この週末は筑波サーキットで「テイストofツクバ」、宮崎県えびの市トライアルコースで「全日本トライアル」第2戦、そして埼玉県オフロードビレッジでは「全日本モトクロス」第2戦が行なわれました。そして海外ではワールドスーパーバイク・イモラ大会とか、スロバキア8耐とかもやってたんですが、レーシングオートバイの中の人、4月のモトクロス開幕戦・九州大会にお邪魔しちゃったものだから、続きが見たくて見たくて、土曜にテイストofツクバ、日曜に全日本モトクロスと、異種レースのはしご、してきました。
お天気が良かった……っていうか日中は暑かったくらいですから、ちょうど編集部にあった取材車をこっそり持ち出して(笑)、CB1300スーパーボルドールで行ってきました。いやぁ、朝方のグリップヒーターは助かったぁ。
会場となったオフロードビレッジは、ちょいちょい遊びに出かけている埼玉県・川越市のオフロードコースで、全日本モトクロスの関東大会と言えばココ。都内からも近いからかお客さんもたくさんで、僕があさ会場入りしたのは8時過ぎだったんですが、もう4輪駐車場は埋まり始めていて、バイク駐車場に誘導されつつ駐車料金を聞くと「あ、バイクはタダです」と。な、なんかすいません。ありがとうございます^^
オフロードビレッジに来るのは半年くらいぶりで、前回はダートトラックあそびに来たんでした。全日本モトクロスの取材となると2年ぶりかな、もちろんコースレイアウトも変わっていて、おなじみの「埼玉トヨペット」も、大会協賛10年になるそうです。パドックにトヨタ車が展示されてる、っての関東大会ならではの光景でしょうね。
それと、変わった景色がもうひとつ。表彰台対面にあるメインスタンドのまったく反対に、でっかい仮設のスタンドができてました。
実はこれ、モトクロス界のレジェンド、T.E.スポーツの代表・東福寺保雄さんの呼びかけでできたスタンド。なんとかバイクを、モータースポーツを、そしてモトクロスを盛り上げたい、と考えた東福寺さんが「バイク好き以外の人にも安全にモトクロスを観戦してもらうには、観戦スタンドが足りないんじゃないか」と考え、クラウドファンディングを立ち上げたものです。
結果、東福寺さんが初めてやってみたというクラウドファンディングは、130人の協力で117万4000円(金額はBlogで公表されています)が集まったそうです! すごい! モトクロスって、門外漢の僕なんかからしたらファミリー感が強くて、その団結力が動いたんだな、って感じがします。会場でも、知り合いのモトクロスジャーナリストの方が「モトクロスもね、少しずつ観る環境を良くしていこうっていう機運が動き始めたんです」って嬉しそうでした。
日曜は、朝のうち曇り空スタートでも、日中はカラッと晴れてのモトクロス日和。でも、モトクロスってカラッと晴れちゃうと、コースのホコリがすごくて、バイクが巻き上げる砂塵が舞うこと舞うことw 聞けばきのう土曜もだったんですが、きょう日曜も、コーススプリンクラーや散水車が大活躍でした。オフビでいつもお世話になっている、1981全日本モトクロスチャンピオン、福本敏夫さんも、ホース片手に散水しまくって、大忙しでしたね。
きょう日曜日は、IA1/IA2の各2ヒートレースと、IBオープンのヒート2(ヒート1は土曜のうちにやっちゃう)、チャイルドクロス、レディスクラスが行なわれます。前回の開幕戦をレポートした「全日本モトクロス素人観戦記」<https://www.autoby.jp/_ct/17266359>では「レース結果はMFJのサイトを見ていただくとして」なんてまさかの職場放棄しましたが、今回はレースのことも(笑)。
しかし、スゴいレースを見ました! メインイベントのIA1ヒート2! 4ストローク450ccマシンが走る、いわゆる全日本モトクロスのトップカテゴリーですが、このヒート2、ラスト2周がもんのすごい面白かったんです!
午前に行なわれたヒート1では、大塚豪太(T.E.スポーツ/Honda)がホールショットを奪い、オープニングラップのうちに小方誠(カワサキTeamグリーン)がトップに浮上。後方に小島庸平(Bellsレーシング/Honda)、大塚、星野優位(bLU cRUレーシングチーム鷹/Yamaha)、深谷広一(SRFチームSBE/Suzuki)、星野裕(チームHAMMER/Honda)、長門健一(TeamSakurai with Wakiレーシング/Honda)が続きます。開幕戦をダブルウィン(これを1-1:ピンピンで勝つ、って呼びますw)で飾った山本鯨(TeamHRC)、スタートは良かったんですが、1コーナーで大外のラインを選択して回るうち、集団に巻き込まれちゃった感じでした。
小方が逃げ、小島が追う、その後方に星野優位、深谷、山本という序盤戦。なんせ気温が30℃に迫る中、決勝レースは30分+1周で行なわれますから、ぺース配分はロードレースより断然大事!
