773㏄へとスケールアップし再び蘇ったバーチカルツイン
W650は厳格化する排ガス規制によって2009年に一旦生産終了となったが、2011年2月にW800となって帰ってくる。
ベベルギヤでカムシャフトを駆動する空冷SOHC4バルブは773㏄に排気量を拡大し、吸気機構はフューエルインジェクション化。
サブスロットルを採用することで、理想的なスロットルフィールを実現した。
ただし、360度クランクのロングストロークが生み出す独特のパルス感、低中回転域の力強いトルクはしっかりと受け継がれ、味わい深く、そして余裕のある走りがそこにはあった。
上質感にはいっそうこだわり、前後フェンダーをクロームメッキ仕上げのスチール製とするのはもちろん、クラシカルなイメージを強調するためにヘッドライトにはカットガラスレンズを採用している。
エンジンはバフ研磨にクリアコートを施し、タンクグラフィックには水転写デカールを用いて、繊細なグラデーションと凹凸のない美しい仕上がりを見せ、クラシックバイクファンらを唸らせた。
16年に環境規制によって再び生産終了するまで、Wの血統を引き継ぎ、しっかりバトンを繋いだ。
ファイナルエディションは2016年登場
W800のファイナルエディションは、1973年に登場した650RS(W3)を彷彿とさせるカラー&グラフィックを採用している。
250メグロSGの意匠を色濃く反映したスタイル
99年にW650が発売される前に、Wの血統を感じさせる単気筒モデルが生まれている。
17年のファイナルエディションまで、じつに25年間ものロングセラーを続けたエストレヤだ。
直列したエンジンやサドルシートを備えたその姿はメグロを彷彿とさせ、さらにダブルシートにし、カラーを変えればWそのもの。
輸出仕様ではW250を名乗り、シリーズの一員であることを証明しているが、こうしたエントリークラスでもWの息吹を感じることはでき、幅広い層に長く愛され続けている。
そのシンプルな車体構成に、Wファンなら目を輝かせるだろう。
エストレヤの復活も待ち遠しいが、インドネシアではW175が人気を博している。
ジャカルタなどの都市部でアーバンライフをおくる、ファッションにも敏感な若者をターゲットにしていることは、全身をブラックアウトしてヴィンテージ感より精悍さをアピールしていることでわかるはずだ。
空冷SOHC2バルブ単気筒には、ミクニVM24キャブレターがセットされ、足まわりは前後17インチ。
燃料タンクには〝W〟のエンブレムが貼られ、末弟であることを誇示している。
W250を含め、もはやWは多様性を受け入れ、新しい可能性が広がる一方へ飛躍しているではないか。
Zやニンジャがそうであるように、Wもカワサキにとって名門といえる重要なブランドだ。ラインアップはまた拡充されていく予感があり、それを期待せずにはいられない。
文:中村浩史