鈴鹿8耐までいよいよ2週間! 公式事前テストも終わり、いよいよ各チームは現地入りへカウントダウンを始めました!
今大会、最大の注目を集めているひとつが、KRT(=カワサキレーシングチーム)、つまりカワサキワークスチームの18年ぶりの鈴鹿8耐参戦! この大注目のニュースに、本誌でもおなじみの「バイク芸人」福ちゃんが食いつきました!(笑)
モビリティランドの協力をいただき、福ちゃんの突撃インタビューを第2弾! 川崎重工の堀内プレジデントとチュートリアル福田さんの対談はいつしか“コカ・コーラ”鈴鹿8耐へのKawasaki勝算と
昨年の「あの」アクシデントについて進んでいきます。
2018年の“コカ・コーラ”鈴鹿8耐では、Kawasakiのライダーとして、ワールドスーパーバイク(=WSBK)チャンピオンとして初来日したジョナサン・レイの走りに注目が集まった。もちろん、レイ選手自体は何度も鈴鹿8耐に出場しているし、12年には優勝も果たしている。しかし、WSBKチャンピオンとなってからは、18年が初めての出場だった。
――レイ選手は、4年ぶりの鈴鹿8耐で、まるで違うライダーに見えました。なんというか、オーラというか、落ち着きが、さすがWSBKチャンピオンだ、って思えたんです。鈴鹿8耐出場を口説き落とすのは大変だったんじゃないですか?(以下--部は福田さん)
「いや、レイはスケジュールが合って、勝てる体制がきちんとできているなら出る、というスタンスだったんです。というのも、8耐に出場するには、決勝レースのウィークだけ日本に来る、というわけには行きませんから。8耐仕様のマシンテストを重ねて、なおかつWSBKのレース日程に影響がない、それが18年だったんです」(以下「」内は堀内さん)
――今年は1回目の合同テストの時に、WSBKのイタリアテストがあって鈴鹿のテスト、それからスペインでレース本番、というスゴいタイトスケジュールがありましたよね。それでも出場OKしてくれたんですか?
「今年は多少の無理をしても、本人は出たかったはずです。もちろん、去年の悔しさを晴らすためでしょう(笑)。出場の打診をしたらすぐにOKをくれました。本人は、Kawasakiで鈴鹿8耐というビッグレースに勝ちたい、と言ってくれています。ありがたいことです」
――それほど悔しかったんですね。堀内さんは去年のレース、どうご覧になったんですか?
「そりゃぁ、めっちゃ悔しかったですよ!(笑) レースに『絶対』なんてないことは知っていますが、これだけ力を入れていい準備ができたらいいとこ行くだろう、と。3位表彰台はすごくうれしいことですが、2位→2位と2年連続きての3位は、それだけに悔しい!だからこその、今年の体制なんです」
――あの転倒がなければねぇ。その前に、あのガス欠騒ぎまでは順調でしたよね。
「ご存知のとおり、レイが乗っていた時間帯にガス欠症状が出て、さらにセーフティカー介入の時間帯に転んでしまったんですが、あれもレイが『自分が乗っているときにガス欠症状が出てしまった』って思うところがあったようなんです。そのタイムロスでセーフティカーの位置取りが悪く、トップグループから半周離されてしまった。その焦りがスリップダウンにつながった、ということがあったかもしれません」
――あのガス欠はなんだったんですか? チームとして入念に燃費計算をしているはずなのに、バックストレート途中で失速してしまった。なんとかピットまでたどりついたのですが、それがタイムロスにつながったんですよね。
「正直、まだあのトラブルは原因がわからないようなんです。私も現場にいるわけではありませんので、わかっていて私に教えてくれないのかな(笑)。今年はああいうことがないようにしたいですね」
――堀内さんご自身は、鈴鹿8耐は毎年ご覧になってるんですか?
