扱いやすくオフも怖くない行動半径の広さが魅力
トライアンフのタイガーは唯一の3気筒アドベンチャー。
スタンダードとXCの違いは主に足まわりで、スタンダードではフロント19/リア17インチのキャストホイール、今回乗ったXCではフロント21/リア17のスポーク仕様となり、よりオフロードに焦点を当てたモデルとなっている。
跨ってまず感じるのは、ほどよいサイズ感。
日本人には大柄すぎる、リッタークラスのアドベンチャーにはない足つき性の良さ、取り回しのしやすさがあり、気軽に乗ろうと思えるフレンドリーさが嬉しい。
走り出せばクラッチを繋いだばかりの極低回転域から分厚いトルクを発揮し、市街地で使う常用回転域でのスロットルレスポンスも鋭い。
回転を上げるほどに抜けるようなサウンドを奏で、高速道路に上がれば巡航力の高さが際立つ。
トップギア6速なら3500rpmで80km/h、100km/hクルージングは4100rpmでこなし、パワーが盛り上がる6000rpm以上なら超ハイスピードレンジでのクルージングもこなせる。
今回はオフロード用ヘルメットにゴーグルを組み合わせての試乗だったが、ウインドシールドのおかげで、高速道路でも走行風に悩まされることはない。
オン・オフモデルならではのゆったりとしたライポジと高いアイポイントはもちろん、振動の少ない3気筒エンジンのおかげで、長い距離を走っても疲れ知らずだったことも言っておきたい。
そして重心が低いのと、4発のように伸びやかに回るエンジンのおかげでワインディングも軽快。
細身の前輪大径ホイールはオフ車のようにスパンと寝かし込むことができ、扱いやすい低中回転域のトルクもあいまって恐怖心なくコーナーを攻められる。
ペースを上げ、フロントに荷重がかかったときに若干の剛性不足を感じるが、ツーリング時にそこまで攻め込んで乗ろうとはまず思わないだろう。
砂の浮いた峠道でも、標準装備のABSがしっかりサポートしてくれている。
オフロード性能も期待以上で、フラットダートなら覚悟さえ決めれば突き進める。
多少のギャップも軽快に乗り越えていくが、フロントが振られるなど、挙動が大きくなったときの対処はさすがに遅れがち。
それでも、未舗装路も諦めず、まだその先奥深くに足を踏み入れることができるのがこのXCの魅力。
パワー、サイズも含め、ミドルクラスであることの恩恵は大きいのだ。
SPECIFICATION
●全長×全幅×全高:2215×865×1340㎜
●ホイールベース:1545㎜
●シート高:847㎜
●車両重量:215㎏
●エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
●総排気量:800㏄
●ボア×ストローク:74×61.9㎜
●圧縮比:NA
●最高出力:95PS/9300rpm
●最大トルク:7.1㎏-m/7850rpm
●燃料供給方式:FI
●燃料タンク容量:19ℓ
●キャスター角/トレール:24.3度/95.3㎜
●変速機形式:6速リターン
●ブレーキ形式 前・後:φ308㎜ダブルディスク・φ255㎜ディスク
●タイヤサイズ 前・後:90/90-21・150/70R17
RIDING POSITION 身長:175㎝ 体重:67㎏
気負わず乗れるアップライトなポジションで、またがるのをためらうような大柄なボディではない。
800ならではのジャストサイズだ。
両足はツマ先立ちだが、アドベンチャーにしては低重心で不安は少ない。
プリロードを抜けば、さらに足つき性は良くなるだろう。
アドベンチャーの雄らしい本格仕様のミドルGS
BMW F800 GS ADVENTURE
アドベンチャークラスを牽引するBMWのGSシリーズだが、ジャストサイズといえるミドルクラスの方が、よりチャレンジングな走りができるという声も少なくない。
その人気を反映してラインアップはきめ細かく、単気筒のF650GS/SERTAOにはじまり、パラレルツイン搭載でストリート重視のF700GS、そしてF800GS/アドベンチャーと選択肢は多い。
なかでも、GS本来のコンセプトをそのまま受け継いだのがこの800。
鋼管フレームに798㏄の並列2気筒を搭載するのは700と共通だが、専用のカムシャフトやECUでエンジンはよりパワフル。
オフロードでの使用を考慮して、やや低中回転域を重視した味付けになっている。
足まわりもダートを想定し、より高性能な倒立フロントフォークや走破性に長ける21インチのスポークホイールに換装している。
さらに、昨年夏にはF800GSアドベンチャーも追加された。
こちらは8ℓ増量の24ℓビッグタンクをはじめ、大型ウインドスクリーンやよりストロークの長い前後サス、幅広なシート、大型シュラウドや専用のガード類を追加。
スタンダードよりも車体は大柄になったが、スタンダードではオプション設定となる電子調整式サスペンションの「ESA」と、トラクションコントロール機構となる「ASC」が標準装備されているのも見逃せない。
DCTナシならR800GSアドベンチャーのほぼ半額というバリュープライスもストロングポイントだ。
●PHOTO:南 孝幸 ●TEXT:青木タカオ