メイドインジャパンの名門ブランドとして、国内4メーカーに純正採用されるIRCが、久々となるラジアルタイヤを発売開始!
狙ったのは絶対性能よりも、 乗り心地や素直なハンドリング特性など、「ライダーへの優しさ」にあふれたタイヤとなっているようだが…。
さっそく試乗してきました!
ライダーの肉体的な疲労も軽減してくれる!
国内市場が縮小しているとはいえ、日本は長きに渡って世界ナンバーワンのオートバイ生産国というポジションを保っている。生活や仕事の足として使われることが多い小排気量から趣味性の高い大排気量車まで豊富なラインアップを揃え、性能と品質の高さで世界中のライダーから信頼されているが、その品質を支えているのが車両メーカーに部品を供給するサプライヤー。中でも一般ユーザーとの接点が多いのはオリジナルブランド品も販売しているタイヤメーカーだろう。
『IRC』ブランドで有名な井上ゴム工業は1926年(大正15年)に自転車用のタイヤ/チューブの製造を開始。戦後復興期の1952年からオートバイ用タイヤの製造を始めて国内4メーカーに純正採用されているほか、スクーター用や小排気量車用の各種リプレイスタイヤでも大きなシェアを占めている。
二輪業界関係者なら誰もが知っているIRCブランドだが、最近のユーザーがIRCと聞いて真っ先に思い浮かぶのは『RX-01』ではないだろうか。現在、250ロードスポーツモデルの多くはタイやインドネシア、中国で生産されているが、そのほとんどに純正装着されているのがRX-01。これはこのタイヤの性能を各車両メーカーが評価しているからに他ならない。実際、RX-01はどの車種ともマッチングがよく、軽快なハンドリング、公道ユースで充分なグリップ、耐摩耗性の好バランスは誰もが認めるところ。加えてスポーツ走行対応のRX-01 SpecRはモタードライダーにも支持されているし、後継機種のRX-02もリプレイス用としてシェアを高め続けている。
そして8月に登場した注目の新製品がRMC810。大排気量車用として約10年前まで生産していたSP10、SP11以来のラジアル構造だが、新たな技術を採り入れて丁寧に開発し、約3年間で完成させたというブランニューモデルだ。「大人のツーリングラジアル」と銘打っているだけに、スポーツライディング性能やライフの長さを強調するのではなく、街乗りやツーリングでの快適さ、素直なハンドリング、高いウエット性能をバランスよく仕上げたオールラウンド仕様で、250㏄クラスからオーバー1Lの大排気量車までに対応するサイズが揃っている。
さっそく純正と同サイズのRMC810を装着したZ1000で街中と高速道路を走ってみたが、市街地を5分ほど走っただけで感じたのが穏やかなハンドリング特性。大型ネイキッドモデルの中でもZ1000はストリートファイター的な味付けだけに、ハンドルから伝わるインフォメーションが強めでライダーの操作に対する車体の反応も鋭い。
それだけに街乗りやツーリングペースでは神経質さを感じる場合もあるが、RMC810を履いたZ1000は手応えも反応も穏やか。特に直進状態から中間バンク角までの過渡特性がマイルドで、一定のスピードでバンク角が増し、そのバンク角に比例した旋回力が出る。ライダーが積極的に体重移動や車体姿勢のコントロールを行わなくても、バイク任せでスムーズに曲がってくれる。
スポーツライディング志向のタイヤのようなゴツゴツ感がないので乗り心地もいいし、タイヤが路面にネッチリとへばりつくような重さもないから、ライダーの肉体的な疲労も少ない。ひとことで言うなら「ライダーに優しい」タイヤだ。
謳い文句どおりのツーリング向きタイヤだが、グリップ力は充分。Z1000のステップが火花を散らすバンク角からスロットルをワイドに開いてもリアタイヤがしっかり踏ん張る。旋回初期の鋭さが薄れるのでサーキット走行では重さを感じるかもしれないが、公道走行ならこの特性のほうが扱いやすい。
ウエット性能は試せなかったが、グルーブの形状や深さ。シリカ配合のコンパウンドから想像するに、必要充分なレベルだろう。
データで確認する限り、耐摩耗性にも優れているようだし、タイヤのウォームアップ性(暖まり)もいいから、気温や路面状態をいちいち気にせずに走り出せるのも現実的なメリット。特出した部分がないのもツーリングタイヤに求められる要素を現実的に煮詰めたからだろう。メイドインジャパンであることも併せ、どんな状況でも安心できるタイヤだと思う。
RMC810の注目ポイント!
サイズ表
[ 問 ] 井上ゴム工業株
TEL.0120-041718