狙いは同じでも手法が違う2台の個性が大きく激突!

GSX-S1000/Fの発表会でのことだ。開発陣は注視しているライバルの話をした。その機種とは、ニンジャ1000/Z1000の兄弟モデル。この2車は世界的に大ヒットしてるスタンダードスポーツである。

画像: 狙いは同じでも手法が違う2台の個性が大きく激突!

ともにストリートからツーリング、峠道まで扱いやすく、非常にレベルの高いスポーツ性能を持っているのが魅力だ。それを越えられるよう、GSX-S1000を造り上げたと言った。ネイキッド(※以下、NK)のGSX-S1000のターゲットは、当然カウルのないZ1000ということになるだろう。

Zはその個性的なデザインで人目をひくが、走りの魅力も山盛りだ。最高出力は137PSとGSX-Sより8馬力ほど下回るものの、巧みな減速比設定によって、このクラスのスポーツNKの中ではトップクラスのダッシュ力を発揮する。

その強力な瞬発力とクイックなハンドリングが武器で、スポーツNKというよりミズスマシのようにストリートを駆け抜けるストリートファイターのような走りも魅力にしている。

ニンジャ/Zは生粋のストリートバイククとして誕生しており、エンジン、フレームともに兄弟専用のオリジナル設計。その上、フレームなどは兄弟でも造りが違う。他のブランドから派生したものではなく、コンセプトに則した要求から必然的に生まれた車体造りになっている。これも貴重であり、大きな魅力と言ってもいい。(宮崎 敬一郎)

GSXのネーミングどおりスーパースポーツがルーツ

一方、新しく登場したGSX-Sはスーパースポーツモデル(※以下SS)であるGSX-R1000をルーツに持つ。エンジンも車体もそれからリメイクし、派生したものだ。もともとのGSX-Rも、SSにしては扱いやすく、クセのないハンドリングが魅力だった機種。

GSX-Sもその魅力はしっかり受け継いでおり、どんな高速ワインディングでも軽快にリーンでき、ストリートでも扱いやすいのが魅力だ。エンジンは低中域でトルキー、回せばパワフル。そのパワーに支えられた瞬発力も光る。

画像: エンジンと車体はSSモデルのようなタッチで、走りの世界に誘惑する。ただ、それに乗せられてペースを上げ過ぎると、足回りが先に音を上げる。減衰が追いつかず、弾かれるような挙動が出やすくなる。それまでは頼もしく強い紳士…そんなバイクだ。クセがなく、扱いやすいハンドリングが魅力で、乗り手を選ばない。

エンジンと車体はSSモデルのようなタッチで、走りの世界に誘惑する。ただ、それに乗せられてペースを上げ過ぎると、足回りが先に音を上げる。減衰が追いつかず、弾かれるような挙動が出やすくなる。それまでは頼もしく強い紳士…そんなバイクだ。クセがなく、扱いやすいハンドリングが魅力で、乗り手を選ばない。

走る場所を選ばない扱いやすいスタンダードバイク、というのは先発のZもGSX-Sも変わらない。もっとも実用的で身近に関われるバイクである。

だが、この両車、その生い立ちはまるで違う。よく似た目標に向かってアプローチしているが、その手法はまったく違うのだ。先人であるZを睨みながら生まれたGSX-Sは、どのようにして勝つつもりなんだろうか? 動力性能などという解りやすい項目での勝ち負けは、ストリートモデルにはあまり関係ない。

大切なのは、快適さや扱いやすさといった使い勝手であり、買ったときにどれほどの充実感を持てるバイクなのか? もキモになる。そんな視点を持ちつつ、スポーツ性能とストリート、クルージングでのキャラクターの違い。そしてそれぞれの機種から見たライバルの姿を比べてみようと思う。(宮崎 敬一郎)

速くとも紳士的なGSXーS、とことんヤンチャなZ

この2台はスポーツライディングが得意なバイクで、操るライダーを魅了するだけの機動力、旋回性、ハンドリングタッチを持っている。だが、ココこそがこの2台のもっとも違うところであって、バイクそのもののキャラクターを反映する重要なパートだ。

