外観も中身も大胆進化!低重心&マスの集中化も!
まず新型GLはスタイリングが格好良いですね。4輪のNSXに似ているなぁ、と思いました。これまでのGL1800より、かなり格好良くなってますよ。スタイリングは、パーフェクトですね。
あと、前のGL1800に比べると、新型はかなりコンパクトになっています。旧型は重たくて、停車時にちょっとグラっと来たら支えきれませんって感じでしたけど、今回試乗した新型ではそういうことが全くない。おっとっと、となっても持ちこたえられる。低重心とマスの集中化が効いているんでしょうね。立ちゴケの心配が少なくなったのは、良いことだと思います。
旧型は停車時に車体が傾いたとき、ここまで来るとダメというのがわかりましたが、新型はそれよりももっと倒れこんでも大丈夫そうですね。大きさと重さについては、新型は旧型と全然違う別物なことはすぐにわかりました。
ただ、乗り始めの最初は押し引きや、停車時の取り回しに違和感がありました。取材スケジュールの都合でGLを一晩預かったのですが、ガレージから外へ出すときに一般的なバイクと勝手が違ってちょっとビビったんですよ。押し引きやUターンするとき、一般的なテレスコピックフォークではフロントサスペンションの反発を使えるのですが、新型GLのダブルウイッシュボーン・フロントサスペンションは前側が沈み込まないから、テレスコピックのバイクと感覚が違うからです。
Uターンは……これは撮影のために何度もUターンをしているうちに覚えたのですが、フロントブレーキをかなり引きずってやると楽になりますね。テレスコピックフォークのバイクの場合、Uターンや低速で曲がるときにフロントブレーキを効かせることはしないですが、ダブルウイッシュボーン式の新型GLはそんなに沈まないから、怖がることなくフロントブレーキを使えます。ステアリングが切れているときにフロントブレーキが使えるというのは、今までのテレスコピックフォークのバイクにはなかった感覚でした。
峠道を走っているときも、GLのダブルウイッシュボーン・フロントサスペンションと、テレスコピックフォークの特性の違いを感じましたね。ワインディングを走っているとき、コーナーの真ん中でフロントブレーキを効かせられるのは、この車体の特徴です。旋回中にブレーキをかけても思ったほど姿勢が乱れることがないので、これは安全性が高まっていると言えると思います。印象としては、4輪車でブレーキングをしている感じに近いですね。
テレスコピックフォークの場合は、フォークの軸方向にホイールがまっすぐに上下しますけど、ダブルウイッシュボーン式の場合リンクがあるのでまっすぐ上下しません。だからコーナーで車体を倒しこんだとき、接地点が後ろにずれてくる感じがあります。ショックを吸収するクッション性と転舵機能を分離しているシステムならではかもしれません。
あとテレスコピックフォークのバイクに比べると、GLのダブルウイッシュボーン式はハンドルを直進に戻そうとするキャスターアクションが少ないんです。またハンドルが切れると車体が起きるとか、テレスコピックフォークではおなじみの反応がないことも新型GLのハンドリングの特徴なので、一般的なバイクから乗り換えたときには感覚のギャップを覚えることがあるかもしれないですね。
普通バイクはステップに力をかけて荷重移動させると曲がっていきますが、新型GLではステップに力をかけても何も起きない感じです。大幅に軽量化されたとはいえ、やはりGLは重たいです。なので、荷重移動の反応で倒れこむ感覚が強く出ると怖い感じがするでしょうから、このような設定になったのかもしれません。荷重移動よりもハンドルでコントロール、という印象でした。
いろいろ一般的なテレスコピックフォークのバイクと、新型GLのハンドリングの違いをあげましたけど、これから新しいGLのオーナーになる方も、距離を乗っているうちにすぐダブルウイッシュボーン式の感覚に慣れるんじゃないかと思います。
左:伊藤真一(いとうしんいち)
1966 年、宮城県生まれ。88 年ジュニアから国際A 級に昇格と同時にHRC ワークスチームに抜擢される。以降、WGP500 クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8 耐で長年活躍。昨年は若手育成に携わりながらも、鈴鹿8 耐や全日本ロードに参戦
右:大関沙織(おおぜき さおり)
モデル、女優、レースクイーン、そしてプロボクサーという異色のキャリアを誇り、ただいま多方面で活躍中。最新の活動情報は
公式ブログ「Active girl♡Bike」
(https://ameblo.jp/h2-08-02/)にて。
まるで「空飛ぶ絨毯」みたいな快適性タンデムでのフィーリングも上々!
