1989年、初期型が発表されてから27年。ZZRの足跡を振り返る。
ライダーの見える世界を変えた ZZR1100 [C]
中でも、古くはW1に始まり、マッハⅢ、Z1、GPZ900Rと、その時代ごとの『世界最速』に並々ならぬこだわりを持って来たカワサキは、そんな状況に強烈なくさびを打ち込むニューモデル、ZZR1100を89年のドイツ・ケルンショーでデビューさせる。
ZX‐10をベースにボアを2㎜広げて1052㏄としたエンジンは、内部構成パーツにも全面的な見直しを加えて、当時量産市販車では世界最高となる147PSをマーク。それを支える強靭なアルミフレームと空力特性に優れるグラマラスなボディワークを組み合わせて、当時まだまだ実現不可能、夢の数値と思われていた300㎞/hの世界へと、一気にライダーをいざなった。
500系新幹線が300㎞/hで営業運転したり、300㎞/hを超える最高速を標榜する高級スポーツカーが登場したり、モトGPでドゥカティのマシンが360㎞/hをマークしたり、今でこそ地上を走る乗り物で300㎞/hというスピードを目に、耳にすることが増えたけど、80年代後半あたりまでは現実味のまったく無い夢の世界。その夢の世界を、条件さえ揃えば一般ユーザーでも垣間見ることを可能にしたZZR1100は、まさにエポックメイキングなマシンだった。
ベースのZX‐10よりコンパクトになったとは言え、当時は今ほどリッターマシンに乗る機会がなかったからやっぱりデカくて重い。でも、足着き性はいいし、走り出すと想像以上に素直で、147PS、300㎞/hというスペックから想像するような気難しさがまったくなくて驚いた。そしてアクセルを開けていくと……200㎞/hを超えてからも衰えることなくグイグイ加速していく走りには、まずは「スゲー!」という言葉しか出なかった。ほかにもいろいろあるんだけれど、ちょっと言えない話も多いので、今回はこのへんで(笑)。
ZZR1100 C型の系譜
'90-ZZR1100[C1]
1989年の東京モーターショーで初公開、翌年に発売を開始。ラムエアシステムも備える最高出力147PSの1052㏄水冷直4と、空力性能を重視したフルカウルで世界最速を目指した。
'91 -ZZR1100[C2]
C1との違いは目立ったところはカラーリングが新しくなったことだが、ラムエアシステムの改良やキャブレターセッティングの変更など、細部を見直して完成度を高めた。
'92 -ZZR1100[C3]
C型最終モデル。カラーリングの変更に加えて、強大なエンジンパワーに対して強度が不足していたミッションの2速ギアが強化タイプに変更され、耐久性が向上している。
オートバイ&RIDE 2016年8月号