画像: 速くとも紳士的なGSXーS、とことんヤンチャなZ

GSX-Sは、SSのフレームから派生したワイドスパンレイアウトのツインスパーフレームを採用。剛性バランスなどはストリートバイク用に取り直され、軽い入力で応答するようなしなやかさに味付けされている。この車体のルーツはGSX-Rだ。やはりストリートバイクとしては剛性が高めでかなり硬い。

そして車体重心と車体のロール軸との関係もSSに近く、リーンさせる時の手応えはリニアで安定している。つまり、外乱に強く、幅広い速度レンジでスムーズ、かつ軽快。そんな基本特性を受け継いでいる。たとえば、リーンさせた時のセルフステア角などは少なめなのに、ごく自然に強力な旋回性を発揮する。コーナリング中のラフなスロットルワークによる車体姿勢の乱れ(曲がり方が変わったり、バイクが起きようとする動き)も極めて少ない。

速度レンジやコーナリングペースといった限界こそ低いが、まるでデキのいいSSのような振る舞い。スポーツライディングに対するアプローチの仕方はまさしく王道! SSと同じ手法の、バランスのいい走りが魅力である。

一方のZは、60㎞/h以下の速度ではコーナリング前半でのセルフステア角が大きく付きやすい。ただし、これは軽い力で抑えられる程度のものだ。

画像: クセと言えるほどではないが、ライダーによっては好き嫌いのある、舵角が強めのハンドリングを低速域で見せる。ストリートでキビキビとフットワークできる軽快さと機動力を持っていて、明確なパワーバンドのあるエンジンとあいまって、力量感や速度感のみなぎる走りを楽しませる。ヤンチャな走りを簡単に楽しめるのが魅力だ。

クセと言えるほどではないが、ライダーによっては好き嫌いのある、舵角が強めのハンドリングを低速域で見せる。ストリートでキビキビとフットワークできる軽快さと機動力を持っていて、明確なパワーバンドのあるエンジンとあいまって、力量感や速度感のみなぎる走りを楽しませる。ヤンチャな走りを簡単に楽しめるのが魅力だ。

舵角が強く付くことが嫌なら、ハンドルを押さえ気味にして寝かせばいいし、逆にこれを積極的に使えばクイックに方向転換することもできる。少しクセがあると言えばそうだが、なじむと自然にこの特性を使った、クイックな走りを楽しめる。だから悪癖ではない。タイプの違いだ。そう、スラロームを切り返したり、ジムカーナのような急旋回をするのに都合のいいハンドリングと言っていい。低速域の加減速で意図的にピッチングを起こしてリズミカルに切り返すと、ビックリするほど機敏に走行ラインを変えることだってできる。

GSX-Sが狙っている走りが、SSのようにどんな速度レンジでも走り切れるオールマイティなスポーツ性能だとすると、Zが狙うのはストリートレンジでの機敏さ、クイックなコーナーでの動きの良さを強調した走り。機動を優先したスポーツテイストだ。いざ、峠道を全力で走れ、と言われれば、GSX-Sは強力なパワーと素直なハンドリング、より深いバンク角によって、Zより少しだけ速く走れるだろう。

速いが落ち着いていて、紳士的な走りだ。Zは7000回転から急激に力を増すエンジンのトルク変動で、3速くらいまでならコーナーの立ち上がりでフロントをパワーリフトさせながら勇ましく走る。低速コーナーが得意だからといって、高速コーナーが苦手なわけではない。Sに比べるとムリはきかないが、ヤンチャだ。

いつも撮影している峠道でZからGSX-Sに乗り換えると、軽快だが曲がらない、というように感じる。逆に、GSX-SからZに乗り換えると、ハンドルの切れ込みとコーナリング中のラフなスロットルワークでフラフラするバイクのように感じる。

でも、楽しみ方を知っていれば、この両車、走りのペースに大差はなく、単にタッチが違うだけに思えてくる。ABSに関してはZの介入の方が遅く、荒れた路面でも安心してコーナーに突っ込め、使えるライダーには頼もしい。GSX-Sは紳士的で、Zは暴れん坊…そう例えることもできそうだ。(宮崎 敬一郎)

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