(レポート:オートバイ編集部 松本正雅)
アフリカツインの魅力をより広げる2つのキャラクター
森田健二 氏
本田技研工業株式会社
二輪事業本部 ものづくりセンター
商品開発部 商品開発1課
技師
「2016年に登場した先代のアフリカツインは1モデルのみで、いかに幅広いユーザーの方に楽しんでいただくか、というテーマでした。2018年に追加されたアドベンチャースポーツは、ビッグタンクとストロークの長いサスペンションを搭載して『より遠く、よりタフに』というテーマでしたが、この2モデルを比べたとき、結構キャラクターが似ていると思ったのです。ちょっと違いが分かりにくいかな、という反省もありました」
そう語るのは新型アフリカツインシリーズのプロジェクトリーダー、森田さん。新型も2モデルのラインアップでいく、と決まったとき、森田さんが考えたのはそれぞれのモデルに違った個性を与えることだった。
「せっかく2モデル造るなら、装備や価格の違いではなく『このモデルが好きだから』と個性で選んで欲しかったのです。あと、2モデルラインアップすることでアフリカツインの魅力の幅をより広げて、幅広いライダーの方に楽しんでいただきたいと考えました」
こうして、スタンダードとアドベンチャースポーツ、それぞれのモデルにはハッキリとしたキャラクター分けが行われた。
「スタンダードはオフロードライディングをもっと楽しめるよう、よりスリムに、より軽くすることを目指しました。アドベンチャースポーツは、もっと『旅』を楽しめる仕様として、それぞれの魅力を引き立てました」
近年、このカテゴリーは排気量拡大が主流だが、新型アフリカツインは「コンパクトさ」と「軽さ」にとことんこだわっている。
「お客様の声で多かったのが『あと少しパワーが欲しい』というものでした。動力性能での不足を補うトルクが欲しかったのです。ただ、アフリカツインのエンジンは、もともとコンパクトで、通常の手法であるボアアップが難しかった。そこで新型では、エンジン自体のサイズを極力変えないようにしながらストロークをアップしたのです。1082㏄という排気量はその結果です」
エンジンは実質的に全部造り直し。しかも新型アフリカツインはフレームも一新している。これもひとえに本来の魅力の「軽さ」と「スリムさ」を大切にしたためだった。
「排気量を上げれば普通バイクは重くなりますが、パワーが増強されても重くては意味がありません。車体を軽くすることに加えて、それぞれのハンドリングの味付けにもこだわり、スタンダードはニュートラルで軽いハンドリングを、アドベンチャースポーツは全体的に安定感のある乗り味を目指しています」
そして今回から、アドベンチャースポーツには待望の電子制御サス搭載モデル「ES」が設定されることになった。これが「旅バイク」の魅力を大きく高めている。
「オンとオフでは求められるサスペンションセッティングも異なるわけですが、電子制御サスペンションなら、その違うセッティングを瞬時に使い分けることができるのです」
アップルカープレイなど、最新の機能も取り入れながら、本来の魅力を磨くことも忘れなかった新型アフリカツイン。オフロードに、旅に、好みに応じた「冒険」を楽しませてくれる充実進化なのだ。
(レポート:オートバイ編集部 松本正雅)