文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:赤松 孝
カワサキ「KLX230シェルパ」インプレ(宮崎敬一郎)

kawasaki
KLX230 SHERPA
2025年モデル
総排気量:232cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒
シート高:845mm
車両重量:134kg
発売日:2024年12月25日
税込価格:63万8000円
どこでも力まず楽しめる「丁度良さ」が武器!
新しいシェルパは新型KLX230Sをベースに外装をほぼ一新したデュアルパーパス。足まわりやフレーム、エンジンなどはKLX230Sと同様で、セッティングなども同じ。ハンドル変更でライポジが若干変わっているが、基本的には装備違いの兄弟モデルだ。ちなみに追加されている装備はスキッドプレートやスタックパイプ、ハンドガードなどだ。
だが、スポーツ色の強いルックスのKLX230Sより、このコンポーネンツはシェルパにこそよくマッチしている。
エンジンやサスの味付けは2020年に登場した先代のKLX230系からかなり変わっている。エンジンは排ガス規制の対策もあるが、吸気ポートまわりを細くすることで低中域での吸気流速を早めて燃焼を促進、トルクアップを狙っている。ピークパワーが少し落ちたせいもあるが、フラットなパワーだ。高速道路を100km/hちょっとで巡航するのに十分なパワーと車体もある。
だが、この排気量だ。ゆとりを持って走るなら一般道をのんびりと80km/hくらいまでの速度レンジで流すような使い方がいいだろう。つまり、散策しながらツーリングするのに丁度いいのだ。さらに、たぶん3000回転あたりだろうが、パンチ力は無いものの、低速で急勾配を上るような時にビックリするくらい粘る。これもいい。

また、足まわりのトラベル量が増えており、かなりソフトなバネを組み合わせている。歩くような速度から大きなジャンプをしない程度までの速度レンジで、起伏の大きい障害からの突き上げを抑えて高い接地性を狙っている。
実際そのような走り方をするとキックバックも少なく走りやすい。難しい加重や抜重操作を正確にやらなくても、多少のステアケースでもバイクが勝手に乗り越えてくれるような感覚だ。標準のIRCタイヤが意外なほど湿泥を咬み、変形もするのでガレキにも強い。
空気圧を少し抜けば、さらにしっかりした接地、衝撃吸収性を発揮してくれるし、車体の軽さもあって、気楽に色んな酷路にハンドルを向けられる。走行性能ものんびりとトレッキングするのにマッチした味付けだ。

オフ車の泥臭さを捨てた、シャレたルックスも光っている。それだけでコミューターとして大きな魅力だと思うし、カラーリングもよく似合っている。野に放たれても浮くスタイルではないだろう。
かつてのスーパーシェルパやセロー250、XR230が消え、力まず扱える手頃なデュアルパーパスの「空白時代」が続いていた。先代のKLX230は何だか背伸びをして、無理にスポーティな走りをこの排気量で求めていたように思う。
その点、新型シェルパは「丁度いい」万能コミューターで、しっかりオフも走れる扱いやすいバイクとして、強力な魅力が山盛りだ。丁度いいパワーやサイズは何よりの武器になってくれるはずだ。
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