50年にわたる老舗ブランドの最新作は大幅アップデートを敢行!
カワサキのW800ストリート/カフェとは設計年度のもっとも新しい「旧車」だ。
ちょっとややこしい言い方だが、Wのシルエットは1966年に発売された650クラスのW1シリーズをモチーフにしている。
エンジンだけに目を向けると、カワサキに吸収される前の目黒製作所製500㏄のメグロK2がベース。60年代前半のモデルで、英国の50年代の古いBSAを参考に誕生している。
もう、ここまで歴史があるとルーツを辿るというより過去帳や家系図の解析並みだ。W1は生まれながらにして古い英国車のテイストを持った、当時の国内最大排気量の堂々たる存在だった。
そんなW1の末裔は75年まで生き残る。650RS、W3だ。
Z2よりも上等なダブルディスクブレーキを装備していたが、OHVバーチカルツイン624㏄、ミッションは別体式で4速という基本レイアウトはW1のまま。
すでにホンダCB750FourやカワサキZ2までもがストリートで活躍していた時代。W3はそれでも人気を維持していたバイクだった。
そんな、かつてのW1シリーズの排気量が元となり、1999年に登場した復活モデルはW650となったのだ。そして、650は拡大され進化して800となったが、基本は同じ。
360度クランクのバーチカルツインだが、ベベルギ駆動のOHC4バルブ。
各種エミッションもクリアした最新のエンジンだ。しかも、見て楽しめるエンジンとして、カバー類の仕上げから特徴的な駆動方式の強調などが絶妙にデザインされている。
3000回転までは歯切れのいいパルス感が魅力で、古い英車っぽさでは270度クランクの本国ブランドを越えている。
フレームは安定性向上のため何度か微妙な改修がなされているが、シンプルだが美しいパイプワークが見て取れるクレードルタイプ。
最新型は風に負けそうな大きなハンドルを採用しているにも拘らず、高速道路などでの節度が増し、落ち着いた走りができるようになっていた。
チャームポイントになっている低く配置されたキャブトンマフラーの関係で、リーンアングルはアメリカンモデルなみに浅いが、ハンドリングは従順。使い勝手は良好だ。
W800ストリート/カフェはどこをとっても今の技術で懸命に、かつてのWの魅力と向き合って造られたモデル。
しかし、バイクとしてはヤマハSRよりも古い姿や、のどかな時代の暴れん坊なキャラのエンジンをテイストとして身につけている。
文:宮崎 敬一郎
カワサキ W800 ストリート/W800カフェ 主なスペックと価格
※〔 〕内はW800カフェ
全長×全幅×全高:2,135×925×1,120mm〔2,135×825×1,135mm〕
ホイールベース:1,465㎜
最低地上高:130㎜
シート高:770㎜〔790mm〕
車両重量:221kg〔223kg〕
エンジン形式:空冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
総排気量:773㏄
ボア×ストローク:77.0×83.0㎜
圧縮比:8.4
最高出力:38kW(52PS)/6,500rpm
最大トルク:62N・m(6.3kgf・m)/4,800rpm
燃料タンク容量:15L
変速機形式:5速リターン
キャスター角:26.0゜
トレール量:94㎜
タイヤサイズ(前・後):100/90-18M/C 56H・130/80-18M/C 66H
ブレーキ形式(前・後):シングルディスク・シングルディスク
メーカー希望小売価格:税込99万3,600円〔税込111万2,400円〕