原点である空冷4気筒エンジンの魅力を、贅を極めた上質な造りで表現する、所有感にあふれたフラッグシップだ。
上質な仕上がりで思わず愛でたくなる空冷CB
ホンダは並列4気筒エンジンのリッターモデルを4機種揃えている。
スーパースポーツのCBR1000RR、ストリートファイター的なCB1000R、ツーリング適性の高いCB1300SF/SB、ベーシックなネイキッドのCB1100。
それぞれのキャラクターが異なるので一つの基準で比較して優劣を付けることは無意味だが、ことライダーが「愛でる」対象として捉えれば、CB1100EXが抜き出ていると思う。
長いシリンダーに狭いピッチで設けられた冷却フィン、エキパイからサイレンサーまで左右対称としたマフラー、アルミの質感を前面に出したクランクケース回りといった大排気量空冷エンジンの造形美や、前後のスポークホイール、ゴムブーツ付きの正立フロントフォーク、リアの2本サスペンション、各部の丁寧なバフ掛け、高品質のクロームメッキパーツ……。
CB1100EXは眺めて、磨き上げて、また眺めたくなるという、魅惑的なオートバイだ。
徹底した作り込みは外観だけではない。
ひたすらスムーズに回るのではなく、あえてザラ付いた回転フィーリングと、空冷エンジン特有の加減速時のマイルドな反応、粒状感のある排気音が与えられたエンジンは、極低回転から湧き上がるように太いトルクを発生。
市街地を2000回転台で走るだけでも大排気量の4気筒を駆っている充実感に浸れる。
ハンドリングもどっしりとした安定性を重視したもので、ライダーの操作で積極的に旋回力を引き出すよりも、オートバイにまかせて綺麗なコーナーリングラインを描きながら曲がることが気持ちいい特性。
急な加減速でも穏やかな車体の挙動、入力に対してリニアに効力が増すブレーキのセッティングなど、オートバイが高性能化していく過程で徐々に薄れ、忘れ去られていったおおらかな乗り味を備えている。
しかも、その乗り味を支えているのは最新のテクノロジーだけに、キャラクターに似合わないことを承知でワインディングロードを強引な操作で走らせても、ステップのバンクセンサーから盛大に火花を散らす以外の不満はない。
今回の試乗で、ネオ・レトロと呼ばれるオートバイの中でも特に長く乗り続けたくなる一台だと改めて感じた。
SPECIFICATIONN
全長x全幅×全高 2200x830x1130㎜
ホイールベース 1490㎜
シート高 780㎜
最低地上高 135㎜
車両重量 255㎏
エンジン形式 空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量 1140㏄
ボア×ストローク 73.5x67.2㎜
圧縮比 9.5
最高出力 90PS/7500rpm
最大トルク 9.3㎏-m/5500rpm
燃料供給方式 PGM-FI
燃料タンク容量 16L
キャスター角/トレール 27度/114㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ296㎜ダブルディスク・φ256㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 110/80R18・140/70R18
THE ORIGIN OF “CB”
DREAM CB750 Four 1969年
1960年代まで高い動力性能で世界のオートバイ界をリードしていたトライアンフやBMWなどのヨーロッパ車を凌駕するため、69年に登場したのがCB750Four。
国産車初の4気筒エンジンは67馬力を発生し、メーカー公称値は最高速200㎞/h、0~400m加速12.4秒。この高速性能を支えるため、前輪には量産車初のディスクブレーキを採用。
38万5000円と当時としては高価なモデルだが、欧米や国内でメーカー側の予想をはるかに超える大ヒットを記録した。
僕が高校2年の時に、先輩のCBに乗らせてもらった。
最初は大きさと重さに圧倒されたが、1日で慣れて楽しく走れた。
それだけ乗りやすく、完成されていたということだろう。
RIDING POSITION 身長:176㎝ 体重:62㎏
グリップ位置が手前にあるハンドル形状で上体はほぼ直立。
対してステップ位置はやや後退していて、コーナリングは上体に力を入れず腰で操る感覚。
シート幅は広めだが、シート位置そのものが低いので足着き性はいい。
DETAILS
クラシカルなアナログ2眼メーター。
中央部には反転液晶表示のモニターを装備。
逆算燃費計など機能も十分なものだ。
クラシカルな丸目ヘッドライトだが、中身は最新のLED式。
明るさと省電力を両立する、最新アイテムを採用している。
かつてのCB750Fourを思わせる、小ぶりなテールランプもLED式。
リアフェンダーは高級感あるメッキ仕上げのスチール。
トルクフルな空冷DOHCユニットは90PSを発揮。
機能美あふれる外観だけでなく、サウンドにもこだわった仕様としている。