30年も昔の名車を現代に乗れることの幸せ
小さいころの記憶は強烈なものだ。
たとえばそれが、子どもの手が届かないクルマ、バイクなんてオトナの世界だと、その記憶はより鮮明になるもの。
本誌にもたびたび登場する、CB、Z、そしてカタナという世界3大絶版名車も、絶版との名でもわかるとおり「昔のもの」。
ナナハンが現役だったのが70年代初頭、Fの世代でも80年代初頭。
Z1/Z2は70年代中盤だし、角Zの代表であるMK2は、ホンダ750Fと同世代。
カタナはニンジャと同じ80年代中盤ということになる。
ナナハンとZは誕生から40年、Fもカタナも30年が経過している。
バイクは工業製品なのだから、当時の乗り味を再現するのはほぼ不可能だし、生き残っている絶版名車を現代で乗り続けるのは大変な労力を伴なう。
そして、現行モデルに絶版名車のエッセンスを注入する手法だってある。
もちろん、それが、カスタムバイクだ。
カスタムは、性能を向上させるチューニング系もあるけれど、それは「いまあるものをさらに伸ばす」手法。
カスタムのいいところは「今ないものを注入する」ことができることだ。
チューニングと違うカスタムを進めよう
ここに紹介するヨシムラのニューKATANAとZ900RSは、まさに現代モデルに「魂」を込めたカスタムだ。
カタナに装着されたバナナ管、Z900RSに装着された直管風の手曲げストレートサイクロンは、確実に80年代のカタナAMAレーサーと、70年代のワルいアニキたちが大好きだったストリートZを思わせる。
これも、70〜80年代に、ヨシムラがストリートバイクをベースに作り出したカルチャーのリスペクトなのだ。
ニューKATANAは、AMAレーサーだけでなく、ヨシムラオリジナルカタナ1135Rさえ思わせてしまうから不思議だ。
モンキーだって、この手曲げ風マフラーだけで、イッキにクラシックテイストがぷんぷんする。
おじさんたちが「昔はよかった」とばかり言っているのではない。
おじさんたちが青春を送った時代のものは、その次の世代には新しい、カッコいい、と捉えられるものなのだから。
現行モデルにちょっと物足りなさを感じるとする。
それが性能面だったらチューニングすればいい。マフラーを変える、フルコンで燃料噴射制御する、そしてハンドリングならコストがかかったアフターマーケットのサスペンションを入れるといい。
そして存在感が物足りなかったら、クラシックなテイストのパーツを追加してみるといい。
ミラーひとつでもいい、マフラーの形状だってクラシックに——。
そうすれば、あなたのバイクはオリジナルになる。
それがカスタムの効果と神髄、そして醍醐味なのです。
PHOTO:赤松 孝、南 孝幸、島村栄二 TEXT:中村浩史