カタナスタイルを250サイズで忠実に再現
スズキ創業70周年を記念して90年に限定生産された1100Sアニバーサリーモデルは、スズキも予想しなかったほどの大きな反響を得る。時を同じくして、中型クラスではゼファーの登場に端を発するネイキッドブームが巻き起こっており、対抗馬の投入が急務となっていた。そこでスズキはカタナを中型クラスにシリーズ展開することを決定。その第一弾として91年5月に250が投入された。
ヘッドライト下のスポイラーやカウルサイド下部のカバーに1100Sと共通パーツを使うなどして、カタナの前衛的なスタイルを250ccサイズで絶妙に再現。エンジンはバンディット系の水冷4気筒ユニットで、大容量エアクリーナーやφ29mmスリングショットキャブレターを組み合わせて、高回転型ながらも常用域における力強さとリニアなレスポンスを実現。
80年代前半の空冷風に見せるために、ヘッドやシリンダー、クランクケースカバー類が新作された。前後17インチの中空3本スポークホイールとフロントの大径シングルディスクブレーキ、1100Sのプロトタイプを思わせるツヤ消しブラックの集合マフラーが250ならではの装備となっている。
デビューから半年後の91年11月には1100SEイメージのレッド×シルバーカラーを2万円高で追加。92年には400にレギュラー設定されていたガンメタカラーを採用したリミテッドエディションを500台限定で発売。追加された2色は、いずれもエンジンと前後ホイールのスポーク部、フロントフォークボトムケースがブラック仕上げとなる。96年以降は、99年に生産が中止されるまでカラーリングはシルバー1色のラインアップに戻された。
Impression
カタナブランドを忠実に再現した末弟。走りは今だ現役!
80年代に一世を風靡したのがGSX1100S/750Sの「カタナ」ブランド。その名を冠して登場したのが250カタナだ。スズキの4発クォーターのネイキッドモデルとしてはバンディットが人気を博していたが、250カタナは、本家カタナのイメージを忠実に再現するために車体を専用設計。右一本出しのマフラーもカタナのプロトタイプと同じデザインを採用している。
ただ、本家カタナの登場からおよそ10年後にデビューというのはさすがに遅かったように思う。カタナ人気の再燃を狙ったのかも知れないが、すでにカタナブームは一段落していたし、動力性能的に特出していたわけでもなく、より街乗り向きのモデルも多く存在していたから、大ヒットとはならなかった。
だが久しぶりに試乗してみると、高回転でのパワーと引き換えに得た中回転域でのスムーズな特性が心地よく、ゆっくりと加速していくときのフィーリングは1100カタナにも似た独特な重厚感がある。つまりこの4気筒エンジンは本家カタナのルックスやフィーリングを再現するための手段で、高回転高出力を狙ったものではないということ。レプリカブームでイケイケの空気が濃かった当時、こうした味付けは理解されにくかったのだろう。
対してハンドリングは本家カタナとは違って寝かし込みが素直で初期旋回力も高く、サーキットでのスポーツライディングだってストレスなく楽しめる。
オートバイとしての完成度は本家カタナよりも優れているし、基本的に国内専用モデルだから希少性も高い。10年後には結構なプレミア価格で取引されるようになるのではないだろうか。
【GSX250S KATANA】 1991年5月 specifications
エンジン型式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量:248cc
内径×行程:49.0×33.0mm
圧縮比:12.5
最高出力:40PS/13500rpm
最大トルク:2.7kg-m/10000rpm
燃料供給方式:キャブレター[BST29]
変速機型式:常噛6段リターン
全長×全幅×全高:2060×685×1160mm
軸間距離:1435mm
シート高:750mm
乾燥重量:160kg
燃料タンク容量:17L
タイヤサイズ(前・後):110/70-17・140/70-17
当時価格:56万5000円
文:太田安治 写真:南孝幸