この週末は、鈴鹿サーキットで「NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4」レースが行なわれています。毎年、この時期にはおなじみの、2輪レースの最高峰・JSB1000クラスと、4輪レースの最高峰・スーパーフォーミュラが1枚の切符で見られるという、うれしいレースです。
2輪レース開催はJSBのみ。きょう土曜に予選とレース1、あす日曜にレース2が行なわれる2レース制で、開幕戦に続く1戦2レース制ですね。レース1は14周、レース2は18周で行なわれます。
公式予選は、高橋 巧(TeamHRC)がポールポジションを獲得! そのポールの獲り方も激しいもので、従来のコースレコードを1秒以上も更新して、2分03秒874というスーパーラップを叩き出してのポールタイム。マシン性能差も少ないJSBクラスって、これまではタイムの伸び方もジリジリジリジリ、ってペースなんですが、ぽんと1秒以上縮めてきました。巧、絶好調! 去年の最終戦ですかね、うわ04秒台に入っちゃった!って騒いでたの……。あれからシーズンオフをはさんで、まさかレコードが1秒も更新されるとは……。
予選2番手は中須賀克行(ヤマハファクトリー)。高橋に敗れたとはいえ、中須賀もほぼレコードタイム近辺で走っていますから、これは高橋がとびぬけて速い、と言えるかもしれません。3番手には渡辺一樹(ヨシムラスズキ)、以下渡辺一馬(カワサキ)、野佐根航汰(ヤマハファクトリー)、水野涼(ハルクプロホンダ)と続きました。高橋以外は2列目6番手まで5人が0秒8内にひしめいていますから、超接近戦で、高橋がチョイ抜け、という公式予選でしょうか。
「事前テストで(非公式に)2分04秒台が出ていたので、コンディションがよかったら03秒台も入ると思ってました。予選は、先に走ったAグループのタイムがよかったので、路面コンディションも悪くないと思って、最初から行きましたね。それで、03秒台にはすぐ入って、そこでアタックをやめずにもう1回03秒台に入れて、あとはレースシミュレーション。そこでも04秒台で回れたので、バイクと僕の調子がかみ合ってきたというか、いいリズムで走れています」と高橋。
予選は、コースインしていきなり、計測1周目は2分04秒4、次いで2ラップ連続で2分03秒台で周回。マシン仕様はもてぎのまま、つまり昨年の最終戦でここ鈴鹿を走っているパッケージだから、ここはマシンというよりライダーが調子いいのだと見ていいと思います。
決勝レースは、土曜午後。午前の予選からスーパーフォーミュラの走行をはさみましたから、路面コンディションが変わり、路面温度も上昇してのレース1。4輪が走ったあとに走ると、走行ラインが違う上に、4輪タイヤのラバーが舗装表面に乗るため、フィーリングが変わるんだそうです。
スタートよくホールショットを獲得したのは高橋。以下、中須賀、カズマ、カズキ(注:「渡辺一」まで同じ名前のふたりがいるので、webオートバイでは渡辺一樹をカズキ、渡辺一馬をカズマ、と表記しています。呼び捨てじゃありません、親愛の情ですからねw)、野佐根、水野、秋吉耕佑(MotoUPホンダ)、加賀山就臣(ヨシムラスズキ)、岩戸亮介(カワサキ)、高橋裕紀(モリワキホンダ)が続きます。高橋、逃げれば後方を引き離すスピードがありますから、それを狙っているようです。
1周目のバックストレッチで高橋の後方にいた中須賀が前へ。そのまま2周目に入って、2コーナーをクリアしたS字のひとつめで、今度は高橋がむりやり中須賀のインを刺します。そのまま周回し、高橋が徐々に中須賀以下との差をつけようとしていた時、事件は起きました。
「中須賀転倒~! 2番手につけていた中須賀がデグナーで転倒です!」との場内アナウンス。絶対王者のまさかのミスに場内は悲鳴が上がりますが、そのまま高橋は独走。事実上、ここでレースは決まりましたね。
ひとりハイペースで独走する高橋。それを追うのはカズキ&カズマ、そして野佐根。この3人がバトルを繰り広げているからこそ、なおさらトップの高橋は余裕をもって独走ペースに持ち込めましたね。
結局、レースはこのまま規定周回数を消化してフィニッシュ。2番手争いは、この3人のうち最終ラップのシケインに、カズマ→野佐根→カズキの順で入りますが、ギリギリまでブレーキングを我慢して競り合った結果、カズマと野佐根が走行ライン外側のダストに乗って転倒! その横をすり抜けたカズキが2着、「人生であんなに早くバイクを起こしたことがない」という野佐根が3位でフィニッシュ。カズマがマシンを起こして再スタートするより早く秋吉が4位、以下カズマ、加賀山就臣(ヨシムラスズキ)、岩戸亮介(カワサキ)、水野が入りました。
「予選までの調子もよかったし、路面のコンディションも心配していたほどは悪くなかったから、スタートして5周が勝負だと思ってました。そこでペースを上げて後ろを引き離せればいいと思っていたので、思ったように走れてよかった。(昨年の最終戦以来の優勝に)ホッとしています。事前テストから予選へのいい流れをキープできたのがよかった。明日もレースがあるので、きょうのデータをきちんと見て、もっとペースを上げたいです」と高橋。
これで高橋は、'18年の最終戦以来の優勝ですが、ドライのレースで優勝するのは'17年開幕戦の、ここ鈴鹿以来2年ぶり。あの時も中須賀は転倒していますが、今日のレースは高橋の走りが力強く、予想外のハイペースを追った中須賀が自滅したようにも見えました。
実は、2週間前のもてぎ開幕戦を終えて、鈴鹿に事前テストに来た高橋に対し、中須賀は事前テストなしでのレースウィークだったようです。この事前テスト、本来はスズキ主催の占有にHRCが相乗りした格好だったようで、当然ヤマハもこれに乗れたはず――なのに事前テストなしでのウィーク入りだったようで、その準備の差が高橋と中須賀の明暗を分けたのかもしれません。
中須賀vs高橋の'19年名勝負数え歌は、これで中須賀の2勝1敗。ただし、高橋が開幕戦で連続2位だったのに対し、中須賀がノーポイントレースを演じてしまったので、3レースを終えてのポイントランキングは高橋がトップに立ちました。
あす日曜はレース2。幸い、中須賀もケガがなかったようですから、明日もまたこの2人がレースを引っ張る展開になると思います。少し、勝負は見えている気もしますが、そこはレース、勝負の世界には何があっても不思議ではありません。
日曜日も天気予報は良好。決勝レーススタートは11時です! 早やっ(笑)。
■全日本ロードレース 第2戦 鈴鹿2&4 レース1正式結果
①高橋 巧 TeamHRC 29分23.628s
②渡辺一樹 ヨシムラスズキMOTUL +16.698s
③野佐根航汰 ヤマハファクトリーレーシング +26.300s
④秋吉耕佑 auテルルMotoUP +28.706s
⑤渡辺一馬 カワサキTeamグリーン +35.204s
⑥加賀山就臣 ヨシムラスズキMOTUL +26.217s
⑦岩戸亮介 カワサキTeamグリーン +37.857s
⑧水野 涼 MuSASHi RTハルクプロホンダ +46.351s
⑨ザクワン・ザイディ ホンダASIAレーシングSHOWA +46.558s
⑩前田恵助 ヤマルーブレーシング +47.299s
写真・文責/中村浩史