撮影●鈴木広一郎 文●濱矢文夫 車両協力●仙波正人/ VT オーナーズクラブ
「4スト250スポーツの先進性と懐の深さ」
1982 HONDA VT250F

走り出すと、低回転域でしっかりあるトルクとその出方の躾に感心した。クラッチミートしたところから不足のない力で押し出し、レスポンシブルでありながら唐突なところがない。スロットルを開けた分だけきっちり前に進んで、感覚的には6000回転くらいかなと思ってタコメーターを見ると1万回転を余裕でオーバーしていて驚いた。
90度Vツインの特徴である振動の少なさもあって、そんなに回っていたなんて気が付かなかった。その超高回転域までスムーズすぎて拍子抜けするくらい。その間、ギクシャクさせる急なトルク変化がないから、だからどの回転域もストレスがなく常用できる。

走ったのはアップダウンしながら回り込む低速コーナーと中速のコーナーがおりなす峠道。ライバルと見られることが多いRZ250を相手にするならもってこいだ。RZだとどうしてもパワーバンドから外れ易い場面が多く、VTのフレキシブルさが武器となる。クロスミッション気味だし。一見さんの峠だったらVTが有利だ。
現行250ccモデルで乗った感じVTよりパワフルなものはあるけれど、でもこちとら数万km走った個体なのだから、新車に近かったならいい勝負ができそうだ。

「現代でも十分に通じる走りを持っている。それだけ完成度が高かったというわけだ」
鋳鉄ベンチレーテッドディスクを使ったフロントのインボードディスクブレーキの効きは素晴らしい。お世辞抜きで、現行機種に劣ることはない。タッチも素晴らしい。
フロント16インチホイールといっても、タイヤの銘柄で差が出てプロファイルも違うと前置きして、VTの履く100/90-16と、ニンジャやR25が履いている110/70-17の外径は同じ約586mm。セパハンながらアップライトなポジションのおかげでライダーの重心が前に行きすぎず、ハンドルに体重がのらないから、コーナーに入って、掴む手に力が入らずスーっとセルフステアが入りバンク角を深くしなくても簡単に小さく曲がれてしまう。
トラクション性能も問題なし。場所によっては路肩に雪が残っている路面温度ながら走るのが楽しくなってずっとぐるぐる走っていた。クラシックモデルだからなんて手加減せずにヒラヒラとコーナーを抜けていけて面白い。
(撮影●鈴木広一郎 文●濱矢文夫 車両協力●仙波正人/ VT オーナーズクラブ)
1982 HONDA VT250F(MC08) <SPECIFICATION>
● エンジン種類:水冷4ストロークV型2 気筒DOHC4 バルブ● 総排気量(ボア×ストローク):248cc(60.0 × 44.0mm)● 最高出力:35.0PS/11000rpm ● 最大トルク:2.2kg-m/10000rpm ● ミッション:6 速リターン● 全長×全幅×全高:2000 × 750× 1175mm ● ホイールベース:1385mm ● シート高:780mm ●キャスター/トレール:26°30′/ 91mm ●タイヤ前・後:100/90-16・110/80-18 ●燃料タンク容量:12.0ℓ●乾燥重量:149kg ●発売当時価格:39万9000円

当時としては驚きの250ccだけの新設計エンジン。前後でクランクを共有する水冷DOHC8バルブ90°Vツインの幅は単気筒並。

鋳鉄ベンチーレーテッドディスクと外側から見えるピンスライドの2ポッドキャリパーを組み合わせた正式名称=インボード・ベンチレーテッドディスク・ブレーキ。前のアルミコムスターのリムは2.15-16。アンチダイブは付かず。

リアはボトムリンクのプロリンクサス。ショックは油圧とエア圧の併用。

当時のオンロードでは珍しいシュラウド。

風防として認可されずメーターバイザーとしたビキニカウル。

1万2500回転からレッド。

コンビネーションランプも斬新だった。
姿カタチ・名前を変えながら現代まで続く血統
1984 VT250F

鉄の角フレームになった2代目FE。最高出力= 35 → 40PS で最大トルクも増えた。燃料タンクは2L増量。ハーフカウル装備も大きなポイント。走りをレベルアップした。
1986 VT250F

三代目FG型。一部で“オンナVT”と呼ばれた。増える女性ライダーもターゲット。油圧クラッチを廃止。サイレントカムチェーン採用でより静かに。最高出力は43PS。
1988 VT250SPADA

剛性の高いダイヤモンド型アルミキャストフレーム(CASTEC)を採用しスポーツライド好きに愛された。車両重量は初期型より軽い153kg。40PS を1万2000回転で。
1991 ゼルビス

名を変えて心機一転。スポーツからツーリング志向に変身。シート下に7Lの収納、大柄で、快適性や使い勝手を考えた作り。VT シリーズは終わり、後にVTR が誕生。
情報提供:東京エディターズ
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