先進性、上質さ、走りを備えた「才色兼備」スクーター!
原付一種のスクーターとオートバイは経済的なコミューターだが、都市部では二段階右折や通行禁止の場所も多く、これを嫌うライダーに支持されているのが原付二種クラス。
動力性能の余裕と手軽さ、荷物収納などの実用性を兼ね備えた125㏄スクーターが人気で、NMAXは、ヤマハのクラス最高級モデルだ。
125クラスとしては大柄だが、250スクーターに多い長くて低いフォルムではなく、車重も127㎏なので取り回しは楽。
ライディングポジションにも余裕があり、身長180㎝程度の大柄なライダーでも窮屈さは感じないだろう。
足を置く場所の自由度も高く、フロアボード前側に脚を伸ばせばリラックスした姿勢が取れる。
エンジンはヤマハが「ブルーコア」と呼ぶ高効率燃焼、高冷却性、ロス低減の思想に基づいて新開発した水冷4バルブ単気筒。
注目は低中速回転域と高回転域で吸気バルブの作動を変えるVVA(可変バルブ)機構。
この切り替えは音もショックもないので感覚的にはシームレス。遠心クラッチが繋がる回転数が高めなので、ゼロ発進が力強く、60㎞/hまで一気に加速する。
125スクーターは70㎞/hあたりから加速が鈍ることが多いが、NMAXは80㎞/hを超えても加速感が落ちない。この余裕が実際の街乗りでの敏捷さにつながる。
これがVVAの威力だろう。加えて、どの速度域でも振動が少なく、小排気量エンジンらしからぬ上質さがある。燃費も改善されているようだから、満タンで300㎞程度は走れそうだ。
ブルーコアエンジンの完成度もさることながら、感心したのは車体全体の高い剛性感。これはフレームだけではなく、前後サスペンションの剛性と専用に開発された13インチタイヤが効いているのだろう。
スクーターのフレームはレイアウト的に剛性が出しにくく、クイックな切り返しで1テンポ遅れて反応したり、ブレーキングでフロント回りがヨレるモデルが多いが、NMAXは強めにブレーキを掛けながらバンクさせても不安なし。この感覚はTMAXにも通じるものだ。
ただ、シャッキリした操縦性と引き換えに、乗り心地は若干硬め。高級スクーターらしい快適さを求めるか、キビキビした走りを求めるかで評価は変わるだろう。スクーターにもスポーツマインドを求めてしまう僕は、この設定が好みだ。
文:太田安治/写真:南 孝幸、森 浩輔