世界最速を目指して技術を結集した最新モデル
昨年初公開されたニンジャH2は、スーパーバイクレース用のZX-10R、俊敏さも備えるメガスポーツであるZX-14R、オールラウンダーとして人気のニンジャ1000といった従来のカワサキ製ビッグバイクの全てを超越した、真の世界最速を目指す特別な1台だ。
その車名からしてそもそも特別だ。現代のカワサキ製スーパースポーツの代名詞「ニンジャ」と、マッハシリーズの最高峰として70年代前半に世界最速を目指した2スト750ccスポーツ「H2」を合体させたのは、最速への強いこだわりだろう。
技術的アプローチも独特で、近年の2輪車では珍しい過給エンジン、しかもターボではなくスーパーチャージャーをチョイス。
エンジン本体は1000cc水冷直4だがこのモデルのため新たに設計、スーパーチャージャー自体も専業メーカーからの調達ではなく、川崎重工の豊富な技術力を結集した自社製品。最高出力は200PSだが、全回転域で生み出される分厚いパワーがもたらす恐怖感を覚えるほどの動力性能は、同じ200PSを発揮するライバルとは明らかに次元が違うものだ。
車体は大パワーに耐える強度と優れたハンドリングのためのしなやかさを兼ね備えるスチール製トレリスフレームに、カワサキ初の片持ちスイングアーム、最新のKYB AOS-Ⅱ倒立フォークを装着。超高速走行時の空力特性を向上させるため川崎重工の航空機部門の協力を仰いだという、禍々しさと機能美がないまぜになったフルカウルも圧倒的な存在感を感じさせる。
さらにライバルを大きく突き放すべく、エンジンのパワーアップなどの改良を加えたサーキット専用モデル・ニンジャH2Rまでスタンバイ。
まさに世界最速への執念、その結晶というべきマシンがニンジャH2/Rだ。
カワサキの代表的モデル!ニンジャの進化は止まらない
カワサキ4ストスポーツの歴史上、エポックとなったモデルがいくつかある。
66年に登場したメグロの流れを受け継ぐカワサキ4スト第1号のW1、最速を目指しDOHC直4エンジンを積んだ72年デビューのZ1。
そして忘れてはならないのが、水冷直4エンジンをカワサキで最初に搭載した初代ニンジャ・GPZ900Rだ。
Z1登場から70年代を通じて、空冷直4エンジンの改良を重ねて発展させてきたカワサキ。
しかし80年代にはその性能向上は限界を迎え、空冷のフラッグシップモデルは83年のGPz1100で終焉。その後継として開発され、84年にデビューしたのがGPZ900Rだ。
エンジンの水冷化はより小さな排気量で大パワーを発揮できるだけでなく、さらにエンジン自体のサイズも小さくできるために運動性能も向上させられる。
そんなメリットをフルに活かしたGPZ900Rニンジャは、最高出力115PSというパワフルな新設計の908cc水冷直4エンジンに、コンパクトで剛性の高いスチール製のダイヤモンドフレーム、軽快なハンドリングのためのフロント16インチタイヤ、カワサキらしい無骨さも残したデザインのフルカウルという当時最新のメカニズムで固められ、動力性能、運動性能共に世界最高のマシンとなった。
その後各メーカーからGPZ900Rより高性能なライバルが続々と登場。
もちろんカワサキでも新型を投入することになるが、GPZ900Rの魅力は多くのライダーを惹きつけ、根強い支持を集めたために生産が継続。フロントホイールの17インチ化などの改良を受け、91年には日本国内仕様を登場させながら、03年まで生産される超ロングセラーとなった。
GPZ900Rの後継として86年にGPZ1000RXを投入、88年のZX-10を経て、90年にはZZR1100へ発展。これらのモデルたちに加え、94年のZRX1100と後継のZRX1200、02年にデビューしたZZR1200など、いずれもGPZ900R系エンジンが搭載されたのは、その設計の優秀さの証明だ。
GPZ900Rが生産を終えても、「ニンジャ」という名は広くカワサキ製スポーツモデルに採用されたが、それはあくまでもペットネーム。
そしてその伝統の車名は10年にニンジャ1000として復活を遂げる。この新生ニンジャ1000、02年に誕生した俊敏な走りが魅力のスーパーネイキッド・Z1000をベースに、フルカウルを装着したモデル。
フルカウル化によりZ1000より落ち着いた性格となり、ツーリングから街乗りまでをこなす万能スポーツへ変身。
ヨーロッパや日本でも大ヒット、14年にモデルチェンジを受けてトラクションコントロールの追加などでさらに完成度を高め、今や定番大排気量スポーツとしての地位を確立している。
このニンジャ1000のヒットもあって、メガスポーツのZX-14Rをはじめ、レースでも活躍するスーパースポーツのZX-10RやZX-6R、ER-6系のニンジャ650など、近年のカワサキ製スポーツモデルの多くに、ニンジャの名が冠されるようになった。
さらにスタイリングも、ニンジャ1000に採用された吊り上がったデュアルヘッドライトを取り入れた共通イメージが採用されてイメージを統一。幅広いマシンが揃った一大「ニンジャファミリー」が形成されている。