油冷エンジン、アルミフレーム、フルカウル…サーキットのために磨かれたGSX-R750譲りのテクノロジーを、そのまま公道マシンにフィードバック。世界最速マシンとして一時代を築いた、ストリートのための最速にして最大のGSX−R、1100のヒストリーだ。
圧倒的なスピードと存在感で一世を風靡したフラッグシップスポーツ
空冷時代の最後を飾るスズキのフラッグシップスポーツはGSX1100EFだった。
しかし1985年、サーキット最速を目指した新世代の油冷スーパースポーツ・GSX-R750が登場したのに続いて、レースのレギュレーションに縛られずにひたすら公道最速を目指す、新たなフラッグシップスポーツとして誕生したのがGSX-R1100だ。
油冷直4エンジン、アルミ合金製のダブルクレードルフレーム、レーサーそのままのデザインのフルカウルスタイルなど、GSX-R1100の基本的なメカニズムやスタイリングは、ほぼGSX-R750のものがそのまま踏襲されている。
しかし、エンジンの排気量は5割近く拡大された1052ccとされ、最高出力130PSにまで一気にパワーアップ。
さらにひと回り大きなサイズで強化されたフレームや足回り、長くなったホイールベースなど、あらゆる面において大幅にスケールアップ。
スーパースポーツのGSX-R750に対し、スポーツツアラー的な性格のモデルではあったが、公称260km/hというその最高速で、まぎれもなく当時の公道最速マシンとして君臨。
1988年まで細かな改良を受けながら販売された。
1988年にモデルチェンジされたGSX-R750に続き、GSX-R1100も1989年に初めてモデルチェンジを迎えることになる。
エンジンは排気量が1127ccにまで拡大され、最高出力は143PSにまで到達。フレームもGSX-R750に準じた新型が採用された。
1990年には倒立フロントフォークの採用をはじめ、リザーバータンク付リアサス、リアホイールのサイズ拡大など、足回りをグレードアップした上に、ホイールベースも40 mm延長して高速走行時の安定性を向上。
1991年のモデルチェンジでは、油冷GSX-R750に加えられたのと同様の2バルブ1ロッカーアームから1バルブ1ロッカーアームへの変更など、シリンダーヘッド回りに大改良を施し、キャブレターの大口径化もされた新仕様のエンジンを採用。
さらにスラントノーズデザインの新型カウルを採用してイメージチェンジも図ったが、1992年限りでついに油冷モデルはその幕を閉じた。
GSX-R750に遅れること1年、GSX-R1100も1993年からついにフルモデルチェンジで水冷エンジンを搭載することになる。
排気量1122cc、当時ライバルとなっていたZZR1100の147PSを超える155PSにまでパワーアップ。
1995年にはフレームやスイングアームを中心に軽量化が施され10 kgもの軽量化を達成するが、これが最後のモデルチェンジとなった。
そのままの姿で1998年モデルを最後に販売が終了、油冷GSX-Rの歴史がついに終わりを告げるとともに、公道最速を目指すDNAはハヤブサへと受け継がれていった。
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