1976年に創業し、2026年に50周年を迎えるマフラーメーカー『スペシャルパーツ忠男』。ヤマハのファクトリーライダーとして国内外のモトクロスレースで活躍した“忠さん”こと鈴木忠男さんが立ち上げ、幅広い世代にファンを持つ。そんな人気ブランドを現在率いるのは、2024年、新社長に就任した大泉善稔さんだ。
文:齋藤ハルコ/写真:松川 忍

大型バイクユーザーが増え常用する回転域が変わった

──40年以上のマフラー開発の中で、ユーザーのニーズに変化はありましたか?

「昔のバイクは最高出力とかの性能があまり高くなくて、特に400ccとかだと、レッドゾーンまで回して走る人がいくらでもいました。でも大型二輪免許が教習所で取れるようになって(※1996年に免許制度改正)、2000年前後に大型バイクユーザーが一気に増えた。その頃、イベントにビッグネイキッド用のマフラーを持っていき、お客さんに試乗してもらったら『変化がわからなかった』と言われて、すごいショックだったんです。でも話を聞いてみると『通常時で2000~3000回転、思いきり飛ばすときでも4000回転ぐらいしか回さない』と言われたんですね。開発側の僕ら業界の人間は、昔の感覚のまま平気で7000とか8000回転までエンジンを回して、性能を使い切る開発をしてたけど、普通に大型バイクを楽しむユーザーにとっての中速域は2000回転だったんです。自分達が全然ユーザー目線じゃなかったと気づいて、冷や汗が出ました」

──そこから開発の方向性が変わったと。

「新しく『ピュアスポーツ』というトルク型のアイテムを作ったものの、最初はまったく受け入れられませんでした。雑誌のインプレッションでも〝低速型マフラー〟と書かれて、確かにそう表現するしかないんだけど、魅力的には聞こえないじゃないですか(笑)。困っていたら、友人に『二輪用品店とかで試乗会をやったら?』とアドバイスされて、各地で始めてみたところ、非常に売れ行きが良くなったんです。マフラーメーカーごとに特色はいろいろあるけど、僕達みたいに〝走りの気持ち良さ〟や〝爽快感〟を引き出すことが売りのメーカーは意外と少ないんですね。実際に体験しないとなかなか伝わらない良さなので、その魅力を伝える手段として、試乗会がいちばんフィットしているのだと思います」

「気持ちイー!」を引き出し〝共振〟を起こす製品を作りたい

──SP忠男のキャッチコピー「気持ちイー!」は、いつ生まれたのでしょうか。

「以前、忠さんにSP忠男の創業の精神は何かを聞いたことがあるんです。でも忠さんは『(妻の)寿美子にやれと言われた』とか、『将来のビジョンは俺が毎日飲めればいい』とか、全然ちゃんと答えてくれない(笑)。ではSP忠男の本質は何かを考えていたときに、ふと、観客のギリギリ近くをドリフトしながら駆け抜けていく、レーサー現役時代の忠さんの姿が思い浮かんだんです。それで忠さんに『あの豪快な走りは、お客さんを喜ばせるためにやってたんですよね?』と聞いたら、『トップを走って、限界ギリギリを攻めるのが気持ちいいからやってただけだよ』って言われたんですよ(笑)。『そしたらみんなが喜んでくれたんだ』って。自分が楽しみ、気持ちいいからやっていることが、自然と周囲が喜ぶことにつながる。僕はそれこそがSP忠男の精神だと思いましたし、これまで僕等がやってきた仕事にも一致していると気づいたんですね。そこから『気持ちイー!』が開発のコンセプトになりました」

画像: 店内サインには8歳にしてトーハツの80ccを乗りこなす忠さんの姿が。「めちゃくちゃ楽しそうでしょ? それが周りの喜びにもなるって理想だよね」と大泉さん。

店内サインには8歳にしてトーハツの80ccを乗りこなす忠さんの姿が。「めちゃくちゃ楽しそうでしょ? それが周りの喜びにもなるって理想だよね」と大泉さん。

──そんな忠さんの精神を引き継いだ新社長として、今後の展望を教えてください。

「僕はずっと、お客さんとの〝共感〟が大事だと考えてましたが、これからの時代は〝共振〟を残すことが大切なのかなと思っていて。共感する製品は普通の広がり方しかしないけど、〝共振〟する製品やサービスは伝わり方が増幅して、ものすごい勢いでヒットしていくんですよ。だから会社としても〝共振を残す〟という、時代に合った意識改革をしていかないといけない。そしてオートバイは、速さや刺激の追求だけでなく、ただ一定の速度で走るだけでも気持ちが解放される乗り物です。僕は、これまで忠さんがやってきた仕事はすべて〝精神の開放〟だと思っているんですね。だからSP忠男の顧客は、バイクを利便性の乗り物ではなく、自分を解放するための道具として捉えている人達が多い。これからも、皆さんが気持ち良く精神を解放できるお手伝いをしていきたいですね」

画像: 2017年に上野から移転リニューアルオープンしたSP忠男 浅草本店。店舗のある浅草の地について大泉さんは「不思議なエネルギーを感じるいい場所ですよ」と語る。

2017年に上野から移転リニューアルオープンしたSP忠男 浅草本店。店舗のある浅草の地について大泉さんは「不思議なエネルギーを感じるいい場所ですよ」と語る。

画像: SP忠男浅草本店は、タイヤ専門店でもあり、豊富な知識のもと用途に合わせたタイヤ選びのアドバイスを提供。タイヤ交換時は摩耗部品の目視点検も行なうなど、細やかな整備で「安心して愛車を預けられる」とユーザー評価も高い。

SP忠男浅草本店は、タイヤ専門店でもあり、豊富な知識のもと用途に合わせたタイヤ選びのアドバイスを提供。タイヤ交換時は摩耗部品の目視点検も行なうなど、細やかな整備で「安心して愛車を預けられる」とユーザー評価も高い。

画像: SP忠男の代名詞“ラッキーアイ”は、1966年に忠さんがヘルメットに目玉マークを書き込んだのが始まり。

SP忠男の代名詞“ラッキーアイ”は、1966年に忠さんがヘルメットに目玉マークを書き込んだのが始まり。

文:齋藤ハルコ/写真:松川 忍

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