2016年のEICMAで「T7テネレ・コンセプト」を公開して以来、ヤマハが往年のパリダカマシンの名を冠した、オフロード志向のアドベンチチャーツアラーを開発しているのは公然の秘密だった。
 
そしてついに、その市販バージョン「テネレ700」が登場! いち早く実車に触れた三橋淳氏のインプレからは、その妥協のないオフロード性能が伝わってくる!

ラリーマシンの「原点」に立ち返ったシンプルな構成

「オフロード8割、オンロード2割」と開発陣が言ってのけるTENERE700(テネレ700)。「オンロードをないがしろにしたわけではないですが、オフロードツーリングでの楽しさを大事にしています」ということらしい。

画像1: ラリーマシンの「原点」に立ち返ったシンプルな構成

2気筒のアドベンチャーというのは、平たく言えばオンオフツアラーモデルと言うことになるが、重たい2気筒エンジンをオフロードで利用するユーザーは1割程度とも言われ、結果、各社ともオンロード重視の巨大化したモンスターマシンが中心となっている。

しかし、国産アドベンチャーのルーツは80年代のパリダカマシンにあり、それはこのテネレ700も同じ。カウル付きの2気筒バイクは、実用度はどうあれ、ラリーマシンのイメージが強くついているし、そこに強い魅力を感じるファンがいるのも事実だ。

画像2: ラリーマシンの「原点」に立ち返ったシンプルな構成

その「原点」に立ち返ってテネレ700はデザインされたと言ってもいい。一言で言うなら、シンプルなのだ。

テール周りはまるでラリーバイクのようにスッキリしている。キャリアどころか、グラブバーさえない。

画像3: ラリーマシンの「原点」に立ち返ったシンプルな構成

シートも段付きではなく、オフロード車らしくフラットだ。ABSこそあるが、トラコンはないので、メーターもスイッチ類もシンプルですむ。

「本体は極力シンプルに。足りないものはオプションで」と言う割り切り方。トラコンは後からつけようとしても無理だが「エンジンの特性が良ければトラコンは不要」と言い切る開発陣の自信の表れでもある。

さて、乗り味は果たしてどうだろうか?

とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

まずは開発陣が「2割」と言うオンロード走行から。21インチのフロントタイヤは通常は逃げていく印象があるので、最初は身構えたが、ワンテンポ遅れてではあるが、きちんと旋回する。

画像1: とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

これが出来ると、オフ車の軽快感を利用して、クイックなターンが楽しめ、中速域のコーナーの連続など、オンロードバイクにはない切り返しの楽しさがある。

画像2: とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

スクリーンは小型だが、整流効果はきちんとあって、頭がぶれることはない。が、無風というわけにはいかない。風は当たらなければ当たらないほど快適、とするツアラーの目線からすると、どうなのだろう?

しかし、ダートに入って納得した。このスクリーン。スタンディングポジションで全く邪魔にならないのだ。

画像3: とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

加えて、ポジションそのものがスタンディングに合っている。逆に座った状態だとハンドルが遠く感じてしまい、オフではフロントに荷重を掛けにくいが、立てば全てが解決する。

さらに言えば、ラリーパッケージのハイシートなら前方にお尻を移動させやすくなって、これも解決する。

車体はとても軽い。車重が軽いのだから当然だが、実は、取り回し時には重さを感じていた。乗車時に気を緩めると、おっとっと、となることもある。

画像4: とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

重心の高さでそう感じるのだが、ちょっとでも動いていれば重さは感じないし、タンク周りが細いので、威圧感が少なく、軽快感が際立つ。

エンジンは扱いやすく、フラットと言えばそれまでだが、常用域なら6000回転をキープするとキビキビ走る。3000回転ではトルクの細さを感じるが、アクセルを開ければ、遅れてではあるがついてくる。

画像5: とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

このワンテンポ遅れて、というのが、初心者などには優しく感じられるはず。これが「トラコン不要」と言わしめるエンジン特性のポイントだ。

もっとも、僕の場合はリニアな反応が欲しいので、写真のようなアクションをするときは9000回転あたりを常用していた。

画像6: とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

ただ、ここまでオフにこだわって作っているので、サスペンションだけがどうしても勿体なく感じてしまう。

オフロードツーリングをする上では十分だが、エンジンも車体も素晴らしいので、レーサー気質の僕はどうしても飛ばしてしまうのだが、そんな時に、大きなギャップには耐えられないのだ。

画像7: とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

しかし、テネレはあくまでツーリングバイクであり、ラリーマシンではないのだから、それは当然かもしれない。仮にこれ以上サスストロークを伸ばしても、1m近いシート高になって、一部のライダーしか乗れなくなってしまう。

テネレ700は林道を楽しみたい人のためのバイクだ。

画像8: とことんオフツーリングを楽しみたい人にピッタリ

「オフロード8割」というのは、バイクの性能のことではなく、ツーリングにおける、ライダーの重要度の話。メインはあくまでも林道ツーリング。

舗装路の移動は、そのためのオードブル。そう思えるライダーのためのバイクなのだ。

文:三橋 淳

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