すばしっこい俊敏な走りをそのままに高級感を向上
2010年の登場以来、使い勝手の良さや動力性能の高さはもちろん、クラスを超えた質感や精悍なスタイリングで、多数のバックオーダーを抱えるほどのヒットとなったのは記憶に新しいが、4年を経てついにモデルチェンジを果たした。
PCXのネーミングは「Personal Comfort Scooter」に由来し、「クラスを超えた先進デザイン」「ゆとりの動力性能と高い環境性能」「快適で便利な使い勝手」の3つのキーワードを設定して開発されたものだが、細部にまで及ぶつくり込みによる流麗で先進的なスタイリングはニューPCXでも健在。
環境性能に優れるeSPエンジンの搭載やアンダーボーンフレーム、前後14インチの足まわりに変更はないが、フロントとリアカウルを一新し、さらにスタイリッシュで高級感のある外観としている。
実車を見てまず目をひくのは眼光鋭いLED式のヘッドライトで、近未来的なニューPCXのフォルムをいっそう際立たせている。
車体をぐるっと回り見渡せば、ヘッドライトのほか、テールランプ、ウインカー、ライセンスランプといったすべての灯火器にLEDが採用されているから驚きだ。
四輪車であっても一部高級車にしか採用されてこなかった高嶺の花が、ついに導入されたかと思うと感慨深い。
跨るとメーターまわりが一新されているのがわかり、160㎞/hまで刻まれるフルスケールメーターの内側には新たに液晶ディスプレイが配置され、平均燃費や燃料計に加え、待望のデジタル時計も装備された。
シートはバックレスト一体型とし、表皮がダブルテクスチャーになってグレードアップ。ゆったりとしたライポジはそのままに、足つき性が若干良くなっている。
水冷単気筒エンジンは低速トルクがアクセルを開けたと同時にグッと出て、そのまま軽い回転でスーッと高回転まで回り、スピードがぐんぐん乗っていくフィーリング。
幹線道路でも交通の流れを充分にリードでき、前後14インチの足まわりは大きな段差を乗り越えたときも車体が破綻する兆しを見せず、終始安定した走りだ。
フロントにφ31㎜テレスコピックフォーク(ストローク100㎜)、リアにデュアルダンパー付きリアショック(ストローク75㎜)を採用する前後サスも従来通りだが、エンジン各部の多岐にわたる徹底的な低フリクション化の実施で、市街地をキビキビ走るすばしっこさに磨きをかけた。
経済性に優れる原2版PCX。今回もまたヒットの予感がする。
主要諸元 HONDA PCX
●全長×全幅×全高:1930×740×1100㎜
●ホイールベース:1315㎜
●シート高:760㎜
●車両重量:130㎏
●エンジン形式:水冷4ストOHC2バルブ単気筒
●総排気量:124㏄
●ボア×ストローク:52.4×57.9㎜
●圧縮比:11.0
●最高出力:12PS/8500rpm
●最大トルク:1.2㎏-m/5000rpm
●燃料供給方式:PGM-FI
●燃料タンク容量:8ℓ
●キャスター角/トレール:27度/86㎜
●変速機形式:Vベルト無段変速
●ブレーキ形式 前・後:φ220㎜ディスク・φ130㎜ドラム
●タイヤサイズ 前・後:90/90-14・100/90-14
RIDING POSITION ●身長:175㎝ ●体重:67㎏
ハンドルやシートなどを含め、車体は共通がゆえにライポジもまったく同じ。
ハンドル切れ角を46度、最小回転半径2mとすることで停車時の切り返しも少なく、取り回しがしやすいのは従来通り。
乗車感覚は軽二輪としてはコンパクト、原付二種として考えるなら大きく感じる。