オールラウンドな優等生がさらに守備範囲を広げる進化
ホンダの400㏄ロードスポーツといえば、クラス唯一の4気筒エンジンを搭載したCB400スーパーフォア/スーパーボルドールを連想する人が多いだろう。
だが2気筒エンジンのCBR400Rも着実に熟成度が増している。2013年にデビューし、2016年に外装を中心にマイナーチェンジ。そして2019年、初のフルチェンジを受けた。
新型の開発コンセプトは「より刺激的に、より自由自在に」だという。デザイン面ではカウルやタンク、マフラーエンドといった外装パーツを一新。
セパレートハンドルの取り付け位置も下がり、CBRの名にふさわしい引き締まったフォルムになった。
だが、僕が知りたかったのは走りの違い。前モデルはストリートでの乗りやすさを重視したマイルドな性格だったが、新たな開発コンセプトでどう変わったのだろうか?
試乗して最初に気付くのは、発進加速がより力強くなったこと。
バルブタイミングとリフト量の最適化、FIのインジェクター変更によって3000~7000回転でのトルクが3~4%上乗せされたということだが、アイドリング回転からスルリと発進し、3000回転台でシフトアップしてもスムーズさを失わず、6速・40㎞/hからでもグズらずに加速する。
この回転域ではパーシャル状態から微妙にスロットルを開けたときのツキも素直だ。
エンジンブレーキの効きも自然で、ライダーが雑なスロットル操作をしてもギクシャクせずに反応してくれる。
2気筒らしいパルスを感じるのは3000回転以下。6000回転を超えると少しづつ振動が増えるが、6速・100㎞/hは5250回転ほどなので高速クルージングも快適。
吸排気系の変更で全開加速中のサウンドはグッとエキサイティングになったが、実際の加速感はフラット。個人的には8000~10000回転でのパンチが欲しいが、ユーザー層を考えればこの扱いやすさが正解だろう。
ハンドル位置が下がってフロント荷重が少し増えたことで、ハンドリングはダイレクト感が増した。
前後サスは前モデル同様にソフトめの設定だが、リアサスの改良で乗り心地がさらにアップ。座り心地のいいシートと併せ、長距離走行の快適性も向上した。
前モデルの扱いやすさは損なわず、スポーツ性を高めたのが新型CBR400R。幅広い扱い方に応える優等生が、さらに偏差値を上げた、という仕上がりだ。
文:太田安治/写真:南 孝幸、島村栄二