東条が乗り継いだ新世代400スポーツ
Z400FXは、まぎれもなくミドルクラスに4気筒人気を定着させたモデルである。しかし、その400ccクラス(350ccも含めて)に初めて4気筒モデルを投入したのは、実はホンダだった。1972年のCB350FOUR、そして74年のCB400FOUR。69年に発売され、日本どころか世界中にセンセーションを巻き起こしたCB750FOURのインパクトを国内ミドルクラス
にも、という目論見だったが、4気筒のメカニズムというより、350はそのオーソドックスすぎるスタイリングが、そして400は抑え目の走行性能が災いし、短命に終わってしまう。
しかし、77年に400FOURが生産中止になると、一度4気筒の魅力を知ってしまった若いライダーたちの間に、4気筒待望論が沸き起こる。その渇望を沈めたのが、79 年登場のZ400FXだったのである。FXに続けとばかりに、ヤマハはXJ、スズキもGSXと4気筒モデルを発売するが、真打ちは81年に発売されたCBX400Fだった。
CBXは、並列4気筒DOHC4バルブという、当時考えられる最高のメカニズムで登場し、クラス最高の48PSを発揮。国産車初のインボードディスクの採用や、中空アルミキャストスイングアームとプロリンクの採用など、車体にも数々の新しいメカニズムが採用された。そして、その走りも確実に400cc新時代を感じさせるもので、同クラスでは抜きん出たパフォーマンスを発揮。さすがのFXも、CBXの前では古さを感じさせる存在だった。
ホンダも、このCBXのスポーツ性をアピールするために、改造範囲を絞って、手軽に出場できるレース「スーパーストリート400」クラスを新設。このクラスが人気をさらに加速させ、鈴鹿4時間耐久ロードレースなど、CBXが出場するレースも過熱していった。ちなみに作中でも、沢渡がレースデビューした「鈴鹿200kmレース」には、このスーパーストリート仕様のCBXでエントリー。見事に優勝を果たしている。
CBXが発売されてからは、各メカーとも次々とスポーツを打ち出したモデルを発売し、やがて「レーサーレプリカ」と呼ばれるスーパースポーツの時代がやってくる。そしてホンダも、CBXの後継としてCBR400Fを発売するが、生産中止となったCBXも、ファンのラブコールに応える形で正式に再生産をスタート! 長きにわたる日本のオートバイ史でも、一度生産中止となったモデルを、再生産に踏み切った例などほとんどない。つまりCBXは、それだけの人気モデルだったのだ。
協力:株式会社KADOKAWA