たった76㏄の排気量拡大で印象が激変した
デビュー当初、このNCシリーズは700という排気量だった。
これは初期の試作エンジンが、小型乗用車「フィット」用の4気筒エンジンを半分にしたことが主な理由だったようだが、当初から750も検討されていたらしい。
マイナーチェンジで晴れて750となったが、正確な排気量はNC700が669㏄、NC750は745㏄。
車名では50㏄の違いが、実際の排気量差では76㏄と大きく、その分パワーとトルクも増大している。
試乗したXはDCT仕様。もともとDCTと相性が良かったが、さらに力強くなった新エンジンとのマッチングは絶妙。
イージーなだけでなく、ゆっくりソロソロ動き出したり、フロントタイヤを浮かして猛ダッシュしたりと、アクセルの開け方次第で状況に応じた発進加速力が得られる。
変速プログラムも、700は比較的早くシフトアップする設定で違和感を覚えることもあったが、新型はギアのホールド時間が長くなり、不用意なシフトアップが減ってエンブレを有効に使える自然なフィーリングになった。
また、ミッションもハイレシオ化され、クルージング中のエンジン回転数を下げ、新採用の2軸バランサーで振動も低減。
2気筒のパルスを感じながら快適にクルージングできる。
しかもXはサスストロークが長く、フンワリ優雅な乗り心地。
ゆとりあるポジション、アドベンチャー的なルックスも含め、ツーリングに最適な仕上がりだ。
個人的にXのDCT仕様が、NCシリーズの中で最もロマンを感じさせると思う。
SPECIFICATION
■全長×全幅×全高 2210x840x1285㎜
■ホイールベース 1540㎜
■シート高 830㎜
■車両重量 217kg(ABS:219、DCT:229)kg
■エンジン形式 水冷4ストOHC4バルブ並列2気筒
■総排気量 745㏄
■ボア×ストローク 77.0×80.0㎜
■圧縮比 10.7
■最高出力 54PS/6250rpm
■最大トルク 6.9㎏-m/4750rpm
■燃料供給方式 FI
■燃料タンク容量 14ℓ
■変速機 6速リターン/電子式6段変速
■ブレーキ形式 前・後 ダブルディスク・ディスク
■タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・160/60ZR17
RIDING POSITION 身長:178㎝ 体重:60㎏
足着き性、乗り心地、ライポジの全てが優秀
幅広で高さのあるハンドル、着座位置とステップ間の適度な距離。
長時間同じ姿勢を取り続けてもライダーの体に負担をかけない余裕あるポジション設定だ。
長めの前後サスで乗り心地も良い。足着きもシート高から想像するよりも良好。
デュアル・クラッチ・トランスミッションを搭載したNCシリーズ
バイク用のコンパクトなDCTを実現したのはホンダだけ
ミッションのメインシャフトを独立したクラッチを持つ二重構造とし、片方に1、3、5速ギア、もう片方に2、4、6速ギアを受け持たせたミッション。
走行状況に応じて次のギアをスタンバイし、シフトチェンジ時には作動するクラッチを切り替える構造になっている。
2010年のVFR1200Fに採用され以降、NC700系、CTX700系、NC750系へと採用が広がるに連れて、システム構成やシフトパターン、学習機能などに改良が重ねられている。
4輪ではメジャーなミッションだが、2輪に搭載できる軽量・コンパクトなものはホンダが初めて実現した。
右グリップに配されたスイッチにはニュートラルボンタンの「N」、ドライブモードの「D」、スポーツモードの「S」を必要に応じて選択できまさにAT感覚でライディングが可能。
左側スイッチにはマニュアルシフトボタン用の「+」「−」が配置され、これを操作することでマニュアル感覚での走りが可能。
またパーキングレバーを引くことで安心して駐車ができる。
DETAILS
φ41㎜正立フロントフォークには、2ピストンキャリパーとφ320㎜のシングルディスクローターの組み合わせ。
ABS仕様もラインアップされている。
シリンダーのボアをNC700用から4㎜広げて排気量アップし、ゆとりのパワー感を獲得した。
また内蔵のバランサーによって振動も低減され、より快適性が向上している。
燃料タンク部に設けられている大容量21Lものトランクスペースも700のまま。
フルフェイスヘルメットも収納でき、シートに跨ったままでも物を出し入れできるという利便性は一度使うとやめられない。
NCシリーズとインテグラに共通採用されているデジタルメーター。
700のものと基本デザインは変わらないが、燃費計をはじめ、今回新たにギアポジションインジケーター表示が追加された。