レース中盤、小島が星野優につかまります。小島、腰痛を押しての出場だったみたいです。腰痛でモトクロス、しかも先頭集団って! しかもトップを行く小方は、シーズンオフにヒザの手術をしてリハビリが終わったばっかりで2戦目なんですって! いやモトクロスのライダーって、ホントにイカレて……いや超人揃い(笑)。
トップ集団は、星野優位にかわされた小島が徐々にポジションを落とし、20分を経過したころに深谷が3番手に浮上。この数台後方に山本&成田の最強HRCデュオがいるんですが、ポジションアップはならず、このままレースは小方→星野優位→深谷の順でフィニッシュ。4位に岡野聖、5位に終盤で山本をかわした成田亮(TeamHRC)、6位に小島が入りました。
開幕戦で、あれほど強さを見せたHRCのふたりとも表彰台に上がらない、というヒート1。このままじゃ終われない、って意地がヒート2の好勝負を生んだんでしょうか。それほどヒート2は面白かったんです!
ヒート2は、ヒート1にスタートを失敗した成田がホールショットを獲得! 小方が続き、池谷優太(KTMうず潮レーシング福山)、深谷、山本、岡野、星野優位が続きます。レースは序盤の混雑を抜けると、トップ成田がトバしにトバし、小方、山本、深谷という順。このうちのトップ3が間隔をかえつつ、ずーーーっとトップ争いを展開するんです。
モトクロスって、僕の乏しい知識ですら、序盤は誰かが逃げて、それを後半にかけて後から追い上げたライダーがパッシング――ってことが多いんですが、この成田→小方→山本の3人が、間隔をかえながらレースをずっとリード。その後方に、星野優位、深谷が離されずにつけています。
成田は「この5月1日に39歳になりました!」(本人・談)というベテランで、対する小方は33歳、そして山本は27歳と、体力勝負なところのあるモトクロスでは、ベテラン成田を逃がしておいて、終盤に仕留めるか、ふふふ、なんて展開になると思ったんですが、小方も山本も、抜かないんじゃなくて抜けないんですね。
レース実況のみし奈昌俊さんも「ベテラン成田がレースをコントロールしているのか、39歳になったばかりでヒート2の後半がキツいのか!」なんて絶叫していました。
レース終盤、20分を過ぎた頃には、トップ3がぐっと接近。5番手につけていた岡野聖(TEAM YAMALUBE/Yamaha)が遅れ始め、4番手の星野が3番手の山本に接近! それでも順位の変動はなく、4人の、特に成田と小方のミスのない走りが続きます。このトップ2、ここでなんとペースアップするんです。
この時間帯のヒリヒリした緊張感がすばらしかった。観客席から大歓声が飛び、コース内で撮影している僕らプレスの人間まで「おおおおお!」とか「うわわわわ」とか声を出しちゃう、そんな時間帯。これも、ロードレースよりライダーと観客の距離が近いモトクロスならではですね。
レースは終盤、残り数分。このへんで3番手の山本が成田vs小方に接近し、4番手の星野を引き離し始めます。まず、山本が小方にアタックして2番手に浮上、成田はそのふたりのバトルのスキに引き離しますが、ラスト1周のボードが出ると、山本がついに成田にも急接近! 山本、ここまで体力を温存していたのか、ものすごいスパート!
そして最終ラップのコース中盤あたりでとうとう山本がトップに浮上! それも、あの新設スタンドの大観衆の目前でのパッシング劇でした。しかしここからまた成田が粘りを見せて、大ジャンプ後のS字セクションで成田が先行する山本のインをつき、行き場を失った山本がスリップダウン!
ロードレースと違って、走った跡、つまり轍が深くなるモトクロスらしく、轍にフロントをひっかけてクルッと曲がる成田に対して、山本はちょうど路面の凸部分に乗ってフロントを滑らしちゃったんですね。
すぐにマシンを起こすその外側を小方が走り抜け、これでレースは終了! 成田→小方に続いての3位にはレース中にずっと山本を追っていた星野優位が入りました。
最後の最後に差を詰めて逆転、それを抜き返しに行って、トップが転倒するというドラマチックすぎる展開、ものすごい好レースでした。成田も小方も、山本も星野もスゴかった!
これで2戦4レースを終わって、開幕戦ピンピンで決めた山本を、4レース連続表彰台を獲得した成田が逆転してランキングトップに浮上! 第3戦・広島大会でランキングトップの証、赤ゼッケンをつけてレースに臨むことになります。このふたりの争いに、開幕戦を9/14位と振るわなかった小方が割り込んできましたね。
ここまでウィナーは山本、小方、成田の3人に、ここに続くのが4レース中3回の表彰台を獲得している星野と、このへんが全日本モトクロス4天王になって来たみたいです――なんつっていっぱしのことを言いますが、これが2戦4レースを終えての全日本モトクロスIA1の現状なのです。
しかし困った。開幕戦、第2戦と取材に行っちゃったもんだから、第3戦・広島大会も行かないわけにはいかなくなってきた……。
これがモトクロスの魔力なのかなー!
写真・文責/中村浩史