文:河野正士/写真:井上 演
プロジェクトに初の女性ビルダーが参加
新型スカウトを使ったインディアンモーターサイクル(以下インディアン)の公式カスタムプロジェクト フォージドの新章には、女性ビルダーが参加した。これはチーフ・シリーズを使った昨年を含め、フォージドプロジェクトでは初めてのことだった。
しかし女性であることが、このプロジェクトに選ばれた理由ではない。ブリトニー・オルセンは、1938年型インディアン・スポーツチーフをベースに自らレーシングマシンを造り、チューニングし、走らせているベテランだ。
Brittney Olsen(ブリトニー・オルセン)
2012年にビンテージバイクのレストアやチューニング、それらのバイクを使ったレース活動を行う「20th Century Racing」を設立。フラットトラックやドラッグレース、ビーチレースなど彼女自身がライダーとして多くのレースに参戦している。
インディアンの車体設計の責任者であるオラ・ステネガルド曰く、インディアン・ヒストリーの百科事典のような人物で、その歴史を現代のバイクに結びつけられる重要な人物である。
彼女が製作した車両は、新型スカウトが採用した最新のテクノロジーを活かしながら、ビンテージ・インディアンのパーツをセットアップしたハイブリッドなスタイルとなった。
最新技術とビンテージの融合
自身の1938年式インディアン・スポーツスカウトをはじめ、ビンテージバイクのみを手掛けてきたブリトニーにとって、フォージド・プロジェクトに参加するためには、まずは最新のバイクを手掛けるための工具を揃えることから始まったという。
また様々なセンサー類が搭載されている最新のバイクを理解することもハードルが高かったという。しかし彼女は、新型スカウトが採用した最新の電子デバイスはそのまま残し、そこに自分たちが慣れ親しんだビンテージ・インディアンの世界を積み上げていくことに成功させている。
パフォーマンスを追求できるのも新型スカウトの魅力
FTR用パーツをふんだんに用いたフーリガン・チョッパー
「BANDITO SCOUT」と名付けられたこの車両は、ローランドサンズ・デザイン(RSD)が、バンド 21パイロットのジョシュ・ダンのために製作した1台。ブラック&イエローのカラーリングは、彼らのアルバムデザインをモチーフにしたもの。
車両の製作時には、インディアンのネイキッドスポーツモデルFTR1200用のパーツや、RSDが開発したFTR1200用のハイパフォーマンスパーツを使用。車高を上げ、スポーツ性能が高められているのも特徴だ。
インディアンモーターサイクルの車体設計責任者にインタビュー
新たなマシン、ビルダーが作り上げた最新カスタム
Ola Stenegard(オラ・ステネガルド)
インディアンモーターサイクルの車体設計の責任者。新型スカウトは新型チーフに続いて、オラがゼロから携わったプロダクト。シンプルでバイクらしいデザインや車体構成を常に意識している。
カスタムはプロダクトの可能性を広げる
新型チーフに引き続き、新型スカウトでもインディアンの公式カスタムプロジェクト フォージドを展開した理由は、我々がカスタムシーンに敬意を表していることはもちろんですが、我々のプロダクト、とくに新型スカウトにとっても重要であるからです。
なぜならカスタムバイクビルダーたちの自由な発想で、新型スカウトの可能性を表現することができるから。そして我々は、ビルダーやユーザーが自由にカスタムを楽しめるように、フレームをスチールパイプで製作するなど、カスタムしやすい車体を開発しました。インディアンというブランドとともに、新型スカウトにとってそれらは、販売戦略においても欠かせない項目なのです。
そんな中で我々は、ビルダー選びに頭を悩ませました。典型的なチョッパーを造るならスウェーデンのユニークカスタムサイクル、アメリカでトレンドとなっているフーリガン的なアメリカン・スポーツクルーザーを造るならローランドサンズ・デザインと、カスタムイメージもそれを造るビルダーもすぐに思いつきました。でももっとも重要な、インディアンの歴史と新型スカウトを結びつけられるオールドスクールなカスタムバイクを造れるビルダーを探していました。
今となってはブリトニーほどの適任者はいないのですが、我々は随分と長い間、そのビルダーを探していました。彼女はビンテージバイクのスペシャリストであり、新型バイクをカスタムするのに苦労していたようですが、我々の期待以上のバイクを造ってくれました。
彼女は燃料タンクの大きさを気にしていましたが、ビンテージのインディアンには耐久レーサーも存在していて、それは大型タンクを採用していました。だから彼女が造ったバイクは、インディアンの歴史の延長線上にあるものなのです。
文:河野正士/写真:井上 演