれるというものではないが、かなり強烈で追突回避できるだけの急制動をしてくれた。よく似たシステムの、加速中に前車に接近しすぎたときに発動する自動制動より実用的な提案だと思う。
コース上でわざと道路脇の草むらや停止車両に制動しながら接近してみたが、最初から止まっているものには無駄な反応はしなかった。とても利口だ。
3.GRA(グループ ライド アシスト)
千鳥走行でもACCで楽ちん!
すぐにでも実装してもらいたいアシスト機能。レーダー測離範囲がワイドになったから可能になったらしいが、いわゆる「自動千鳥走行」モードを実現する。
ACCを作動させている時、これまでは直近の前車を対象としていたが、レーダーの照射範囲が広がったことで、千鳥走行などツーリング時の集団走行にも対応が可能となった。グループ走行時の車間距離を最適に保ってくれる便利機能だ。
たとえ前が開けていても斜め横のバイクを基準にするので無駄な加速などしないが、急に他車が割り込んだりすれば、車間を取るか制動をし、自ら車線変更すれば追い越しの判断もする。常に全周警戒はしていた。
4.RDW(リア ディスタンス ワーニング)
レーダーがしっかり後方を監視!
後方レーダーも装備している場合、左右どちらかの後方から車両が接近しているのをミラーやメーターパネルのアイコンで通知するバイクはすでにある。これはその発展版で、追突するような勢いで急接近してくる場合や車間を詰められた場合、それをメーターパネル上にアラート表示するもの。
レーダーのサーチレンジが長くないと出来ないことだろうが、かなり遠方から接近車を探知し、その中から危険車両を正確に探知できるようだ。煽り運転が近年問題となっているが、この機能はそうした際にも非常に有効だ。
5.RDA(ライディング ディスタンス アシスト)
前走車の予期せぬ動きにも対応
前走車との距離を一定に保ち、距離が詰まった際に介入して自動調整を行ってくれる機能で、ACC S&G、GRA、EBAなどにも関わる基礎技術のひとつと思っていい。ACCは前車に追従してクルーズするわけだが、速度レンジやまわりの状況をどれだけ把握できるか、といった能力も大切。
例えば、コーナリング中に自車は安全な速度に抑えて追従できるかとか、追従から離れた状況でコーナリングしている最中に他の車両が現れれば、それをどのように認識して追従するか、などだ。このRDAはそんな応用判断力が極めてハイレベルだ。
6.RCW(リア コリジョン ワーニング)
後ろの車両にも警告して危険を回避
RDWの接近車向けの応用で、急接近する車両にハザードなどで自車の存在をアピールするというシステム。これまでありそうでなかった機能だ。今回はトップケース上のランプだったが、機種によってはハザードやブレーキランプを点滅させるようになると思われる。
ただ、デモ走行を見た限りでは、ハザードだけだとアピールが弱そう。赤や黄色のストロボライトなどを使ってもっと積極的に存在を知らしめた方がより有効に機能するような気がした。
不意の急接近が起きそうな濃霧の中などでは、リアフォグの上位アピールとしても威力を発揮するように思う。
文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸/取材協力:ボッシュ株式会社