ネオクラシックというカテゴリーには往年のマシンをオマージュしたスタイリングを持つモデルが多いが、そうしたマシンたちとは一線を画すのがヤマハのXSR。
「ヘリテイジスポーツ」の名にふさわしい、最新技術でまとめられた一線級の最新スポーツバイクなのだ。

レトロ調のルックスながら中身はいたってスポーティ

XSR900はヤマハの「プラットフォーム戦略」によってMTー09、トレーサーとエンジン、車体のメインコンポーネンツを共有するネオクラシックモデル。

画像1: レトロ調のルックスながら中身はいたってスポーティ

より簡単に言えば、MTー09の外装をレトロな雰囲気に変えた兄弟車だ。

MTー09は鋭いピックアップのエンジン特性とソフトな前後サスペンションによるストリートファイター的な運動特性が持ち味だが、XSRはルックスに合わせてやや落ち着いたキャラクターに設定されている。

画像2: レトロ調のルックスながら中身はいたってスポーティ

前後サスペンションは実効ストロークが大きく、市街地やクルージングレベルでは優しい乗り心地。

ただし加減速でGが強まるにつれてピッチングモーション(車体の重心を中心とした縦方向の動き)が大きくなるので、普段はパワーモードを「STD」、濡れた路面やタイトターンの続く峠道では「B」に設定しておくと扱いやすくて疲れない。

画像3: レトロ調のルックスながら中身はいたってスポーティ

特徴的な3気筒エンジンは明らかに4気筒とは異質な、荒っぽい力強さが持ち味。

低中回転域から粘り強く、3〜4速の守備範囲が広いため市街地をオートマチック感覚で走れ、峠道でもギアポジションに気を使わずに済む。

そして6000回転を超えるとパワーが一気に高まり、フロントタイヤを持ち上げる勢いで猛然とダッシュ。

画像4: レトロ調のルックスながら中身はいたってスポーティ

加速時の独特のエンジンサウンドと、漲るパワー感は普段優しいXSRの裏側にあるもうひとつの顔だ。

操縦性は250㏄モデルほどヒラヒラしてはいないし、オーバー1L車のように重厚でもない。

いずれにしても抽象的だが、「しっとり」という表現が近いだろう。

MTー09と比べるとシート形状の違いで着座位置が高く、約50㎜後ろ寄り。

画像5: レトロ調のルックスながら中身はいたってスポーティ

ハンドルのグリップ位置もライダーに近いので寝かし込みや切り返しが軽い。

ツーリングペースでは車体を倒し込んでインに向かって行く一次旋回が穏やかなので気疲れせず、コーナリングGでサスペンションが沈み込んでいるときの安定感が高く、コーナー出口でスロットルを開けたときにリアのトラクションが明確に感じ取れることも操る喜びを深めてくれる。

サーキット走行ペースではサスペンションの柔らかさが裏目に出て落ち着かないが、これはXSRにとって弱点ではない。

それだけ公道に合わせて設定されているということだからだ。

正統派ロードスポーツとしての作り込みがXSR900の魅力だろう。

SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2075×815×1140㎜
ホイールベース 1440㎜
最低地上高 135㎜
シート高 830㎜
車両重量 195㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
総排気量 845㏄
ボア×ストローク 78×59㎜
圧縮比 11.5
最高出力 116PS/10000rpm
最大トルク 8.9㎏-m/8500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 14L
キャスター角/トレール 25度/103㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ298㎜ダブルディスク・φ250㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17

RIDING POSITION 身長:176㎝ 体重:62㎏

画像: RIDING POSITION 身長:176㎝ 体重:62㎏

上体はごく軽い前傾でリラックスでき、後退したステップ位置でスポーツライディングも違和感なし。

シート高はMT-09より15㎜高い830㎜だが、乗車時の沈み込み量が少ないため実際の足着き性は数値以上の差がある。

THE ORIGIN OF “XSR”

伝統的イギリス車のような佇まいのXS1は最先端技術の4気筒エンジンを搭載したCBと並べると、高校生の僕の目には「スリムで美しいけど、なんだか古くさい」オートバイとして映った。

XS-1 650 1970年
[エンジン形式]空冷4ストOHC2バルブ並列2気筒 [排気量]653㏄ [最高出力]53PS/7200rpm [最大トルク]5.5㎏-m/6800rpm [車両重量]191㎏ [燃料タンク容量]15L [タイヤサイズ 前・後]3.50-19・4.00-18 [発売当時価格]33万8000円

ちょくちょく先輩に借りて乗ったが、エンジン始動がキックのみで大変だったし、スロットルやクラッチなどの操作系が重かった。

GXは3気筒エンジンの特性よりもスロットルのオン/オフでリアの高さが大きく変わるシャフトドライブのクセのほうが印象に残っている。

GX750 1976年
[エンジン形式]空冷4ストDOHC2バルブ並列3気筒 [排気量]747㏄ [最高出力]60PS/7500rpm [最大トルク]6.6㎏-m/7500rpm [車両重量]229㎏ [シート高]825㎜ [燃料タンク容量]17L タイヤサイズ 前・後]3.25-19・4.00-18 [発売当時価格]48万9000円

コンパクトな車体と流麗なデザインで、今は好みだけど、当時は迫力不足に感じた。

DETAILS

116PSを発揮するエンジンはMT-09譲りのCP3ユニット。

スリッパークラッチ、電子制御スロットル、トラクションコントロールも備わる。

丸型のクラシカルなデザインだが、テールランプはLED。

前後ウインカーはクリアレンズ仕様の電球タイプを採用している。

ブラック仕上げの小ぶりなヘッドライトがユニークな表情を演出。

パーツ構成もシンプルなものとなっている。

ラジアルマウントキャリパーに298㎜径のペータルディスクを組み合わせ、スポーティな走りに見合った制動力を確保。

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