欧州で主流の大径タイヤを装備したスクーター。その乗り心地とは?
コストパフォーマンスの高さにより、台湾本国はもちろん、ヨーロッパでも高いシェアを誇っているキムコのスクーター。
125㏄から550㏄まで豊富にラインアップされているが、このターセリーSはヨーロッパで主流になっている「ハイホイール」と呼ばれるタイプで、フロント16インチ、リア14インチのホイールを装備していることが特徴だ。
車体サイズは同クラスのスクーターとしては標準的だが、背筋が伸びるライディングポジションと着座位置の自由度が高いシート形状で実際のサイズ以上に余裕があり、センタートンネルのないフラットなフロアボード形状で乗り降りも楽。このあたりにも実用性に徹した設計コンセプトを感じ取れる。
前後に大径ホイールを装備しているため、ハンドリングはいい意味で穏やか。小径ホイール車に比べると衝撃吸収性が明らかに高く、コーナリング中に大きめのギャップを通過したときや、わだちを横切ったときの挙動が落ち着いている。
ヨーロッパには石畳が残っている都市が多いため、外乱収束性の要求レベルが高いが、このキャラクターは日本の道路事情にも適していると思う。
ハイホイールモデルは足着き性とシート下スペースの容量が犠牲になりがちだが、ターセリーSに関してはそうしたネガは感じず、逆に小径ホイールの優位性を疑いたくなるほどだ。
ハンドリングと同様、走力性能も穏やか。2500回転で遠心クラッチが繋がり始め、フル加速では最大トルクを発生する7000回転台をキープしてスムーズに速度を乗せる。
ラフなスロットルワークにも優しく反応するので精神的にも肉体的にもストレスがなく、タンデム時にパッセンジャーに負担が掛からないこともメリット。11.3馬力のパワーに130kgの車重なのでキビキビ感はないが、最高速は100㎞/hを超え、ストリートコミューターとして不足はない。
少し驚いたのが大型スクリーンやナックルガード、リアボックスが標準装備されていること。
試乗時は時折、雪が舞う寒さだったので、上半身どころかヘルメットに当たる風も遮るスクリーンと、指先に当たる風を大幅に減らしてくれるナックルガードが実にありがたかった。
どちらも簡単に脱着できるので、暖かい時期は外しておけるのも実用的。
派手さはないが、穏やかな走りと実用性の高さ、3年保証付きで27万円という価格は魅力的なパッケージングだ。
文:太田安治/写真:赤松 孝
【主なスペック】
全長×全幅×全高:2085×700×1570mm
ホイールベース:1390mm
シート高:790mm
車両重量:130kg
エンジン形式:空冷4ストOHC4バルブ単気筒
総排気量:124.8cc
ボア×ストローク:54×54.5mm
圧縮比:10.25
最高出力:11.3PS/8500rpm
最大トルク:1.06kg-m/7000rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:6.2L
変速機形式:Vベルト無段変速
ブレーキ形式 前・後:φ260mmディスク・φ260mmディスク
タイヤサイズ 前・後:100/80-16・120/80-14