フロント19インチ採用の、ゆったりしたハンドリングが魅力のクラシックロードスターの乗り味はいかに?
フロント19インチ採用でゆとりある走りを楽しめる!
2019年春に発売された「ストリート」「カフェ」に続いて、ベーシックモデルの「W800」が2019年12月1日に追加ラインアップされた。
大きな違いはフロントホイール径で、18インチのW800ストリート・W800カフェに対し、W800は19インチ。原点であるいにしえの名車・W1シリーズやW650、2016年まで売られていた先代のW800と同じだ。
狙いは、郷愁溢れるW1シリーズの魅力でもあった、あの均整の取れた姿への復古。近年のWも、高いステアリングヘッド位置など、かつてのW1にインスピレーションを得たビンテージなバイクデザインを意識して造られている。つまり「原点回帰」バージョン。
価格設定はストリートとカフェの中間となっている。この姿が心に響けば、ベーシックモデルを選べ! というカワサキの主張である。
実際のところ、たった1インチの違いだが、タイヤとエンジンやステアリングとの空間にムダがなくなり、随分紳士的になっている。
加えて、ただホイールを大きくしたわけではなく、キャスター、トレールなども変えており、18インチのストリートなどに比べると低速域でフロントの入りが強めになっているが、切れ込むような感じではない。
一方で、70〜80㎞/h以上から100㎞/hあたりで巡航するクルマを追い越すような場合のステアリングの節度と粘りはずっとしっかりしていて、気分的には大らか。感触的には落ち着きが増している。
フロントの接地面が小さくなったデメリットはほぼ感じないだろう。
ハードなコーナリングやブレーキングをコーナー進入の途中まで残す操作のときに差が出るが、このバイクの許容バンク角を考えたら、そんな状況になることはまずないからだ。
個体差かもしれないが、今回の試乗車は、これまで乗ったストリートやカフェより排気音が野太く、パルス感も切れが良く、それでいて外から聞いてもうるさく感じなかった。
5速・1500回転で流すこともできるトルクがあり、街中だと3、4速で多用する2000〜4000回転では心地よいパルスを楽しめる。
ちなみに100km/h・5速の回転は3500回転強。5000回転以上回すと振動などはスッと消えるが、ストリートやカフェに比べ、心地よいレベルの振動は残っていた。
19インチ化と短いハンドルは、安定性とツインの味に対して共にいい働きをしている。懐かしさを感じさせるバイクだった。