まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川 忍
伊藤真一(いとうしんいち)
1966年、宮城県生まれ。88年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2019年の鈴鹿8耐は「Honda Dream RT 桜井ホンダ」チームで見事10位を獲得!
予想以上の進化を果たしていたCBR1000RR、中でも足まわりのバランスは上々!
ロードレースでは2008年からCBRとずっと付き合ってきましたが、SC77型のスタイリングはかなりカッコ良くなりましたね。構成部品が大幅に変わっていないと聞いていたので、そんなに変わったところはないのだろう、と思っていましたけど、乗ってみて全然違うのでビックリしました。
フレームやスイングアームは旧型から肉厚を変更するなど、剛性の最適化と軽量化が図られています。フレームについてはあえて大きく変える必要もなかったのでしょう。
90年代にホンダのエースとして世界ロードレース選手権で活躍したミック・ドゥーハンは、10年近く同じフレームを使ってました。最近ではMotoGP王者のマルク・マルケスが、新型ではなく旧型のフレームを使ったりしていますよね。変える必要がないものは、やっぱり良いものは良い、ということなのだと思います。
新型の前後のサスペンションは、フレームを含めて旧型よりもバランスが良くなった印象です。前後ともに作動がしなやかで、ギャップの突き上げも感じさせず、どうしたの、こんなに良くなっちゃって、と思いました。公道のワインディングでも、すごく乗りやすくて楽しめる設定です。
モデルチェンジしても「乗りやすさ」は常に健在。スロットルバイワイヤ、ABS、トラコンの高い精度が貢献している
SC77型が旧型と全然違うオートバイに思える、一番の理由はスロットルバイワイヤでしょうね。
燃料系がキャブレターからインジェクションになったとき、そしてワイヤ操作のスロットルから、スロットルバイワイヤになったときも、セッティングが色々難しくなりましたが、今では頭の中に燃料噴射の制御マップがあって、こういう風に燃料を吹いているんだろうなと、わかるくらいにまで熟成されています。
スタンダードに試乗しましたが、オートシフターみたいに、シフトペダルに触れるだけのような感触でポンとシフトアップできるんです。
元々機械としてギアボックスの精度が良くないと、そういう風にはならないのですが、スロットルバイワイヤの操作でちゃんと駆動力がしっかり切れるから、オートシフターがついていると錯覚するくらい、スムーズにシフトアップができます。
ロードレースでCBRを使うことを考えたときも、一番大事なのはスロットルバイワイヤです。これでいかようにもできる、というくらい今のロードレースでは重要なポイントなのです。
エンジンのモードは切り替えが可能で各モードを試してみましたが、プリセットで選択できるフルパワーのモード1が、一番出力の特性は良いですね。国内仕様のフルパワーのモデルに乗ったのは、このCBRが初めてなのですが、公道では扱いきれないほど馬力があるなぁ、と思うほど速いですね。これくらい馬力があると、オーナーになる方は嬉しいだろうなって思いました。
ただ、CBRは気がつくととんでもないスピードレンジに入っちゃうこともあるので、乗るときは気持ちをきちんと持ってちゃんと制御しないといけません。まぁそれは、バイク全般に言えることですけど。
それくらい推進力があるので、やっぱり乗るときには「気構え」が必要です。CBRの高性能さゆえの速さを、自分の技量と勘違いすると危ないですね。本気で走りたいときは、サーキットに行きましょう。
(明日はCBR1000RRヒストリーをお届けします)