ワインディングは、その楽しさから走行ペースが上がりがち。でも、そこでちょっと冷静になって欲しい。公道で転倒すると大変なことになるからね。油断一秒、怪我一生なんてことにならないために、まずは基本をおさらいしよう!

画像: 一般公道では、予期できない事態が起きることもしばしば。

一般公道では、予期できない事態が起きることもしばしば。

安全に楽しむための注意ポイントとは?

峠道を飛ばした方が上手くなる? 速い人に無理してついていく? それはとても古い考え方で、上達効率が悪いし、スリルとスポーツの本質を履き違えているだけ。周囲を驚かせず、低リスクでライディングを正しくスポーツすることが賢い走りというもの。社会と調和しながら最善の楽しさを創造することこそIQライディングなのだ。

無理に飛ばさないのは、リラックス状態こそ脳は多くの情報を正確に取り込んで早く上手くなるから。頭も体もリフレッシュでき、走るほどに楽しく進化していく。大切なことはこれだ。

「速いが偉い!」はサーキットだけ。どう頑張ってもモトGPの英雄V・ロッシやM・マルケスにはなれない。でもスピード以外の考え方や上達のロジックで自分の走りをレベルアップさせることは可能。公道では安全に楽しんだ者がイチバン偉いんだから。かといってノロノロ走るだけでは本当の安全は手に入らない。

ともあれ上達の具体的な処方箋の骨子を説明しよう。安全かつ合理的に上達できる要件をいつも意識して走って欲しい。その筆頭はCKM(センター・キープ・メソッド)の徹底遵守だ。自分の車線の中央しか走らない方法。そんなことしたら速く走れないじゃん、というライダーが沢山いるけれど、たとえばの話、公道ではない道のど真ん中に幅20センチの白線を道なりに塗って線上をきっちり走れるかな。両手でもその線上がトレースできないし、できたとしてもヨタヨタモタモタが大半。道幅いっぱいなら元気がいいけど、一本の線の上では途端に切れ味が悪くなる。これが本当のところ実力なんだ。

線上トレースは初めてのどんな道でも狙ったラインを正確にトレースできることと同じ。道幅いっぱいに使うのは成り行き次第のバイク非制御状態に近く、根性&度胸任せで10年後も10万㎞走っても進化しないだろう。

深いバンク角でタイヤの端っこを使うのがテクニックではなく、むしろ端っこを使わずにCKM厳守で同じペースで走れる方がはるかに高次元の走りなんだ。しかも、CKMというモノサシを使えば対向車のオーバーランから身が守れるし、自分のオーバーペースが自動的に制御できる。CKMしながらメリハリのある加減速や滑らかな車体バンクにオートマのようなノンショックシフト。華麗なフォームがそこにトッピングされたら、それだけで十分すぎるほどのスポーツライディング。公道のかっ飛び自慢なんてのはラーメンの早食い自慢と同じでなんの価値もない。それよりマイペースで食べて旨いラーメンのスープや麺のこだわりが理解できて、作り手とのコミュニケーションが取れることこそ大切。バイクも同じ。IQライディングの真髄はまさにそれだ。

画像: 対向車線の動きを先読みしよう! バイクはもちろんバス、トラック、クルマに最近は自転車のセンターオーバーもあるから要注意。わずかなペースダウンで先読み力は一気に上がる。

対向車線の動きを先読みしよう!
バイクはもちろんバス、トラック、クルマに最近は自転車のセンターオーバーもあるから要注意。わずかなペースダウンで先読み力は一気に上がる。

例えば、こんなリスクを意識しよう!

右カーブでは早めにイン側(センターライン寄り)に着くライダーが多い。左カーブならカーブ出口で外へはらむパターンが多い。カーブが怖くなる原因の大半はブレーキ能力不足。土日や祝日ならカーブの途中にクルマを置いて写真を撮るドライバーもいるし、そんな駐車車両を避けるために出てきた対向車と鉢合わせることもある。だから、常に余裕のあるカーブ進入速度が絶対なのだ。

画像: ショートカットに要注意!

ショートカットに要注意!

画像: 駐車車両の存在が混乱を生む!

駐車車両の存在が混乱を生む!

考えながら走ることで確実にスキルアップ!

ルールやマナーを守れば安全快適かというと現実はそのようにならない。周辺環境は刻一刻と変化し、想定外のことが起きて当たり前。そのためにたとえば前車との車間距離をとる。後続車が詰めてきたらサッと先を譲る生存空間の確保が大事。自分自身のチェックも忘れない。鼻で息を吸って体をガチガチにしてゆっくりと口で息を吐きながらハンドルグリップを握る手まで脱力という呼吸・脱力管理を前提に走れば今まで以上に1秒後、5秒後の先読みができるようになる。先読みの習慣化は、つまり考えながら走ることと同じ。ゆっくりだけの漫然走行では危険度は減らず進歩もしないよ。

画像: 考えながら走ることで確実にスキルアップ!

効率の良い曲げ方を探ろう!

車体と上半身の傾斜が一致するリーンウィズですべての道に対応できるが、実は走行中に体は想像以上に固まる。なので大きく頭をイン側にいれるリーンインや車体を先に傾斜させて上体が起きているリーンアウトなどの変幻自在でしなやかに動ける状態を大切にする。コーナリング中にフォームがいくらでも変化できる余裕こそ真の安全マージンなのだ。

画像: 効率の良い曲げ方を探ろう!
画像: 上下の写真撮影位置は異なるが同速、同ラインでフォームをリーンインとリーンアウトに変えたもの。簡単なはずのフォーム変化だが、実際には大きく動けず、頭で動けると思っているだけの例が多い。

上下の写真撮影位置は異なるが同速、同ラインでフォームをリーンインとリーンアウトに変えたもの。簡単なはずのフォーム変化だが、実際には大きく動けず、頭で動けると思っているだけの例が多い。

基本は街乗りと同様!

前から見て両腕を円形にしてグリップは右イラストのように45度の角度で握らず離さず。グリップのガチ握り状態は飛ばしすぎか疲労状態。この両腕状態を維持しながら、仙骨を起こしての上体前傾がバイクとの一体感をアップさせる。ワインディングも市街地も同じ。早めのブレーキ準備も安全と進化に欠かせない要素。その余裕こそライディングの真の楽しさなのだ。

画像1: 基本は街乗りと同様!
画像2: 基本は街乗りと同様!

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