鈴鹿サーキットを舞台に、各クラスで熱いバトルが繰り広げられる!
JSB1000が7戦12レース、J-GP2/ST600/J-GP3が6戦7レースで行なわれる全日本ロードレース選手権が、いよいよ最終戦を残すのみになりました。今シーズンは、J-GP2クラスがラストイヤー、2020年からはST1000クラスが新設されるなど、節目のひとつになるシーズン。新しい時代に入って行く、歴史に名前を刻むシリーズになりました。
ここまで、チャンピオンが決まっているのはJ-GP3クラスのみで、初チャンピオンを決めた長谷川 聖(19)はMotoGP日本グランプリ大会、Moto3クラスにワイルドエントリー参戦を果たすなど、早くも次のステップへと歩みを進めています。
ラストイヤーの最終戦! J-GP2クラス
ポイントリーダーと挑戦者がもっとも拮抗しているのが、今年がラストイヤーとなるJ-GP2クラス。第5戦九州大会を終えて、ポイントリーダーは名越哲平(22・MuSASHi RT ハルクプロホンダ)。その名越を6ポイント差で追うのが作本輝介(22・Team高武RSC)、作本を1ポイント差で榎戸育寛(21・SDG Mistresa RT ハルクプロ)。3人にチャンピオン獲得の可能性が残されています。
ここまでの展開は、名越3勝、作本1勝、榎戸2勝。この中で一度も表彰台を外していないのが作本で、最多勝の名越、2勝を挙げている榎戸とも4位が1回――表彰台を1回しか外していない…それほどハイレベルな争いをしているんです。舞台は、今年J-GP2初めての開催となる鈴鹿サーキットで、昨年は名越→榎戸の順で1→2フィニッシュでした。鈴鹿は榎戸が爆発的なスピードを見せることがありますから、プロ野球でいうところの「下克上」の条件としては、榎戸優勝、名越が5位以下ならば榎戸逆転が実現します。
J-GP2クラスの廃止が発表されて、どっとエントラントが増えたST600クラスは、昨年同様、小山知良(36・日本郵便Honda Dream TP)と岡本裕生(20・51ガレージNitroレーシング)の、ベテランvs若手の一騎打ち。昨年は岡本リード、小山が追う形で最終戦を迎えましたが、今シーズンは逆転。小山を9ポイント差で岡本が追う形です。
このふたりは、岡山大会→九州大会とシーズン後半に入って岡本が調子を崩し、小山が2連勝という形でのマッチレース。特に岡本は、コンディションが安定しないウェットレース時に表彰台を逃しているため、最終戦の天候も重要になりそう。対する小山は、チャンピオン争いというより、毎レース圧倒的に勝てば、自動的にチャンピオンがついてくる、という気持ちで走っているため、最終戦も細かいチャンピオン獲得へのポイント計算などなしで、全力で勝ちに来そう。そこにスキが生まれなければ、小山の2000年以来、19年ぶりの全日本チャンピオンが見えてくるかもしれません。
チャンピオンはどっちだ!? 2レースで争われるJSB1000クラス
今シーズンも中須賀克行(38・ヤマハファクトリーレーシング)vs高橋巧(29・Team HRC)のワークスライダー対決となったJSB1000クラスのチャンピオン争い。今シーズンは、開幕戦で中須賀がダブルウィンを決め、第2~3戦を高橋が4連勝、鈴鹿8耐以降は、中須賀がすべて高橋を上回っているという展開。それでも高橋がポイントリーダーにいるのは、中須賀が第2戦・鈴鹿大会レース1で転倒ノーポイントレースをひとつだけ作ってしまったからです。
鈴鹿8耐までのシーズン中盤は、高橋がマシンのポテンシャルアップもあって、さすがの中須賀も歯が立たない速さを見せていましたが、後半戦に入ってからは高橋の負傷もあり、4レース中、中須賀3勝、高橋0勝、残る1レースは野左根航汰(23・ヤマハファクトリー)が優勝という展開。
さらに後半戦は、水野涼(21・MuSASHi RT ハルクプロホンダ)も調子を上げていて、この4人が中心となって優勝争いをすることは、ほぼ確実とみられています。
ポイントランキングは、最終戦2レースを残して、高橋が11ポイントリード。これは中須賀が連勝しても、高橋は2レースとも3位に入ればいい、というポイントギャップです。そこでキーになってくるのが、野左根と水野の位置取りです。
明確なチームオーダーがないのはもちろんですが、野左根は中須賀をチャンピオンとするべく、水野は高橋をチャンピオンとするべくサポートするのは常識で、あからさまな順位調整はないにしろ、このふたりはチャンピオンを争うふたりよりも、順位を考えてレースをしなければならないでしょう。
さらに、レース1の結果によっては、野左根にもタイトル獲得の可能性が復活するため、レース1/レース2それぞれの興味がわく戦いとなりそうです。
「僕ができるのは勝つだけ。巧くんを、彼が得意な鈴鹿でやっつけたい」と中須賀が言えば
「後半戦、ポイントを考えてのレースをしてきたので、最終戦は思い切って走ります。チャンピオンを獲れる位置にいるなんてめったにないチャンスなので、強いレースをしたい」と高橋。
さらに高橋は、2度目のJSBチャンピオン獲得が、2020年からのワールドスーパーバイク選手権参戦への条件と言われているだけに、いつも以上に気合の入ったレースが見られるかもしれません。
中須賀連勝、高橋連続3位で、高橋が1ポイント差のチャンピオンとなるか、それともチャンピオンにふさわしい強さで最終戦を制するのは誰なのか――。最終決戦「MFJグランプリ」は11月2~3日の第一週末に鈴鹿サーキットで行なわれます!
写真/後藤 純 中村浩史 文責/中村浩史