ドゥカティの崇高なスポーツイズムによりクルーザーの概念を覆すハイステップを踏む
ディアベルは大いに爪を隠しているのだ。そのエクイップメントは見掛け倒しにあらず、超絶技巧で奏でる悪魔的旋律は恐怖に値する。
しかし、恐れることはない。高次元でバランスされた数々の電子制御システムにより、悪魔を調教することも容易いことだろう。ギミックの凝ったパーツセット「スポーツ・パック」装備車は、熱いライディングをより一層盛り上げることだろう。
極低回転から極厚なトルクを発生させるエンジンは、優雅にツインエンジンならではの脈動を奏でつつ、ハイウエイの流れに軽々とノることができる。
つまり、エンジンを回さなくても、そこそこの速度域での巡航も楽しめる。トルクの演出の優雅さと、長いホイールベースと車格が誇る上質なクルーザーとしてのキャラクターは、確固たるものだと確信に至るだろう。
ただし、勘違いして欲しくないのは、先にも述べたようにクルーザーとしての安定性や重厚感を重視するあまり、軽快さをスポイルしてはいないことを強調しておきたい。
それは、低速走行が強いられる街乗りをしている時点でも感じられる、意思にダイレクトかつ従順な操作性と応答性は、速度レンジの変化があろうともストレスを感じさせることがない。
見た目のインパクトと相反するフレンドリーさは、軽快なハンドリングによって印象づけられているのかもしれない。
フレンドリー、そして調律と均衡のとれた仕上がりは上質であり、ある意味ラグジュアリーマシンとしての資質も備えているといえるが、「ディアベル」が「ディアベル」たらしめる所以は、テスタストレッタDVT1262エンジンから繰り出される出力性能といっても過言ではないだろう。
常に急激な加速Gに耐え得るライディングポジションなしでは考えられない加速力は、ドラッグマシンさながらの暴力的衝撃と表現しても大げさではない。
また、加減速時には滑らかなシフトフィールを提供し、ロスのないパワーデリバリーを実現するクイックシフターも至極の働きをみせる。
ただ、そんな加速力を、専用コースでもないシチュエーションで何事もないように炸裂させてしまうのは、強大なチカラをしっかり受け止める車体と各電子制御システムの恩恵といえる。
ウデに覚えがある乗り手なら、それぞれの電子制御システムをコントロールし、むき出しの衝撃と挙動を対峙するというのも一興だろう。
「スポーツ・パック」と銘打って用意されたアクサリーパーツセットは、ダイナミックかつアスリート気質の性格をより一層盛り上げる演出に富んだパーツチョイスとなる。
注目したいのは、ワイルドな表情を切削面で演出するスポークデザインを持つアルミホイールだ。このホイールはXディアベルにも採用されており、親しみを覚えるユーザーも多いことだろう。
ディアベルは片持ちのスイングアームを採用することで、これでもかと240サイズのタイヤとスタイリッシュなホイールをアピールすることが出来るのだ。
ドラッグスタイルのモデルでは今日日珍しいチョイスではなくなった240タイヤの採用は、ドゥカティラインアップに於いては異端といえる存在だ。
ワイドなタイヤチョイスを最大限に有効にする、ショートサイレンサー採用やショートシート仕様のフェンダーレス化などにより、時流のスタイリングを取り入れ機能美として個性を強調し、それまでのモーターサイクルカルチャーに於いても一線画す存在であることは認識できるはずだ。
スポーツ・パックは353,755円(消費税10%込)
※別途取付工賃がかかります
撮影:松川 忍 モデル:葉月美優 文:小松信夫/編集部
ウエア協力:AraiHelmet /KADOYA / Alpinestars