「名車の魅力」を現代でも楽しめるのがネオクラ
登場してから40〜50年もの時が過ぎようとしているのに、今だに熱烈なファンを擁するバイクたちがいる。
ホンダCB750FourやカワサキZ1/Z2。スズキのカタナ。もっと古い時代のカワサキW1〜W3シリーズや、今も現役の新車であるヤマハSRもそうだ。
今でも、そんな骨董品がふつうに街中を走っている。しかもそれが決して少ない数ではないのがバイク界の不思議だ。メンテのことなどを考えると、維持管理に対する労力は計り知れない。
それでも、天気のいい休日には峠道で何台かと遭遇する。オリジナルを大切にキープしている車両もあれば、今のノウハウでカスタムされて、現代のスポーツNKを脅かす走りをするものまである。
それほど旧車を嗜好するライダーたちの幅は広いのだ。
また、名車と呼ばれるバイクたちには多かれ少なかれ、いくつもの「伝説」がある。
それが人気の後押しをしているのは間違いないが、若者さえも惹き付けている根本的な魅力や、そのきっかけとなった根本的なものは、もっとずっとストレートな魅力のはずだ。
速さやスリルなどという定番の要素ではない。そんなものはレベルの違いこそあれ、バイクに関わった時点でもれなく付いてくる。
たぶん、かつての名車たちが放つ魅力の中心は、そのフォルムや造形、雰囲気なのだろう。
姿だけでなく、走っているときの音や、今のバイクでは邪魔者扱いされる振動やエンジンからのノイズ、パルスなどもそうだ。
そんな独特のテイストを発する乗り物に乗っていることを愉しいと感じるし、ガレージからひとたび出れば、その姿は自己主張するファッションのワンアイテムとなる。
だから、旧車ほど手の掛からない今のバイクで、かつての名車の姿や雰囲気をオマージュした「ネオクラシック」がたくさん生まれ、大ヒットしているのだろう。
Z900RSはその筆頭だし、発売になったばかりのKATANAも広い意味ではネオクラだ。
ただ、このジャンルはどこまで「古典」を盛り込むかでまるで違ったキャラクターになる。
質感から走りまで「古典」を意識したW800やCB1100、カラーリングを軸に雰囲気を盛り上げたXSRなど、キャラクターは様々だ。
ここで、ベースになった名車たちの当時の姿を踏まえながら、もう一度「今の旧車」を見直してみよう。
いまネオクラシックに乗るいまネオクラシックに乗る魅力POINT4
バイクの魅力は、同じ排気量帯、同じセグメントであってもさまざまな個性がひしめいていて、自分のスタイルに合った一台が選べること。
ネオクラシックもそうした「選択肢」のひとつなのだ。
ここでネオクラシックというクラスに共通する、4つの魅力を分析してみよう。
POINT 1 飽きの来ない美しいフォルム
いずれのネオクラシックモデルも、往年の名車をモチーフとしたスタイリングを採用している。
一世を風靡した、優美なフォルムや、当時の斬新なデザインをオマージュしているスタイルなので、ネオクラシックモデルのデザインは、飽きることのない美しいものなのだ。
バイクの楽しみのひとつが「眺めて楽しむ」こと。
ネオクラシックモデルたちは、眺めるほどに所有する喜びを掻き立ててくれる美しさを備えているのだ。
POINT 2 最新スポーツとしてのパフォーマンス
スタイリングこそクラシカルでも、ネオクラカテゴリーのマシンはいずれも現代のバイク。
モチーフとなった旧車とは、エンジン、サスペンション、タイヤなどの性能レベルが格段に違っている。
当然ながら、その走りは現代のレベルで、ライダーの技量を問わず扱いやすく、走る楽しさを満喫できるのだ。
乗り手を選ぶようなクセがあったり、整備に手間がかかったり、というのも楽しいものだが、ネオクラなら最新の性能が手に入るのだ。
POINT 3 細部に宿る「伝統」の証
オマージュといっても、単に旧車をまねただけのものではない。
ネオクラシックは、言わば名車のDNAを受け継ぐ現代の末裔たち。
それぞれがオマージュするブランドの特徴や伝統的な造りなどもしっかり継承されていて、それは各モデルの細部に宿っているのだ。
それはある角度から見た時のタンクの造形であったり、手に触れるパーツの形状であったり。
そうした「伝統」を発見できるのもまたネオクラシックに乗る喜びのひとつだ。
POINT 4 クラシカルな造りが生む機能美
一世を風靡したかつての名車をモチーフとしているだけあって、ネオクラシックモデルたちは、入念に造り込まれたディテールが魅力。
空冷エンジンの冷却フィンや、ボリュームあるタンクの絶妙な曲面、あえてアナログを採用するメーターの文字盤など、目に触れる場所、手で触れる場所のひとつひとつが凝っているのだ。
最新のスポーツバイクのような尖った性能こそないが、ゆっくり、時間をかけて愛でる喜びがそこにある。
PHOTO:南 孝幸、森 浩輔、鶴見 健 TEXT:宮崎敬一郎、太田安治、本誌編集部