「今も昔も、直接のレース担当となったことはないんですが、根が好きなもので、いつもKawasaki勢の活躍には注目しているし、現地にも何度も足を運びました。この数年は決勝レースだけですが、現場に行っています。実は、川崎重工の金花芳則社長も17年に初めて鈴鹿の現場に足を踏み入れて、8耐の面白さにハマったというか『これは面白い!』と。今年も鈴鹿に行きたい、と言っています。企業のトップが理解してくれるというのはありがたいことです」
――川崎重工みたいな大企業の社長さんがですか! Kawasaki従業員のみなさんはどうなんですか? レース熱というか、8耐への注目度というか。
「年々すごい高まっていますね。正直言って、会社全体がサポートしていかないと、社員の注目も上がらないし、チームの士気も上がらないと思うんです。最近は社内企画として、決勝日に社員食堂で観戦会を開いていますよ。80年代後半や90年代の頃には応援のために社員がバスを仕立てて鈴鹿に行っていましたからね。あの頃の熱がよみがえりつつあると思います」
――今年のレース、どう作戦を立てているんですか?
「それも私は教えてもらえません(笑)。目標周回数、ピットワークやピットイン&アウトに必要なタイムロス、目標周回に達するための平均ラップタイム、そのタイムを出せる燃費、8耐の構成要因はたくさんありますからね。レオン・ハスラムは何かのインタビューで『220周する』なんて言っていましたけど、そんなに簡単なわけがない(笑)。マシントラブルやレース展開、天候の変化もありますからね。それをすべて乗り越えないと8耐で優勝できない。8耐には運もすごく必要ですよね。だから難しいんですよ、8耐は」
――他チームの戦力はどうご覧になっていますか?
「いくらKawasakiが万全な体制で臨むといっても、HondaさんもYAMAHAさんもSUZUKIさんも、当然うち以上に備えてきますよね。全日本ロードレースを見ていると、今年もHondaさんは力が入っているし、YAMAHAさんは何がなんでも連覇を続けたいでしょう。だから簡単じゃないんです」
――Kawasakiとしては鈴鹿8耐に出る意義を、どう考えているんですか?
「WSBKをはじめ、レース活動を続けるのは、予算もかかるし、勝負の世界ですから、うまく行かない時期だってある。けれど、ロードモデルではZX-10Rで、モトクロスではKXシリーズでレースをして、それに憧れてくれるユーザー、ファンを増やして、Kawasakiはこんなカッコ良いオートバイを作っているメーカーなんだ、というアピールをしたいですよね。スーパースポーツというカテゴリーのマーケット自体が縮小の方向ですから、WSBKで4年連続チャンピオンになったからZX-10Rがどんどん売れてくれる、という時代ではないんですが、間違いなくKawasakiのブランドイメージ、競争力は上がっています。販売成績で言うと、以前はNinja250、そしてこの最近は新型Ninja400が各国で好評をいただいて、販売台数も伸びています。これは間違いなくWSBK効果だと思っています。アジアでも力を入れてレース活動をしていますから、アジアでは250/400のNinjaが、ヨーロッパではNinja1000の販売が好評をいただいています」
――今ではWSBKを頂点に各国でレース活動をしている、という感じなんですか?
「そうですね。基本的にWSBKを頂点に、ヨーロッパ、アメリカ、もちろん日本を含めたアジアと、レース活動は各国の販売社が運営してくれている形なんですが、おっしゃる通り、日本、アジア、そしてヨーロッパへと続くピラミッドができてつながっています。だから、8耐に出る、といってWSBK勢を招集できる。従来は8耐は日本のレースで、WSBKは別のレース、という意識がありましたからね」
――その意味でも、世界が注目している、日本で開催されるレースでKRTが復活するのは重要なんですね。
「18年のMotoGP日本グランプリで、グランプリパレードに参加したんですよ。YAMAHAの日高社長にお誘いいただいて『でもKawasakiはMotoGP出ていませんから』ってお断りしていたんですが、そんなこと関係ないから行こう、って。そうしたら、もてぎの地元の方がすごく声援を下さって、沿道にたくさん出てきていただいて、お子さんからお年寄りまで、たくさんフラッグを振ってくれるんですね。あれはすごく感動的な光景でした。レース観戦に来てくれているファンの方も、Kawasakiユーザーがたくさんいる。こういうファンの皆さんの応援に応えなきゃいかんな、と思いましたね」
<つづく>
取材協力 モビリティランド/鈴鹿サーキット