画像: CRF450Lは、なぜ2018年に生まれたか ーレッツ深掘りCRF

CRF450Lは、CRF250Lとはまったくの別物だ。同系統のマシンのようなネーミングにされているけれど、CRF250Lはあくまでトレールバイクとして成立するもの。CRF450Lは、なんといったらいいのだろう? そこを、発表されたばかりの資料を深掘りしてみることで炙り出してみたい。

ベースのバイク、CRF450Rの存在

CRF450Rは、ホンダが誇るモトクロッサーの旗艦であり、常に最先端の技術が投入される。全日本モトクロスや、AMA、MXGPではTeam HRCの活動が熊本からディレクションされているのだが、ここで先行開発されたものが、将来市販のモトクロッサーに反映されるのだ。たとえば、CRF450Rのフレームはこの2019モデルで変更を受けており、すでに全日本に投入されていたものであった。

この19モデルでデビューした450は、
CRF450R…モトクロッサー
CRF450RWE…CRF450Rのスペシャルバージョン
CRF450RX…XCレーサー
CRF450X…デザート向け? ともかく、長いこと放置されていたCRF450Xも、これを期に変更
CRF450L…ストリートリーガル
の5種類。すべてがCRF450Rをベースとしている。

10399ドルの意味

CRF450Lは、アメリカで10399ドルで発表されている。

オフロードバイクは、ここのところどんどん値段が上がっていると言われていて、その中で軽く国内販売100万円を超えるバイクを出してくる、そしてそれが日本国内で非常に大きな足かせになると思われる「450cc」で出てくることの意味は、いかにオフロードバイクを上質なものとしてエンジョイできるか、ということだと捉えたい。

画像: 10399ドルの意味

Lはリーガルの意味だ。
欧州のリリースには、LPLの内山氏のコメントがあがっている。
「CRF450Lは、土の上で最上級の楽しさを与えてくれる、CRF450Rに本当にそっくりなバイクで、トレールにフレンドリーであり、ストリートリーガルなバージョンだ。Lが意味するところは「リーガル」。素晴らしいハンドリングフィールと、リニアなトルクデリバリーが、どんなコンディションでも最高のグリップを実現する」

環境性能も、ユーロ4をクリアしている。

TRUE DUAL PURPOSEの文字が躍るそのリリースが意味するものは、「ダートを思い切り楽しめるバイクがほしい」と言いつづけてきたオフロードファンへの答えだろう。峠を走れるバイクが欲しい、昔のNSRのような…。そこに現れたのがCBR250RRだ。僕らはCRM250ARのようなバイクが欲しいと言い続けたら、もっとレーサーライクなマシンが目の前に現れた。

重さや、値段より、このコンプライアンスでがんじがらめの時代に、「ほぼ」レーサーに大手を振って公道で乗れること。そのことが、いかに尊いかを考えれば、10000ドルを超えるプライスは、納得できるのではないだろうか。

32000kmでメンテナンスが必要になる

画像: CRF450L

CRF450L

画像: CRF450R

CRF450R

エンジンを外観から比較すると、そのほとんどが同じだ。エキゾーストに関しては1本に変更。また、クラッチカバーには騒音対策と思われる樹脂製カバーが装着されている。水冷系統は、ある程度複雑になっていそうだし、サーモスタットらしきケースも見える。徹底的に、CRF450Rをベースにストリートリーガルに対応するための処置がほどこされている。ケースは、6速になったことでワイドなものが使用されている。

リリースでうたっているのは、32000km毎のメンテナンス。オイルは1000km毎に換える必要がある。ちなみに、ハイパートレールと呼ばれていたWR250Rで、オイル交換は6000km毎がメーカー推奨だ。エアフィルターも1000km毎。このことは、たぶんCRF450Lユーザーには大きな障壁にならないと思う。レーサーベースで、この数字が出ていること自体が、そもそも驚愕だ。

ピストンリングは3段で耐久性を保持、CRF450Rで13.5:1もあった高圧縮比は、12.0:1に抑えられた。クランクのイナーシャは12%増で、トルキーでエンストもしづらいだろう。ボア×ストローク、FIのスロットルボディ径はCRF450Rを踏襲している。

ピークパワーは18.4kW、ピークトルクは32Nmとある。正直なところ450ccとしてはかなり低めに抑えられている。おそらく、その分扱いやすさや、マシン自体の耐久性・余裕につながっているはずだ。あくまでこのマシンは、GNCCを優勝するためにあるのではないのだから。

18年モデルのCRF450Rに酷似するフレームまわり。6速を抱え込むミッションに対応して専用設計された

画像: 18年モデルのCRF450Rに酷似するフレームまわり。6速を抱え込むミッションに対応して専用設計された

前述したCRF450Rのフレームにおける、全日本モトクロスのフィードバックは、このCRF450Lには見られない。形状的には、18モデルまでのものに似ている。

ベースとしてはCRF450Rだが、16モデルがその原型であって、そこから6速ギアボックスに対応するため、ピボットまわりを若干ワイドに再設計。アルミスイングアームには、騒音対策のためのウレタンフォームが注入されている。

ストリートリーガル化のため、ホイールベースも18mmほどCRF450R比で延長。シート高は940mmだというからCRF450Rから20mmしか低くなっていない。CRF250Lのような、シート高前提の設計ではないのだ。

こいつは、トレールでも、エンデュランサーでもない

オフロードバイクは、通常いくつかの決まった形にカテゴライズされる。独自解釈だけど、こんな感じだろうか。

トレールは、公道を走るために設計されたもの。
モトクロッサーは、モトクロスのために設計され、一番尖っている。
ファンライドマシンとカテゴリーすべきは、過去の名車XR250Rなどだろうか。デザートマシン的なXR600Rなどもここに含まれるかも知れない。
XCマシンは、CRF450RXなどに代表される、モトクロスベースにXCを戦う味付けがなされたもの。
エンデュランサーは、オンタイムエンデューロのために設計されたもので、ストリートリーガルであることは競技での優位性に優先されない。規制を通すためのチャンバーがついてきたりする。

CRF450Lは、このうちのどこにもカテゴライズされないだろう。エンデュランサーとトレールの中間にある。なにせ、この免許制度の中で(日本で販売するとするなら)、450ccで大型免許が必要なのだ。ホンダが、最上級のハイエンドストリートリーガルとして出してきたマシンは、450ccがもっとも優れていると、断言して製品化したのだ。これを、どうして既存の枠に当てはめられるだろうか。

CRF450Rの開発や、ダカールでのHRCの活躍は、最終的にどこにつながっていくのか見えづらいところだった。CRF250Lは、明らかにイメージソースを借りているだけだったろうし、レーサーのマーケットは北米だよりだ。CRFの行く末、開発リソースが、大きなマーケットにつながらなかった。しかし、このLの登場ですべてが一気につながったことになる。2016年のCRF大改革は、そもそもここを落としどころとして描いていたのだろうか。

試乗できていない今言えることは、ただただ、こいつは望まれて生まれてきたこと。その生誕を、熱烈歓迎したい。

※参考:北米・欧州リリース

画像: こいつは、トレールでも、エンデュランサーでもない

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