ダブルウイッシュボーン・フロントサスペンションを採用した新型GLの車体で、明らかに良くなったのは乗り心地が向上したことと、スタビリティが高くなったことですね。
旧型GLはテレスコピックフォークだったので、前側が沈むことでピッチングがあるのですが、新型は前側に大きく沈み込まないので、ブレーキングしても前につんのめることなく減速したり止まったりできます。GLに大関さんが乗っているところを並走して横から見ていて、前のサスペンションが「こんなに動いてるの!」って思うくらい動作していることがわかりました。
ステアリングとフォークの間にリンクが入った構造なので、反応に遅れが出るかと乗る前には予想していましたが、それはなかったですね。接地感とかステアリングへのフィードバックはちょっと薄い感じもありますが、路面の衝撃がステアリングに伝わってこないので、そのことが乗り心地の良さにつながっています。
高速道路を走っているときは、まるで「空飛ぶ絨毯」みたいに快適で安定してましたね。なんじゃこりゃーというくらいに(笑)。前側にウイングでも付いているんじゃないかというくらい、ベターっと路面に張り付く感じです。旧型GLよりもスッキリしたスタイリングになったカウルのダウンフォースが効いているのかもしれない。リアのトップケースなどの形状も、空力特性とかを考えていて、その効果が安定性に貢献しているのかもしれません。
旧型のGLは走行中も大きくて重いバイクに乗っている感覚がありましたけど、新型は不思議なくらい大きさも重さも感じさせない印象でした。エンジンの幅も感じない、カウルの重さも感じない、パニアとトップケースの重さも感じない……ブレーキの使いやすさと車体の安定感が、大きさと重さを乗り手に意識させないのでしょう。まるでナナハンとか400㏄に乗っている感じで、GLに乗っているという感じが良い意味でしなかったです。
新型では可動式になったスクリーンですが、旧型ほどすっぽりライダーを覆う感じではないです。風防効果は旧型の方が高いと思いますが、旧型は風が入らなすぎて暑いくらいでしたから(笑)。新型のカウルとスクリーンは、風の入り方とか程良いところを突いているなぁ、と思いました。視界もスッキリしているので、乗っているときにGLの大きさを感じさせないことも良いところだと思います。
少々荒れた路面でも、4輪で走っているのと変わらないくらいGLは安定しています。今回走った高速道路では2、3箇所縦溝のグルービング路面があったのですが、そこを通過しても全然気になりませんでした。雨でも雪でもグリップするんじゃないかという感じで、それくらい安定している。このスタビリティの高さは、乗り手が自信を持ってGLに乗ることに繋がると思います。
車体が安定しているので、タンデムしたときに後ろに人を乗せていることをほとんど意識することがないですね。
新型GLは乗車人員や荷物の有無などに合わせ、リアサスペンションのスプリングの強さを4段階で調整できますが、タンデムのときに試してみるときっちり2人分調整している感じで、すごくよくできているなと感心しました。ハンドリングも変わることがなく、ネガティブなところが全然ありません。
ミッションの違いは悩むところだけど自分で購入するつもりで選ぶなら…
新型GLはスロットルバイワイヤを採用していて、モードをツアー、スポーツ、エコ、レインに切り替えられます。スポーツはちょっと演出過剰なくらいパワーが出ていて面白いですが、標準であるツアーのフィーリングが一番良いですね。スロットルバイワイヤの操作感も言われないとわからないくらい自然で、良くできていると思いました。
乗り始めてしばらく、モードを切り替えながら乗ってましたが、ブレーキが途中からサーボが効いたようにフィーリングが変わったのが不思議でした。ブレーキの効き方もモードの変更で変わることには、後から気付きました。同様にサスペンションも設定が切り変わるのですが、こちらはブレーキほどは変化がわからなかったですね……。
新しい6気筒は排気音に迫力があって良いです。エンジンフィーリングは高速道路をちょうど法定速度くらいで走っているときが、一番気持ちよかったです。
自分が買うならば、DCTとMTどちらが良いか考えながら乗り比べしましたけど、10年後ならともかく、今はMTを選ぶかな?
7速のDCTは非常に良くできていて素晴らしいし、旧型からの乗り換えを考えている人はDCTを選ぶと思います。あえて自分がMTなのは、新型GLは旧型に比べてミッションやクラッチなど駆動系のバックラッシュが少なくて、タッチとか節度がすごく良いんです。この駆動系の、シフトをアップダウンしたときのフィーリングを楽しむなら、自分でやった方が良いかな……というのが理由です。ただDCTについているアイドリングストップは、ちょっとスロットル開けると即座に再始動できるのでとても便利ですよね。この機能がNTの方にも採用されていれば良いのに、と思います。あとMTにクイックシフターが採用されていると、なお良かったですね。
このバックラッシュが少ない駆動系に加えて、スロットルを戻したときのインジェクションの吹き方の設定が適切なこともあって、とても走行フィーリングが良いですね。このあたりの作り込みも、新型GLの高級感につながっていると思いました。
SPECIFICATION
[全長×全幅×全高] 2575㎜×925㎜(DCT仕様は905㎜)×1430(スクリーン最上位置1555mm)㎜
[ホイールベース] 1695㎜
[シート高] 745㎜
[車両重量] 379㎏(DCT仕様は383kg)
[エンジン形式] 水冷4ストOHC4バルブ水平対向6気筒
[総排気量] 1833㏄
[ボア×ストローク] 73.0×73.0㎜
[圧縮比] 10.5
[最高出力] 126PS/5500rpm
[最大トルク] 17.3㎏-m/4500rpm
[燃料タンク容量] 21L
[キャスター角] 30゜30′
[トレール量] 109㎜
[タイヤサイズ 前・後] 130/70R18・200/55R16
[ブレーキ形式 前・後] ダブルディスク・シングルディスク
※諸元は Gold Wing Tour
PHOTO:柴田直行、まとめ:宮崎健太郎