文:丸山淳大/写真:関野 温/モデル:せんちゃん
※この記事は、月刊『オートバイ』2025年3月号に掲載したものを一部編集して公開しています。
5.メンテナンスの幅が広がるフロントスタンド(上級)

リアスタンドに加えて揃えたいのがフロントスタンドだ。両方を使用すればバイクの前後輪を浮かせて作業ができる。ホイールを外すのはもちろん、フロントフォークを抜き取ることも可能なので、より作業範囲が広がることになる。
フロントスタンドはステム(アンダーブラケット)の下側の穴にアダプターを挿し入れ、そこを起点として車体を持ち上げる構造となっているため、特にフルカウリング車はカウルへの干渉に注意が必要だ。

ステムシャフト下側の穴を使用するため、ここが塞がれている車種は使用できない。特にカウル装着車は奥まっている事が多いので、周辺部品を外す必要があることも。

デイトナの「フロントスタンドIII」は、付属のアダプターを使って7サイズのステムシャフト径に対応。高さは15.5mm刻みで9段階に調整できる。価格は1万6500円。

フェンダーやカウルへの干渉に注意しつつ、サイズに合ったアダプターをステムシャフトに挿し入れ、どこかに接触していないかどうか確認しつつスタンドをゆっくり上げる。

干渉がなければ、そのまま体重をかけてスタンドをかける。カタナはステムが奥まっており、セッティングに手間取ったものの、せんちゃんは一人でスタンドアップに成功!

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デイトナ「フロントスタンドIII」
6.アタッチメントがキモとなるフロントフォークスタンド(中級)

ステムの下側に穴がない場合やカウルに干渉してフロントスタンドが使えない車種向けに開発されたのが「フロントフォークスタンド」だ。
フロントフォークを下側から持ち上げてフロントホイールを浮かせられるので、前輪の脱着やブレーキの引きずりの確認などができる。このスタンドのキモはスタンドがどの向きにあっても常にリフトアップ面が同じ角度で上を向く点だ。せんちゃんも「スタンドアップが楽で、一瞬で上げられた」と、ご満悦のご様子。

価格は1万4300円。高さは242~343mmの間で9段階に。幅は125~270mmに調整でき、アタッチメントの干渉がなく、フォークボトムの高さが左右均等ならどんな車種にも使用可能。必ずリアスタンドをかけた状態で、平らな場所で使用する。フェンダーやカウルを傷つける心配がなく、フロントスタンドより難易度が低いのが最大の利点。

キモとなるのがリフトアップ面のカウンターウエイトだ。スタンドがどの向きでも、必ず45度上向きをキープするので、フォークにセットしやすい。開発時に試行錯誤したそうだ。

スタンドを上げる前に左右のアタッチメントとリフトアップさせる高さを調整する。高さ調整には工具が必要となるが、幅調整には不要。汎用性の高さも魅力だ。

スタンドを奥に倒すようにして、フロントフォーク下側へと移動させ、リフトアップ面のL型がフォークボトムにフィットしたところでスタンドを上げる。

L型の短辺が干渉する場合、車重を面で支えることができないので、使用不可。慣れるまで、フォークボトムが乗ったかどうかを確認してくれるサポート役がいると安心。

前後スタンドを一人で上げるという厳しい戦いに勝利してきたせんちゃんにとって、フロントフォークスタンドは楽勝だったようだ。スタンドアップ状態でしっかり安定している。

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デイトナ「フロントフォークスタンド」
7.車体は静止したままでホイールのみクルクル回る!?(初級)

タイヤを乗り上げて、2本のローラーの間で回転させることで、チェーンメンテやホイールの洗浄などが簡単にできる「メンテナンスローラースタンド」。
使い方はバイクを押してスタンドに乗り上げるだけというシンプルなものなので、エントリーユーザーにもオススメだ。前後どちらのホイールにも使えるが、リアに使う場合はフロントブレーキをかけた状態にして、フロントに使う場合はハンドルを切ってギアを入れて車体が動かないようにして使用する。

ローラー位置は3段階に調整でき、タイヤサイズは10~19インチまで、幅200サイズまで適合する。ただしオフ車のブロックタイヤには使用できない。本体サイズは345×215mmで、価格は4400円。

ローラー表面は平滑に仕上げられており、あえてタイヤを滑らせるようにしている。タイヤが宙に浮いているわけではないので、回転させるにはある程度力が必要になる。「スタンドを使うのはもっぱら自宅でチェーンメンテの時くらい」という方にお勧め。バイクの取り回しスキルは必要だが、サイズもコンパクトなので収納にも便利だ。

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デイトナ「メンテナンスローラースタンド」
8.かける位置により車体の前でも後でも簡単リフトアップ(中級)

車体下側にフレームのダウンチューブが通っている車種に使える「アンダーフレームスタンド」は、かける位置によってフロント、リアのどちらでも上げられるのがポイント。
左右二本のアタッチメントを交互に上げる必要があるので時間は要するが、安定性は抜群だ。フレーム幅は235~360mmに対応。価格は1万2100円となる。

高さは左右非対称で、サイドスタンド側は175~270mmに、逆サイドは220~270mmに可変する。フレーム幅に合わせたら先にサイドスタンド側を持ち上げて車体を正立させていく。

フロントを上げるか、リアを上げるかはスタンドの位置で決まる。付属のアジャストスパナを使用して、スタンドの高さ調整を行う。左右を交互に上げていくには少々時間を要する。

フレームを支えてフロントを浮かせれば、ハンドルがフリーになるので、ステムベアリングの状態をチェックするにも好都合。見た目以上に車体が安定するので、安心してメンテできる。

他のスタンドと違い、ステアリングステムやスイングアームまで分解できるので、本格的なメンテナンスに使える。
店主・マルの結びの一言

スタンドアップがライディングにも活きる⁉
最近のバイクは車体下に大きな触媒を抱えるので、センタースタンドの装備はスペース的に厳しいし、ユーザーのセンスタ需要も高くないのかもしれない。
しかし、少しでも自分で愛車をメンテするならメンテスタンドは欠かせない。さらにスタンドを上げるために車体を起こしたり、前後に押し歩きしたりすると、バイクの荷重移動やバランスが身体で理解できて、ライディング時にも活きてくる。
せんちゃんも今回スタンドアップブートキャンプでかなりスキルアップしたご様子なのだ!
文:丸山淳大/写真:関野 温/モデル:せんちゃん
※この記事は、月刊『オートバイ』2025年3月号に掲載したものを一部編集して公開しています。